第14話

 見張りが始まって、1時間程経過した。まだ、何も起こることなく、只々、この静かな時間を焚火を眺めながら過ごしていた。


 睡魔に襲われたら、道中で、採取した木の実(勿論、ミル時計で確認済み)を口に入れ、酸味のかかった味を舌で感じ、何とか耐えてきた。


 「あと、1時間か……。何事もなく終わればいいんだけどな」


 と、俺が呟いた瞬間、突然に起こった。


 一一一一一シュン


 「え?」


 何かが、俺のすぐ横を通り過ぎた。そして、痛みが生じる頬を恐る恐る触れるとかすり傷が出来ており、そこから血がたらーと垂れてきている。


 俺はすぐに立ち上がり、寝ているアニエスとサーラの周りに荷物や枝を置き、周りを見回す。


 すると、ザザザーとどこからかの草木が激しく揺れる音が聞こえてくる。何者かが移動している証拠だ。


 一一一一一一シュン、シュン、シュン


 「うわっ!!」


 また、どこからか、俺のすぐ側に何かが連続で飛び過ぎ、そのうちの1つが隣の大木に突撃する。そこに刺さっていたのは


 「これは……矢?」


 そう、大木に刺さっていたのは20センチぐいの棒の先に棘の形をした鉄が結び付いている矢だった。


 「おいおい、マジかよ」


 敵は恐らく俺の位置は大体把握している。しかし、俺は敵の位置が分からない。だから、敵の攻撃もどこからくるのかが分からない。


 俺はアニエスとサーラを起こすことを考える。しかし、今までの敵の行動からすると、まだ敵はアニエスとサーラの存在を気付いていないはず。だから、ここで俺が2人を起こすということは、2人の存在を敵に知らせるという事になる。つまり


 「俺1人でどうにかしなくちゃいけないってことだよな」


 俺は汗を腕で拭い、周りを見回す。耳を澄まして、敵の行動を把握しようとする。


 一一--一一シュン、シュン


 「うおっ!!」


 俺の真正面の暗闇から、矢が2発飛んでくる。俺は、ほぼ反射でしゃがんで矢を回避する。そして、瞬時に、見張り中に集めていた小石を何個か掴み


 「うおぉぉりやぁぁ!!」


 矢が飛んできた方向に思っきり投げる。1発、2発、3発と、次々と石を思っきり投げる。


 「ぐはっ!!」


 

暗闇の方から、野太い声が聞こえた。俺の石が直撃したのだろう。俺はすぐに声が聞こえる方に駆けつけると、そこから矢が飛んでくる。


 だが、俺はそれを余裕で避ける。いくら暗闇とはいえ、長い時間、ここで過ごしたのだ。そろそろ、目が慣れて、ぼんやりとだが、周りの景色を見ることができるようになった。


 もちろん、黒い大きな物体が俺の真正面から、右に移動しているのも視界に入っている。俺は敵の行動を見計らって、


「ここ!!」


 と、言って、石を投げる。すると、その石が敵の頭に見事に直撃し、「がはっ!?」と叫んで、敵は倒れた。


 俺は恐る恐る近づくと、全身を隠せるほどの大きい黒のローブを身につけている男性が倒れていた。そして、その男性の右手に弓が握られていた。


 「やっぱり、弓だったか。マジで勘弁してくれよ。ただでさえ、運が悪いんだからさ〜!!」


 

 と、俺はため息をついて、その男性の持ち物検査をしながら、そこらじゅうに生えていたツルを千切り、男の手足を拘束するのだった。


 そして、この男、早瀬 拓海は気づかない。この戦闘(??)の中で……


『神業』を無意識で使用した事に…………



 試練残り88:34

 神様候補者残り6846人

 

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