第2話

コホンと咳払いしたミルはパチン、と指を鳴らした。


ーーー!?


早瀬の魂が青い光に包まれていきながら、だんだんと早瀬 拓海は人の姿を取り戻す。少しボサボサした黒髪に茶色のメガネを掛けている。そして、服装は高校の制服で肩にはスクールバックがかけられていた。


「すげぇ……」


「やぁ。早瀬くん!久しぶりの自分の身体はどうだい??」


「うん、少し重い感じ……ってえぇ!!」


「おっと、君に僕の姿を見せるのは初めてだったね。じゃあ、改めて……….。僕の名前はミル。天使で君の案内人だよ。」


「違う!違う!驚いているのはそこじゃない!!お前……….女だったのかよ!」


早瀬が魂だった時は周りが暗くてミルの声しか聞こえてこなかったが、実際のミルは女だった。見た目は幼く、小学3年〜4年生ぐらい。髪の毛は赤色でショートでありその上には天使のシンボルといえる天使の輪っかが浮かんでいる。服装は白のワンピースを着ており、背中には小さな羽が生えていた。


「あれれー?気づかなかったの?」


「気づくか!!さっきまでは声しか聞こえなかったし、そもそも自分のこと僕って言ってたじゃねぇか!」


「別に女の子だからって全員が『私』なんて言わないよ。」


「ぐっ………、そういうもんなのか?」


「そういうもんだよ。じゃあ、早瀬くん!そろそろ、時間も無いし、神様候補にエントリーするから私の手のひらに君の手のひらを重ねて」


「お、おう」


早瀬は、右手を出しミルが差し出している左手の手のひらに合わせる。すると、重なっている手のひらに光が生じ、それに合わせてミルがブツブツと呪文的な何かを唱え始めた。5分ぐらい経つと、


「はい。エントリー完了だよ。じゃあ、試練について説明するね。」


「試練?」


「うん。これから、神様候補者はいくつかの試練をやってもらって優秀成績だった人を神様に認定するんだ。」


なるほど。やはり神様になるという事はこの死の世界にとって重要だから相応しい人に神様やって欲しいよな……と思いながら早瀬は手で続けてとミルに向かって仕草をする。


「ちなみに、優秀成績をとった者が神様になれるって言ったけど他にも成績が十分に良かったらそれに応じた報酬が貰えるよ」


「例えば??」


「今だと会議で提案されているのは"生き返らせる"っていう方向になってるね」


「生き返れるのかよ!?」


「うん。その目的でこの試練に参加する人もいるんじゃないかな??君の場合、神様になる事が目的だからあんま意味ないけどね。」


「お、おう」


一瞬、『やっぱり、神様じゃなくて普通に生き返るの目的でやるわ!』と思ったが、俺は目標を作ったら最後までやり通す人間なので、言うのを断念する。


「あとはどうでもいいんだけど、君の身体を少し改造したくらいかな??」


「はぁ!?ちょっと待って!?今、あっさりと爆弾発言されたんだが……….」


「君を魂から人型に戻す時にね、君の身体の中に僕たち天使の遺伝子を取り入れたんだ。」


「天使の遺伝子?」


「天使の遺伝子はそのまんま僕たち天使の遺伝子だよ。DNAって言った方が分かりやすいかな??」


「でも何で………??」


「天使の遺伝子を取り入れた者は、自分だけの能力を使う事が出来るんだ。僕たちはその事を神業(かみわざ)って呼んでるよ。」


天使の遺伝子なのに神業なのかよ……….。と早瀬は思ったが、そのような事を聞かされたらミルに聞く事はただ一つ


「俺の神業はどーゆー能力なんだよ?なぁ、教えろよ。」


「ちょ、急にテンション上がらないでよ!」


「何言ってんだよ!!漫画とかラノベとかだとこういう特殊能力系の作品とかはめっちゃ熱くなるもんだろ!……….てか、冷静に考えてみたらお前の遺伝子を取り入れられたんだよな??て事はお前の能力が俺に引き継ぐとか??」


「あ、それは安心して。神業の能力は人によって異なるから僕の能力とダブルことなんて滅多にないよ。ちなみに、僕の神業は『治癒(ちゆ)』だから。今だと骨折程度とかだったらある完治できるレベルかな?」


「何そのサポートにめっちゃ適した能力。ナイチンゲールさんびっくりするぞ」


「ハハ、じゃあ最後の説明するね。まずはこれを受け取って。」


ミルから渡されたのは白い腕時計だった。見た目は普通に誰もが付けてそうなシンプルな形で、デジタルで00:00となっている。


「その腕時計は試練に必要なものが全部入ってるから、失くしたらダメだよ。」


「へぇー。」


早瀬が腕時計を左手の手首に装着した瞬間にゴーン、ゴーンと鐘のような音が響いた。


「そろそろ、時間みたいだ。早瀬くん、君とは少しの間お別れだ。」


「は?一緒にいてくれるんじゃないの??」


「何言ってるの?これは君の試練だよ。でも安心して。本当に君が手に負えない状況に陥ったら駆けつけるから。まぁ、君次第だけどね。」


「ちょ……と、ま……….て」


ミルに聞きたい事はまだあるのだが、それを許さないかのように、だんだんと早瀬は意識が遠くなっているのを感じた。


「君の活躍。大いに期待しているよ。そして……….」


早瀬が意識が失くなる直前にミルの声だけ聞こえた。


「死なないように頑張ってね♡」


そして、プツンと早瀬の意識が完全に途絶えた。








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