第16話
「アニさーん!!交代の時間ですよー!」
俺は爆睡しているアニエスのほっぺたを優しくペちペちと叩き、アニエスは「うみゅ?」と情けない言葉を発しながら身体を起こす。
「たきゅみ殿??もうじかんらのですか??」
呂律が回ってない言葉を言い、アニエスは目を腕でゴシゴシと擦りながら俺に近づく。数時間のアニエスの姿と比べると、凄く女の子っぽい。
これが、ギャップ萌えというものか………
俺は、アニエスに「はい、ここ注目」という気持ちを込めて、安井の方に人差し指を向ける。そして、アニエスは拘束されている安井の存在に気づくと、すぐにハッとなり、戦闘体制に入る。
「拓海殿っ!!こいつは!?」
「数十分前に、俺に攻撃を仕掛けて、返り討ちに遭わされた安井 廉君だよ。……大丈夫だから、落ち着いて。どうどう」
俺は冷静になって、興奮しているアニエスを落ち着かせる。アニエスは状況を察してくれたのか、戦闘体制をやめる。
「それで、こいつはどうする??」
「とりあえず、朝日が登るまではこのままで。その後は3人で話し合うつもりだから、殺さないようお願いします」
「う、うむ。心得た」
「じゃあ、俺、そろそろ限界なので、見張りよろしくお願いします。このスマホのアラームが鳴り響いたら、サーラを起こして上げてください。安井の件も伝えるのを忘れずに。それじゃあ」
「あぁ、ゆっくりと休んでくれ」
俺は手を何回か振った後、アニエスが寝ていた所に横になる。すると、すぐに睡魔に襲われたので、委ねることにした。
そして、早瀬 拓海は眠りについた
♦︎♦︎♦︎
「貴様……、安井と言ったか、何故拓海殿を襲った」
アニエスは腕を組み、仁王立ちにして、安井を鋭い目付きで睨みつける。安井は、声を震わせながら
「理由も何も……、獲物が目の前にいたら……な?騎士やってるなら、あんたでも分かるだろ??」
「分からなくもない。しかし、そうだとしても、私の仲間を襲ったということは事実だ。」
アニエスの正論を聞いた安井は、「くっ……」と、歯を悔しそうに食いしばる。その後、お互いに一言も喋らず、静かな雰囲気に包まれる。そして、それに耐えられなくなった安井が遂に口を開く。
「………あんたは何故死んだんだ??」
安井の言葉にアニエスは、口を開かない。ずっと、胡座をかき、目をつぶっていた。
「悪い……。忘れてくれ。」
安井は、申し訳なさそうな表情をし、何しても無駄だと判断して、寝る体勢にしようとした瞬間、
「バルエガ王国は、ここ数年の間、隣国であるゴルア王国という国と戦争していた。」
「え?」
安井は目を丸くし、アニエスの方を見る。まさか、自分の不甲斐ない言葉に反応してくれるとは思わなかったからだ。
「勘違いするな。ただの暇潰しだ。」
と、ツンデレみたいな発言をした後に、アニエスは言葉を続けた。
「最初は圧倒的に、こちら側が優勢だった。ゴルア王国より、バルエガ王国の方が国も大きいし、戦争の経験が多い。そのまま、勝つと誰もが思っていた。」
そこから、アニエスの言葉に怒りの感情が籠る
「しかし、ゴルア王国の王は、バルエガ王国に勝つためだけに、大きな大小を払ってまで、魔物と手を組み、反撃に出た!!そもそも、国関係なく、我ら騎士は魔物から人々を守る為にこれまでに戦ってきた!!なのに……なのに!!」
ここまで、これば、耳を痛くしている安井も大体、察しはついてきた。少し、躊躇ったあと、アニエスは落ち着いた表情で言葉を続けた
「魔物と手を組み、反撃された後は、これまでが夢だったかのように追い詰められたよ。仲間も魔物にどんどん殺されてしまった。私と一緒に行動していた『ユウ』は、魔物に連れていかれてしまった。私は、追いかけようとした所で………」
アニエスはまた、躊躇ったが、すぐに口を開いた。
「敵の攻撃で、首を飛ばされた」
試練残り88:04
神様候補者残り6759人
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