第6話

 「拓海殿。そんなに落ち込むでない」


 「いやいや、そりゃあ落ち込むでしょ。俺のワクワクドキドキだったあの時間を返して欲しいぐらいですよ。」


 早瀬は体操座りになって何度もため息を吐く。まさかのこれから先の生命線となる神業がまさかの準備中で使用が出来ない状況だとなるとショックも隠せない。またしても、自分の運の悪さを恨む。そんな中、アニエスは側にいてくれて、励ましの言葉を送っていた。


 「神業自体の能力が不運とかだったらマジで冗談じゃねぇな!!」


 「ん?何か言ったか??」


 「いえ、こちらの話です。てか、これからどうします?」


 そう、ただいま神様候補の試練の真っ最中であり、無人島かつジャングルの中である。これから先、どうするか決めておかなければならない。


 「そうだな、そろそろ行動に移したいと考えている。この無人島の状態も把握しておきたい。」


 アニエスはそう言って、腕時計に目をやる。そして、画面に手を触れ、青色のアイコンをタッチする。


 「ふむ、こんなものか」


 早瀬もそれにつられて、腕時計を見、青色のアイコンをタッチする。すると、


 『候補者数残り8052人。』


 と、表示された。恐らく、青色のアイコンは神様候補の試練に挑んでいる者達だと思われる。


 「てか、結構な数の方が受けているんですね。」


 「私に教えてくれた天使によると試験始まった当初は1万人だったそうだ。」


 「てことは、試験始まって50分チョイで2000人ぐらいが脱落したってこと!?」


 「そういうことになるな。おそらく、先程のようなモンスターに襲われたりしたのだろう。もしくは、候補者にやられたりしたのも考えられる」


 「なるほど、候補者を減らしておけば後後に報酬が貰える確率が高くなるからって事か。」


 「そうなるな。」


 そして、早瀬は失礼だと認識していても、恐る恐るアニエスに聞いてみる。


 「流石に、アニさんは俺のこと殺しませんよね??むしろ、一緒にいてくれた方がありがたいんですが………」


 「フッ、安心しろ。今のところ、拓海殿には悪意は感じられない。むしろ、守ってあげなくては、という騎士の血が騒いでるぐらいだ。」


 「どうかずっと騒いでて下さい!!」


 とりあえず、自分の神業の能力が分かるまではアニエスと共に行動するという形になる。まぁ、確かに、男が女の人に守ってもらうっていう状況はおかしいかもしれないけど、状況が状況だ。仕方がない。


 「では、そろそろ、出発するか。私の側から離れるなよ。」


 「あいあいさー!!」


 そして、早瀬とアニエスはジャングルの奥地に共に歩き出した。



 試練残り時間あと99:02

 神様候補者残り8050人。

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