「槍なのに帯刀って!?・①」

「なので、この現在、施行せこうされている帯刀令の中には打刀うちがたな太刀たちなどの刀以外にも、刀剣類とうけんるいとして」


「はい!せんせー」


 四角い眼鏡をし、背広を着た政治経済の男性教師が、法律の具体内容を説明していると、刀子が手を上げ質問した。


「何かな?刀子さん」


「打刀って何?それと太刀って?」


 話の途中で切られたのだが、政経教師は嫌な顔、一つせず刀子に答えた。


「打刀とは今、刀子さんたちが腰に差している刀の事で、差し方はを上に差しますね。太刀とは、長くもっと曲がった刀の事で、差し方は刃を下に向けて差します。あとは年代ですかね?」


「長さが違うのは分かったが、何で差し方が違うんだよ!?」


「ちょ、ちょっと刀子ちゃん?言葉使い!!」


 鞘乃に指摘され言い直す刀子。


「差し方、違う、なぜ?」


「なぜ片言の日本語になるの!?」


「言葉使いを直そうとすると、話すのが難しいんだよ!!」


 刀子のしゃべり方に突っ込む鞘乃!それを見ながら苦笑いの政経教師は話を続けた。


「太刀は元々、侍が馬に乗ってのいくさから生まれました。馬に乗って戦うと間合いが長い為、長い刀が必要となりましたが、長いと馬の首を切る危険があるのと、鞘尻が馬を叩いて驚かしてしまうため、刃を下向きにし、曲がりもきつくし抜きやすくしました。なので太刀は刃を下向きに差すのです。ちなみに、馬をあやつりながら刀を抜くので、太刀のつかは片手持ちの短い柄です」


「ようは、長くて片手持ちが太刀なんだな?」


「その通りです!さて、時代が変わり、侍だけでなく農民も戦に参加し歩兵の足軽が登場すると、長い太刀ではなく、短く曲がりも緩い刀が登場します。その刀は鞘からの抜く動作と同時に、牽制けんせいや防御の為に切り付ける”抜き付け”、そして、致命傷に至る斬り方”抜き打ち”を、瞬時に行えるよう、刃を上にして差した事から、”打刀うちがたな”と呼ばれています」


「なるほど!すぐ相手に打てるから打刀うちがたななのか!!」


「そして、打刀ではつかが長くなり両手で持てる事から、刀身の重量も増え威力も増していきます。そうそう、3組の佐々木さんを知っていますか?佐々木さんの刀は太刀ですが、柄を長くして両手に持てるようにした野太刀のだちと呼ばれる物で、差し方は打刀と同じ刃は上です」


「へー!差し方が違うのは、そういう事なのか」


「もっと詳しく知りたいのなら、歴史の先生に聞くといいと思います」


「分かった!サンキュー先生!!」


 本当に分かったのかどうかは怪しいが、刀子は納得したようだ。それを見た政経教師は授業を進めた。


「話を戻しますが、帯刀たいとうには打刀や太刀などの刀以外にも刀剣類として、刀のつかが長くなった長巻ながまきや、もっと柄が長い薙刀なぎなたも含まれ、槍、そして日本刀以外の外国の刀剣なども含まれます」


「そういや、槍を持ってるやつが他のクラスにいたなあ!帯刀って刀の事なのに、何か変だと思ってたけど、オーケーだったんだな!!」


 また刀子が言った。黙ってられない所が刀子らしい。


「そうですよ、槍も帯刀です。そうそう余談になりますが、8組までクラスがある中、奇数クラスに槍の生徒を入れる予定でしたが、現在、この1組だけ槍の生徒がいない状況です」


「なんで居ないんだ?槍をやる奴が少ないからか?」


「それもそうですが、本来なら4月から入学だった生徒がいたのですが、家庭の事情だそうです」


「ふーん!それは残念だな!!」


 刀子との話の区切りがついた所で、政経教師は話を戻した。


「えー、で、刀剣以外の特例の話になりますが、特例として銃もあります。それは一発ずつ玉を込める種子島銃たねがしまじゅうなどの単発のものを基準とし、

現代銃の使用においても、弾倉に一発だけの装弾とし、以後は弾を弾倉に込める行動で単発と同様になる場合、可能となっています」


 政経教師が銃と言った途端、バンッ!と、机を叩いて刀子が立ち上がった!


