「再生機でオッタマゲー!?・①」

「うんしょ!」


「よいしょ!☆.。.:*・゜」


「うんしょ!」


「よいしょ!☆.。.:*・゜」


 合わせ立ち合いを終了した鞘乃と伊達たちは、最低でも二人組になって、死体となったクラスメイトの体を運んでいた。


 なぜ二人組以上かと言うと、死んだ人間の体は「とても重い」からだ。意外に思うかもしれないが死んだ人間の体は非常に重い。例えば、20キロのポリタンクを二つ持て!と言われて簡単に持てるか?といった感じだ。いや砂袋の方が近いかも知れない。(そうそう、家庭菜園の土袋なんかスゲー近いかも!体感したい人はどうぞ!!大人なら60キロが平均かと思うけど、訓練でもしてなけりゃ、まあ一人では持てないよー!!)


 さて、なぜ重くなるかだが、死んでしまうと自分で自分の体を支えなくなるからだ。すると、体そのものの重さとなってしまうのだ。子どもを抱っこで寝かし付けていると、眠った途端、急に重くなるのと同じだ。自分の体を支えるという事は、重心を高い位置に置いてくれるという事なのだ。


 重心が下がったとたんに何倍もの重さになってしまう。いや、本来の重さに戻る!それが大人だとしたら?だから腰などやられないよう最低でも二人で運ぶ事になっているのだ。


 余談になるが、格闘の達人になると、自分の体重をコントロール出来ると言われている。それは、体重自体が本当に変わるという事ではなく、自分の体重の重さを使う事が出来るようになるという事だ。


 ボクシングのパンチで考えよう。一番下位の体重47.61グラムがミニマム級なのだが、その軽量細身のボクサーでも、全体重を使えたとしたら、47.61グラムの鉛のような重さのパンチを、あれだけの速度で顔面に衝突させられるのだ!そう思ったらゾッとするのではないだろうか?


 この他、柔道や合気道では如実に現れる。柔よく剛を制すとは、まさにこれの事だ。筋肉を鍛えて鎧を作るだけではなく、自重をコントロール出来る筋力を身につける事が、全ての格闘技の奥義なのかもしれない。


 さてさて、体育館の外にはプレハブの建物があり、屋根づたいになっていた。その建物へと鞘乃と伊達は、刀子や柄恵の死体を運んだ。その建物は「再生棟さいせいとう」と呼ばれる三階建ての建物だった。


 一階には、幾つものカプセルベッドが並んでいて、その大きな蓋の開いたカプセルベッドに、刀子や柄恵の死体を入れ、蓋を閉めるとスイッチを押した。他の女子生徒たちもクラスメイトの死体をカプセルベッドに入れるとスイッチを押していた。


「いつ見ても凄いよね!」


 鞘乃が言った。


「本当ですね!スイッチ押したら、ものの5分ほどで生き返るのですからね。ボク、今でも驚きです!!」


 伊達が答えた。


「そうだよね。でも、帯刀令が出来たのなんて、この再生機が開発されたのがあったからだよね!」


「そうですね。でも、そもそも再生機の利用は、生き返させる事への倫理問題や、戦争利用に生き返りを使うのは良くない事になって、ジュネーブ条約や各国の憲法、法律で禁止されていたのですが、使用を限定する事で、帯刀令を使い社会認知を広めようとしているらしいですよ」


「そうなんだ!物知りだね伊達さんて!!」


「いえいえ、ボクなんか!知った事を知ってる風に言ってるだけですから☆.。.:*・゜」


 現在、再生機を使えば、命を失なった損傷の体でも、再生する事が可能となった。しかし、伊達の言った通り、軍事目的で利用を行えば、幾らでも兵士を蘇らせられるので、国際ルールにて禁止となっていた。


 また通常の生活の中でも混乱が起こるので禁止となっていたのだが、今回、女子高生帯刀法が政令せいれいされたのと同時に、限定的身体再生法げんていてきしんたいさいせいほうが政令され再生機の利用が可能になったのだ。


 さてさて再生棟は各階において再生の対応内容が変わっていて、それにともなって再生機も違っていた。


 一階では、死亡した者の体がどこかしら残っていれば、体全身を再生出来るカプセルベット型の「全身再生機ぜんしんさいせいき」となっており、死体にならず、自分で動ける者、手伝ってもらって動ける者は二階の「部分再生機ぶぶんさいせいき」で再生となった。


