「ホントの斬り合い!?・③」

 伊達の、「なぜ鯉口を切らないのか?」の質問に、五里田は真面目な顔で、みんなにも言った。


「いい質問だ伊達!!いいか?みんなも良く聞くように!刀は、鞘に入っている時、逆さにしたり、走ったりしても鞘から刀が勝手に抜け落ちないよう、はばきという金具が付いていて、これが鞘と刀本体をつないでいるんだ。ちょっと貸せ!」


 五里田は近くにいた女子生徒の刀を持つと、抜いて鎺を指差した。


「これが鎺だ!!ちなみに、この鎺のおかげで、鞘の中では刃が浮いている状態になり、錆びから守られてんだぞ!で、話は元に戻るが鍛練たんれんを積んだ者には、簡単なかも知れないが、先に左手の親指でつばを押し、鎺をゆるめておくと、刃が抜きやすくなるんだ。これを鯉口こいくちを切ると言うが、この動作が初心者には意外と難しいのだ!」


「なるほど、そうなのですか!☆.。.:*・゜」


 それを聞いた伊達が可憐な、納得の声をあげた。


「以前は教えていたが、鯉口ばかり意識して、肝心の抜刀が遅れてしまった為、今の授業では、とにかく柄を握ったら力任せでもいいから、抜いて当てる!これが最初に会得してもらいたい事柄になったんだ!」


 五里田は真剣な表情で、みんなを見渡した。すると伊達は言った。


「そうでしたか!出すぎた真似をお許し下さい」


 伊達は五里田に頭を下げた。


「いや、いいんだ伊達。しかしさすがは伊達家の子孫だな!!ちゃんと、習っている。俺は、偉そうな事を言ってはいるが、ただの体育教師だから、知識や実際にやった結果でしか刀の事を分かってないんだ」


「いえいえ、たしなむ程度です」


 五里田は伊達に関心していた。そして、ハッとした五里田は思い出して言った。


「そうだった!抜刀の途中だった。じゃあ次!鞘乃!!」


 刀子と入れ替わりに鞘乃がみんなの中心に立った。


「抜刀!!」


 五里田のかけ声に、刀子と同じく鞘乃もやや膝を曲げると、キュッキュッと上履きが鳴った。




 「上履き」!!




 そうそう上履きだが、刀子たちの上履きは爪先までゴムのついた上履きで、バレエシューズタイプと呼ばれる物だ。なんでもあのバレエに使うシューズをマネしたもので、靴底から爪先まで一体となったゴムで包まれ、またその色が学年カラーになっていた。刀子たちは1年生なので桜色だが、2年になると白、3年ではシルクの黒になる予定だ。


 この他にも、いわゆる”ズック靴”と呼ばれる上履きもある。こちらはバレエシューズ上履きに比べ丈夫なのだが、外履きにも使いやすい為、過去に児童が履いているのが上履きなのか外履きなのか分かりにくいという問題を起こした経緯がある。なので、刀子のいる市立セーラー高等学校、略して「セラ高」では、バレエシューズ上履きを採用している。


 たかが上履き!されど上履き!!女子高生の上履きが気になる、上履き好きがいるかも知れないのでとりあえず。




―――シュンッ


 鞘乃は滑るような動作で抜刀をし、中段に真っ直ぐに構えていた。そして、抜いた反動で、巨乳がしばらくプルンプルンと揺れていた。余韻の残る振動は素晴らしい!!


「見事だ!!」


 五里田の誉める声が体育館に響いた。(←おっぱいの事じゃねーぞ!!)


「みんなも鞘乃の抜刀を手本にするように!」


 五里田が鞘乃を誉め称える姿を見て、刀子はチッと小さく舌打ちしていた。もちろん、二つの意味でだ!