「えっ!マジかよ、銃もありなのかよ!?」


「そうですよ」


「機関銃でも!?」


「そうですよ機関銃でも、銃なら何でも可能です」


「それってズルくねーか!?」


 刀子は激しく怒っていた。長い黒髪が逆立ち、無数の蛇のようにうねった。


「とっ、刀子ちゃん!良く聞いててよ、単発だって!!」


「鞘乃は黙ってろ!じゃあバズーカでもいいのか!?まさか、ソレはねーだろ!?」


「そうですよ刀子さん。バズーカでもグレネードランチャーでも、もちろん日本の大筒おおづつでも可です」


「ばっ、バズーカがオッケーかよ!?てか……




 おっ、おおづつって?」


 分からない言葉に首をひねる刀子。なので鞘乃が教えた。


「大筒って、昔の日本の大砲の事だよ」


「なんだそういう事か!てか、大砲もありなんて、ズルすぎだろ!!禁止しろよ!!」


「だから単発なんだよ!」


 鞘乃が強く言った。


「短髪?なんで、ショートヘアならいいんだよ!!」


 刀子の、その言葉にホトホト呆れる鞘乃。


「あのね刀子ちゃん!もう少し言葉を覚えようよ!小学生じゃないんだから!!髪の短い短髪じゃなくて、1発ずつの単発って意味なの!だから、もし相手が機関銃だとしても大砲だとしても、連発は出来なくて1発だけしか撃てないの。で、外れたら、また弾を込めるの」


「なるほど!1発ずつか!!大砲や機関銃なら重いから大変だろ?それなら、戦いになるな!!」

 

 鞘乃の説明を聞いて、やっと理解した刀子。話が終わったようなので政経教師は再び話を始めた。


「鞘乃さん、ご説明ありがとうございます。そうなんですよ、機関銃や大砲も可能ですが、本当に大きいのは非常に重いので持てたらですよね。だから実際に使うとしたら、間を取って散弾銃に銃剣じゅうけんでしょうかね?」


「銃剣ってなんだ?」


 政経教師の言葉に刀子が質問した。


「散弾銃やライフル銃などの先に、脇差わきざし程度の長さのけんを付けた状態の事ですよ」


「脇差しの長さって?」


「1尺以上、二尺未満。なので、30センチ以上、60センチ未満ですね。刀子さんたちが帯刀している刀を大刀だいとうと言うのに対して、小刀しょうとうとも言います。まあ、細かい事なのですが、同じ字でも意味が違っていて、小刀と書いて、”しょうとう”だと脇差しの長さですが、”こがたな”ですと、だいたい30センチ以内のナイフ程度の物の事になります。そして大刀ですが、”だいとう”では打刀ですが、”たち”という読みでは、直刀ちょくとうの意味になります」


「読み方の事はよく分かんねーが、そんな刀が銃の先に付いてんのか!それなら抜刀しなくていいな!!」


 刀子は目を輝かせた。


「ですが、銃刀法との兼ね合いにより18才以上でしか銃は保有出来ません。それ未満はエアガンのみです」


「なんだよソレ!?じゃあオレは3年生にならないと、ホントの銃を持てないのかよ!?」


「そうなりますね。でも一応、エアガンも殺傷力ありますよ。破壊力は違いますがね。さて、ちなみに種子島銃以外のライフルや機関銃、拳銃やバズーカなどは帯刀法でのみの保有となります。ここで問題があるのですが、帯刀法では16歳から18歳のまでの女子高生が帯刀の対象となっています」


 すると柄恵が言った。


「そうピョンか!3年生になって誕生日を迎えると帯刀出来ないって事ピョンか!?」


 それを聞いた刀子は、焦って政経教師に吠えたのだった!


「じゃあ、結局!




 銃が持てねーーーじゃんっ!?」


つづく

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