 二階の再生機は一階のカプセルベッドとは違い小型で、手や足を突っ込んでおけば、2~3分での再生となった。


「ホント!再生機って凄いよね。腕が取れても、取れた腕と一緒に再生機に入れれば直ぐにくっつくし。もし、取れた腕が無くなってても、無くなった腕をまた作ってくれるもんね!」


 鞘乃は驚きで目を丸くして言った。


「それを言うのでしたら三階の”完全再生機かんぜんさいせいき”の方が凄いですよ!有機再生3Dプリンターで、無からの分子レベル完全再生ですから!!」


 伊達がもっと驚いた風に言った。でも、話し方がとってもワクワクだ。


「そうだよね!体が、この世から無くなってるのに凄いよね。でもそれって本人じゃなくてもはや……クローンだよね?まあ、一階の全身再生機でも頭のない体なら同じなんだけど」


 鞘乃は心配そうに言った。


「クローン、そうですね」


「じゃあ、もし目覚めたら今の自分じゃないんだよね?」


「理屈では、ですね」


「理屈?」


 鞘乃の頭の中は、???(ハテナだらけ)になっていた。


「確めようのない事だからです」


「確かめられない?」


「そうです。まず、目が覚めた人は始めに体を認識するのですけが、その認識は、命が無くなってからの全身再生でも、体そのものが無くなってからの完全再生でも、同じ認識感覚なのです」


「そうなんだあ!!」


 鞘乃の心は、驚きで一杯だった。でも、すぐに疑問が浮かんできた。


「ねえねえ、あともう1つ疑問なんだけど、腕だけでも再生出来るんだよね?」


「そうですよ、腕一本あれば、一階の全身再生機で再生が出来ますよ」


「でももし、体がバラバラになって、それでアチコチの場所の再生機で再生したらさあ。ほら今は、昔のAED(自動体外式除細動器じどうたいがいしきじょさいどうき)じゃないけど駅とか色んな所に、AEDと同じぐらい再生機があるじゃない?」


「そうですね、今はAEDに迫る勢いで、至る所に再生機がありますね!」


「だから、そんなにあるなら、間違って同時に再生したら、誰が本人になるのかな?てかその場合、同じ人が複数になるのかな?」


 鞘乃は心配そうに言った。


「そうですね、もしそうなったら、誰しもが本人でしょうね!!」


「ええっ!?」


 伊達の言葉に鞘乃は驚きの声を上げた。


「でも、それだと困るから、複数の再生は禁止になっていますし、そう出来ないように機械の方でなっているのですよ」


「出来ないようにって?だってもし、足と手を残して死んじゃってさ。それで、それぞれを誰かが再生機に入れたら二人再生されちゃうよ!!」


「だから、そうならないように、全ての再生機が情報共有をしていて、国民登録されている個人、一人だけしか再生出来ないようにしているのですよ」


「でも同時だったら?」


「その為の”記憶管理法”ですよ!」


「記憶管理法?」


「その時は、記憶管理法にもとづき、中央記憶センターからの記憶情報が、早く届いた方が再生機の方で再生されるのですよ」


「えっ!そうなの?」


「そうですよ。全体再生または完全再生をする為、まずは記憶情報の”照合情報”が再生機に送られるます。すると、直ぐに照合情報が届いたという返信を、再生機が中央記憶センターに送るのです。それからやっと中央記憶センターから許可及び、記憶情報が再生機に送られ再生開始になるのです。そのやり取りでは、どうしても距離が近い方が速く、遠い方は遅くなり、タイムラグが生まれるので、遅い方の照合情報はカットされる仕組みだそうです」


「でも、もし本当に同時だったら?」


「それでも大丈夫です!中央情報センターから記憶情報を送る先は、1つのみになってるのです。だから、例え再生機からの照合情報が同着になっても、どちらかをランダムで選ぶ機能があるのです。そこで、話は戻るのですが、こんな凄い機械なので、これだけのシステムを作り管理されているのですが、秘密兵器と言っても過言ではありません」


「そうだよねっ」


「ジュネーブ条約などで戦争使用を禁止されなくては、戦場で兵士が何度も生き返させられるし、優秀な兵士だけをクローンで増やせてしまうのです」


「スゴーイ!伊達さんて本当に詳しいんだね!!」


「まあ今の所、そういうキャラですからね、ボクは!」


「えっ?伊達さん、ソレ言っちゃうんだ!!」


 伊達のメタ発言に鞘乃の目は点になっていた。そしてその時、伊達は怖い事も言っていたのだった。


「だからもし、それを可能にするなら、隔離した場所で記憶情報と再生機を運用する事でしょうね」


つづく


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