第18話

 「何これ?どゆこと?」


 予定より少し早く目を覚ました俺は、見張り中であるサーラの方を見ると、眠気が飛ぶくらい凄い光景だった。


 「えへへ……」


 頭に手を当て、可愛らしく笑うサーラ。

その周りには、色んな獣が集まっていた。リスや、ネズミのような小動物もいれば、クマやシカ、俺を襲ったことのある鬼獅子などのような大型動物もいる。


 俺はこの光景を見て、すぐに思ったことは


 「もしかして、サーラの神業の能力??」


 だが、すぐに否定された。


 「いえ、私、昔から生き物に好かれる体質でして………。生前でもこんな感じでした。」


 なるほど。特に気にしていなかったが、サーラを助け出す時にやたらと周りに獣臭がしたのはその理由だったからなのか……と俺は納得する。


 「じゃあ、サーラの神業の能力って一体何なんだ?」


 「実は………まだ分からないんですよね」


 どうやら、サーラも俺と同じで、まだ天使の遺伝子が身体に馴染んでおらず、神業が使えないと言う。少なくとも、俺と同じ環境の人物がいて少し嬉しい。


 「ところで、アニさんは?」


 俺が起きた頃には、アニエスの姿が見えなった。サーラは「あぁ」と反応し、


 「『朝食を調達してくる』、と言って、お兄ちゃんが起きる少し前にここに離れていきました。」


 「そっか。後で礼を言わないとな」


 そして、俺はまだ気持ちよさそうに寝ている安井を発見し、なんかイラっと来たので、サーラに頼んで、安井の周りに大型動物を誘導してもらう。


 その後、29歳の男性の情けない悲鳴が森中に響き渡ったのは間もなかった


♦︎♦︎♦︎


 「今、戻ったぞ」


 安井が情けない悲鳴をあげ、失神して数分後に、アニエスは肩に大きいイノシシ的な生き物を乗せて戻ってきた。


 因みに、アニエスの姿を見て、サーラの周りにいた動物達のほとんどは逃げてしまった。そりゃあ、まぁ、怖いよね……


 「それはイノシシ?」


 「ウデトケイによると、『キングイノシシ』と、言うらしくて、焼いたら美味いらしい。」


 今回は、ちゃんと調べて調達したらしい。アニエスはキングイノシシを地面に下ろす。そして、いつの間にか意識が戻っていた安井の方に近づき


 「何だよ」


 「お主は確か材料があれば何でも道具を作ることが出来る能力だと聞いているが?」


 「そうだけど」


 「じゃあ、これを……」


 アニエスは少しだけ甲冑に隙間を空けると、そこから、鉄鉱石のような石が10個ぐらい出てきた。

アニエスの身体はもしかしたら四次元ポケットの何かで出来てるのではないか………と、最近、思ってしまうぐらいアニエスの収納能力が凄すぎる。


 「これで、できる限り砥石を作って欲しい」


 「砥石?」


 「あぁ。携帯している砥石が底をつきそうになってしまってな。調べたら、この石が砥石に適しているらしい」


 「それぐらいなら容易いが」


 安井は鉄鉱石をできるだけ、集め、指パッチンをする。すると、鉄鉱石が光輝きながら、結合し始める。そして、10個くらいあった鉄鉱石から、4個の砥石が完成した。


 「こんなもんかな?どうだ?」


 「うん、上出来だ。礼を言う」


 アニエスは頭を下げ、砥石をまた甲冑の中に入れていると


 ぐぅぅぅぅーーーーーー!!


 と、サーラのお腹の中から激しい音が鳴る。サーラは顔を真っ赤にしながら咄嗟に腹に手を当てる。俺は、「ははは」と笑い、



 「さて、腹も空いている事だし、飯にしますか!!」


 「「「おーー!!」」」


 それから、俺とアニエスとサーラと雰囲気にどさくさに紛れている安井と一緒にキングイノシシを焼いて美味しく頂いた。


♦︎♦︎♦︎


 「さて、お腹もいっぱいになった事だし!!」


 俺と、アニエスと、サーラはビクッと身体を一瞬震わせた安井の方を見る。


 「こいつの今後について、話し合いますか!!」


試練残り85:58

 神様候補者残り6509人

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