「オシャレは帯から!?・①」

「お前たち、それぞれ学年最強なんだってな?」


 歩きながら刀子は、いたって普通に、銃夢がんむ先輩、叉鬼またぎ先輩に対して「タメ口」で言っていた。それに対して、気にするでもなく叉鬼先輩が、まず刀子に答えた。


「おら、熊狩ぐまがりは慣れてるべ、熊相手ぐまあいで実戦経験ずっせんぐんれんしでるがら、人間相手なんて、かったるぐって!!」


 すると銃夢先輩が口を開いた。


「てか、叉鬼は1年の時から学年最強だ。そんでもってそいつは、最後に相手の腹を切って、腸を取り出すから、いまや2年全員に嫌がられているんだぜ!!」


 目つきは悪いが、ちょっと楽しそうに言っていた。


「へえ!趣味、悪いんだ」


 刀子は気にせず、ズバリと言った。その言葉に叉鬼先輩は。


「つい!やってしまうだ。早ぐ内臓ばでねぇど、鮮度ぜんど落ぢるがして!!人間、わげじゃねぇのにな!エヘヘヘっ」


 と、恥ずかしそうに頭をかいて言った。


「でも! 銃夢先輩ぜんばいの方さが、もっど酷いべ!!」


「へえ、どんな?」


 刀子が叉鬼先輩に聞いた。


「銃夢先輩ぜんばい口癖ぐちぐせは「破戒はがいじてやる!!内臓も脳味噌のうびそも!!」って言って、ダムダム弾で、内臓どごメチャクチャにしてぐるしめだあど、「もう、ごろしてくれー!!」て、言われたどこで、どどめの一発いっばつどご、脳味噌のうびそにするんだど!!で、あだまスイカ割れだみだいになっで終るんで、なんで、みんなにごわがられで、今では誰も逆らえねぇだっぺよ!!まあ、おらはそんな野獣げものみたいな銃夢先輩ぜんばいが好きだべがっ///」


 頬を赤らめる叉鬼先輩。すると銃夢先輩が低い声で刀子に言った。


「俺は2年間、みんなに切り刻まれて来たんだ。とにかく、とても悔しかった」


 銃夢先輩は刀子に言いながら、今までの過去を振り返っていた。




『お前!刀も抜けないなんて!!』


『一回も勝てないないのに、単位もらえるなんて、どんだけ甘いんだ?この高校は!?』


よえー奴は、奴隷だ!早くジュース買って来い!!』


 そんな風に、みんなに言われ辛い2年間を過ごした銃夢。


『そういや俺が、余りに負け続きなのに単位がもらえるのはおかしい!と言われ、3年生からの単位取得の内容が変えられてしまったんだよなあ』


 そんな単位取得の心配が生まれた3年生であったが、4月すぐの誕生日を迎えた銃夢は、手の中の金属のかたまりに期待をしていた。


『これが銃か?これが、私を変えてくれるかもしれない物なのか!!』


 銃夢が強さを求め手に入れた銃はコルト社の、シングル・アクション・アーミー(SAA)の銀色、6インチモデルだった。


 それから銃夢は変わった。「勝負!」の掛け声と共に、相手の抜刀よりも早く銃を抜き、相手を頭を吹き飛ばした。


『えっ!本当に私が勝ったの!?』


 そして次々に相手をやっつけた。


『アハハハ!何?なんでこんな簡単に相手が倒せるの!?』


 やがて、見ている者をうならせた――


『はっ、早い!全然見えない!?』


 0、02秒という早打ちを身につけたのだ。


『アハハハ!今まで、よくもやってくれたなっ!!』


 さらには、今までの恨みを晴らすべく、相手の足を撃ち、腕を撃ち飛ばし、そして腹を!と苦しめてから、頭や心臓を撃ち、射殺するようになったのだ。


『おい!次は誰だ?早くしねーと、俺の方から手当たり次第に行くぞ?』


 それはエスカレートし、ダムダム弾を手にいれてからは、 一層、相手に苦痛を与えてからの射殺を行った。


『オラオラオラオラ!!すぐに死ぬんじゃねーぞ!!もっと、苦しめーーーっ!!』


 それから、3年全員を一人3回ずつ殺して回った。


『俺は、1ヶ月で3年最強になったが、まだまだだ!今まで馬鹿にしてた奴等をもっと見返してやる!次ぎは抜刀祭で天辺に立つんだ!!』


 それが今の銃夢先輩にとっての心のり所となっていた。




「ところで、お前の誕生日はいつだ?」


 銃夢先輩が刀子に聞いた。


「オレは8月だ」


 刀子はそう銃夢先輩に答えながら、自分と同じく、自分を俺と言う所、そして抜刀が出来ず悔しい思いをした銃夢先輩に、親近感を感じていた。


「じゃあ、3年の8月まで耐えろ!そして、銃を取れ!!お前の抜刀が下手な事は、朝の様子や体育館での様子を見ていて分かっている。お前も俺と同じだ。でも、銃さえ手に入れてしまえば!!」