「とまあ、ここまでが抜刀の復習だが、今日からは立ち合い、つまりは本当に斬りあってもらう。この立ち合いは背中合わせになって始まるのでこれを、”合わせ立ち合い”と言う」


「「「えっ!ホントに斬り合う!?」」ピョンか!?」


 本当に斬り合うの言葉に、ざわつく女子生徒たち。


「そりゃそうだ!いつも言ってるように日々、”常在戦場”だぞ!!なお!合わせ立ち合いを始める時には必ず、”勝負”と言ってから始めるように!ではいいか?とにかく相手より素早く抜刀する事!そして早く当てろ!!じゃあ、二人組みになって始め!!」


 五里田の言葉に、セーラー服を着た女子生徒たちは体育館内に広がった。そして、だいたい3尺、約90センチの距離で背中合わせになった。


「勝負!」


「勝負?」


「しょーぶー!!」


 そして、体育館中に女子生徒たちのかけ声が響いた。が、その声はすぐに……




「ううっ!!」


「キャー、痛いっ!」


「目が、目が!!」


 うめき声や悲鳴、戸惑う声に変わっていた。


 抜刀し、相手を切る!


 そして斬る!!


 指が飛び、腕が飛んだ。


とどめぇーえ!!」


 と、刺した刀が、ガツンと床に刺さっていた。


「私、綺麗?」


 顔面を横に切りつけられ、口が裂けた者など、体を破壊された者が多数いた。


 まあ、とは言え相手を斬れればいいが、刀子のように抜刀が上手くいかない者は、自分の足に刀落としたり、抜いたはずみでくるぶしを刃先でえぐったりしていた。中には、刀子みたいに自分の体にやいばが向かってしまい、自分の頚動脈けいどうみゃくを切ってしまい絶命する者もいた。


「柄恵さん行きますよ?☆.。.:*・゜」


「いいピョンよ!!」


 柄恵と伊達が背中合わせで立ち合っている。いやはや全くもって、いまさらなのだが伊達は、60デニールの黒のサイハイを履いている。


 今は上履きだが、外履きは黒のローファーだ。ちなみに「サイハイ」とは、太ももまでの長さの靴下(ストッキングやタイツ)の事だ。なお、伊達は60デニールなのでタイツである。




「デニール」!




 そうそう「デニール」についても説明する必要があろう!デニールとはレッグウェアである「ストッキング」や「タイツ」の説明によく出てくる「単位」で、使用する糸の太さ(重さ)を表す単位である。糸が太く生地が厚手になるほどデニールの数値が上がっていくのだ。


 その数値基準とは、9000mに糸を伸ばしたときの重さが1gの時が、1デニールとなっている。そしてここが重要なのだが、一般的に、30デニールより薄手のものが「ストッキング」と呼ばれ、それ以上の厚手のものは「タイツ」となる。(ここ、凄く大切だ!テストがあれば必ずでる出題だ!!)なので伊達の60デニールのサイハイはタイツとなるのだ。


 なお、ストッキングやタイツは、足を爪先まで覆っているが、踝から先がないのを「レギンス」土踏まずに引っかける部分があり、爪先とかかとが出てるのを「トレンカ」と言う。




 「レギンスやトレンカ」!

 



 それはそれで、ウハウハな楽しさがあるのが、レギンスやトレンカだ!!「ねーねー!一緒に走ろうよ!!」と言う女の子の後ろを走ってみたら、レギンスやトレンカの偉大さに……




 君は感謝するだろう!


 プリプリやで!プリプリ!!(*>∀<*)ノ(まあ、人にもよるが!)




 さて話を戻すが、何デニールかによって「透け感」が違って来る。これはマジで重要だ!そして透け感は「透過率」でも評価出来るのだ!!


 つまり、30デニールで8%の透過率、40デニールで7%、60デニールで6%。なんと!この、わずか「数%」の違いが、ドキドキやワクワクを高めているのだ!!数%の違い!凄過ぎだ!!


 はっ!いかん。戻す話を間違えた。




「「勝負!」ピョン!」


 の、互いの声と共に、柄恵は背中合わせの伊達からすぐに大きく離れ、右に体を回しながら抜刀をした。


 柄恵のやいばは真上にあり、あとは切っ先を真っ直ぐに相手に向けるだけだった。間合いからいって、上手くいけば相手に切っ先が当たり体勢を崩せるかもしれない。ダメでも真っ直ぐに構えていれば相手の刀を受け止める盾の代わりになると考えていた。


 だがしかし……




―――ブスッ


 柄恵の、二つの大きな胸の間に伊達のが、突き刺さっていたのだった。


つづく

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