第9話

 「そこまでだ!貴様ら!その少女を放せ!!」


 アニエスが刀を抜いて集団に叫ぶ。5、6人ぐらいだろうか??全員が男の人だった。そして、男達は厳つい顔をして、俺とアニエスを睨んでいた。


 「あん?何だテメーらは??」


 「殺すぞコラ」


 男達はぞろぞろとこちらの方に近づいてきた。少女はビクビク震えており、座っていた。恐らく腰が抜けて動けないのであろう。早く助けてあげなくては


 「アニさん。少しの間、あの集団を相手に出来ますか??」


 「勿論だ。任せておけ」


 小声でアニエスとコンタクトを取り、タイミングを見計らう。そして男達がだいぶ近くなってきた時点で


 「今っ!!」


 「はぁ!!」


 アニエスは神業を発動し、貫通撃を地面にぶっぱなす。すると、落ち葉や地面が舞い上がり、それが男達を襲う。


 男達が怯んだ所で、俺は素早く行動し、少女に近づく。だが、少女の近くの木の後から1人の髭面で禿げた男性が現れた。念の為に隠れていたのだろう。


 「へへ、ガキの癖に生意気だぜ。」


 俺は汗を拭い、その男性と間合いを取りながら、アニエスの方をみる。アニエスはまだ集団の相手をしていた。何人か、倒れているが、残った男達は神業を発動して、アニエスに対抗していた。まだアニエスは手が離せない状況だということだ


 「なぜ、その女の子を狙う??」


 「女がいたらやる事は1つしかねぇだろ!バカかお前は」


 「最低だよ!お前ら!」


 俺は走り出して、男の方に接近する。そして、予め、握っていた地面の砂を男の顔に目掛けてぶちまける。男はもろにそれを喰らい、顔に手を当て叫ぶ。俺はその隙に少女を救おうとしたが


 「なーんちゃって♡」


 男は目をつぶったまますぐに俺の方に向かい蹴りを入れる。俺はそれを直接喰らい吹っ飛ぶ。


 ………おかしい。さっきの不意打ち攻撃はもろ男の眼球に当たったはずだ。なのに動けるって事は


 「ご名答。俺の神業だ。そして、俺の神業は『嗅覚特化』!とにかく、鼻の機能が高くなる能力だ。目が見えなくても、匂いで位置や場所を特定できる代物だぜ」


 

 俺は咳き込みをしながらなんとか立ち上がる。そして、再びアニエスの方を見ると、アニエスと闘っていた男達はあと1人になっていた。だが、その1人が中々手強いやつなのだろうか、アニエスは苦戦していた。


 「さっさとお前を殺してあの女も頂くとするか。顔もルックスも最高だぜ」


 男はニヤニヤしながら、俺に近づいてきた。俺はどうしたらいいか必死に考える。生前では不運のせいでこのような状況は慣れているので、頭の回転力には自信があった。


 「匂いか………」


 男はまだ目をつぶっていた。つまり、今は匂いが頼りだということ。


 ………!!!


 俺は1つの考えを導き出す。そして、少女の方に目をやると、丁度、目が合った。


 一--大丈夫。すぐに助け出すから


 俺は笑顔で目線で少女にメッセージを送り、男の方に駆け出した。

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