「銃はそんなに強いのか?」


「ああ結局、刀は銃に勝てないって事さ!」


「そうか」


「この銃はなあ、西部開拓時代に時代を切り開いてきた銃なんだ!俺も、このSAAで自分の人生を切り開く!!」


 そう銃夢先輩は言うと、右腰のホルスターに収められた愛銃、銀色のSAAをでた。


「そうそう、刀子とうごさ、知っでっか?銃夢先輩ぜんばいに、3年さ全員さでねがったんだ。で今回ごんかい、銃夢先輩ぜんばい抜刀祭ばっどうざいば出るっでいだらごわくで、みな辞退してんだど!!んだて、今年ごんかい抜刀祭ばっどうざいでは3年らの出場は銃夢先輩ぜんばいひとりだ!スゲーだど!!」


 すると、銃夢先輩が叉鬼に言った。


「そんな事を言ったら、お前もそうだろ?お前が1年の時の抜刀祭で、みーんなの腹をかっさばいたから、今年の抜刀祭にお前が出るって言ったら、2年全員が出るの辞めただろーが!!」


「アハハハ!そう言えばそだ!銃夢先輩ぜんばいと同じだっぺよ!!」


 叉鬼先輩は大笑いしながら、とても嬉しそうに言った。叉鬼もまた過去を振り返っていた。

 



 1年生になり、初めてのホームルーム。皆が自己紹介をし、大きな拍手をしている中、叉鬼の番になった。


秋田あぎだ山奥やまおぐがらだ。叉鬼まだぎ言います。マタギどごやってで、ぐまった事あります。どぞ宜しくおねげえします』


 モジモジしながら、黄色の長い髪を三つ網お下げにしている叉鬼の自己紹介には、まばらな拍手だけが起こっていた。そして、休み時間になった。


ひどなまりだな!?お前、何言ってんのかわかんねーよ!!』


『なんか教室が獣臭けものくさくない?あっ!あんたって狩人かりゅうどだっけ?だから臭いんだ!!』


『てか、腰のソレはなんだ?刀じゃないだろ?なたか何かか!?』


 皆は冷たかった。それはしだいにエスカレートし、物を隠されたり、無くなったり、こずかれたりしていった。


『次の授業は、とうとう本当の切り合いになるから、アイツの事、みんなで切り刻んじゃお!!』


 そんな声が聞こえた、合わせ立ち合いの授業。その時、力関係が逆転した!


『―――ゆるじで!!』


 歯が欠け、肉削がれた顔で叫ぶクラスメイト!!だけど叉鬼は淡々と。


『早ぐ締めねーと!不味まずぐなるなっ?』


 と、腹をかっさばき、生きたままのクラスメイトの内臓を取り出した。


『――ぐるじー!ごろじで!ごろじで!!』


 そしてそのまま、のたうち回るクラスメイトを、ほったらかしにしたのだった。


つぐは誰だ?』


 こうして1年最強に、叉鬼はなったのだった。




「ところで、抜刀祭って何だ?」


 刀子は先輩二人に聞いた。


「ああ、このセーラー高校が主催の祭りで、近くの高校からも招待して、合わせ立ち合いで最強を決める祭りだ」


 と、銃夢先輩が言った。そして、歩みを止めると刀子に改めて銃夢先輩が言った。


「じゃあ、話は終わったから、帰っていいから」


 すると叉鬼先輩は、にこやかに言った。


「んだんだ!」


 そう言って、二人の先輩は刀子を開放したのだった。


◇◇◇


 次の日の休み時間。


「ねえ、あの後、大丈夫だった?」


 鞘乃が刀子を心配して言った。


「ああ!大丈夫、大丈夫。なんか、オレの事を心配してくれてたみたいでさ」


「心配~!?」


 鞘乃は驚いていた。


「ああ、3年になって誕生日を迎えたら、銃が持てるから、それまで頑張れよ!だってさ」


「なーんだ!ホッとしたよ!!」


 鞘乃は、胸をなでおろした。


「なあ、所で良く見れば鞘乃の、刀を差すおびって、なんかオシャレだよな!」


「いきなりどうしたの?刀子ちゃん!?」


 普段、オシャレなどに無頓着むとんちゃくな刀子が、何を思ったのか?珍しくそんな発言をしたのだった。


つづく

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