第41話 いつも通り
ほっぺがズキズキ痛む。
ジュリに変態と罵られた挙句、ほっぺを思いっきしビンタされたのだ。
アリスの背中の上で微妙な空気が流れている。
「兄様、ジュリと昼食の時から、全く喋ってない気がするのじゃが、どうかしたのか?」
後ろに座っているジュリが、おれの脇腹をギュッとつねる。
「ウッ!! な……何でもないよ……」
「アレン君が、デリカシーがないのがいけないのよ!
私の前世の話を言われても、知らないよ!
オムツを替えられたやら、一緒に10歳までお風呂に入ってたとか言われても、私はまだ7歳なんだよ!」
「確かに、ジュリは10歳までアレンとお風呂に入っていたのう。
妾もアレンの中で見ていたので間違いないのじゃ! ワッハハハハ!」
アリスさん……蒸し返さないで……
「モオゥー!!」
ジュリに何故か、俺の両横腹を思いっきりつねられた。
「アリスお嬢様、もうそろそろ暗くなってきましたので、野営しましょう!」
ここに飛んで来る間にあった、いくつかの町で泊まっても良かったのだが、少しでも早くアレックス達を救出する事を優先して、暗くて飛べなくなる限界ギリギリの場所で、野営する事に決めたのだった。
「了解なのじゃ!」
アリスはトン王国に続く街道から少し離れた、開けた草原に降り立った。
「アレン坊ちゃん、この辺りにテントを張っておいて下さい!
私は今から家に戻って晩御飯を作って持ってきます。
1時間30分たったら、再び召喚して下さい!
それでは、アリスお嬢様を宜しくお願い致します!」
そう言うとシャンティ先生はパッ!! と消えた。
シャンティ先生の棲息地は、モコ村の我が家になっている。
召喚を解くと必然的に、モコ村の家に戻ってしまうのだ。
これを利用する為に、わざわざ旅の前に俺と精霊契約をしたという訳だ。
「それじゃあ、テントを組み立てるか!」
テントは、エリスが冒険者バックに入れてくれてたはずだ。
冒険者バックから、野営用のテントを取り出すと、モンゴルの遊牧民が住んでいるようなゲルに感じが似ている物体がドン!! と、出てきた。
「エッ! これでいいの?
組み立てたりとかしなくていいのか?」
よくわからなかったので、ジュリの顔をウルウルした顔をして見つめてみた。
ジュリはまだ怒っていたようだが、この世界では一応、俺達より長く生きているお姉さんだ。
すぐにお姉さんバージョンのジュリになって教えてくれた。
「アレン君はしょうがないなぁ……
アレン君が使っている冒険者バックは最高級の冒険者バックだから、殆ど制限がなく大きな物でもそのまま入るんだよ!
だから、本当はテントをバラバラの状態にして、少しでも小さくしてから冒険者バックに入れるのが普通なんだけど、アレン君のバックは制限がないから、組み立てた状態で、そのまま冒険者バックに入ってたんじゃないのかな?」
そ…そうなのか……
初めてのキャンプだと思って、実は楽しみにしてたのに、キャンプ張りのイベントは既に終わってしまったという事か……
「ホォー、凄いのう!
この世界の冒険者バックというものは、こんな大きな物も入れられたのか?」
姫が驚嘆したような表情をして驚いている。
テントの中に入ると意外と広い。
何故かベットが、人数分の4つも置いてある。
俺の野営の知識としては、寝袋とか毛布だけを被って寝るものだと思ったのに……
食事もシャンティが家に戻って、普通にいつもの食事を出してくれる。
これじゃあ、いつもの生活と全く同じじゃないか!
キャンプ感が全くないぞ!!
俺のワクワク感を、どうしてくれるんだ!!
ーーー
暇だ……
やる事が何もない……
1時間30分も何をして待てばいいのだ……
テント張りのイベントとかあれば、楽しく待てたのに……一瞬で終わってしまったのだ。
「アレン君! アリスちゃん!
暇だから神道異界流の修行するよ!」
「そうじゃった! ケンセイに、神道異界流の修行を毎日やれと言われておったのじゃ!」
結局は、いつものルーティンと一緒だ……
3人で神道異界流の修行をしていたら、すぐにシャンティ先生を召喚する時間になったので、召喚する。
「いでよ! 光の妖精シャンティ!」
空中に青白い光の魔法陣が描かれ、中からシャンティ先生が出てきた。
「お待たせしました!夕食を持ってきましたよ!」
シャンティ先生は自分の冒険者バックの中から、家のリビングにあった机と椅子を取り出し、その上にいつもの食事を置いていった。
「これ、みんなシャンティさんが作った料理ですか?!」
「そうです。この、野菜サラダの葉っぱだけはエリス奥様がちぎりました」
ジュリは、モコ村の家に遊びにきた事がないので、シャンティの料理を楽しんでいるようだ。
何でシャンテは、机や椅子まで家から持ってくるのだ。
座る位置まで一緒だ、エリスの変わりにジュリが座っているだけだ。
そして、普通に、食事をして、普通に寝た。
シャンティ先生に、夜の見張りをしなくていいかと聞いたが、この辺りはガリム王国とトン王国を繋ぐ街道の近くで、治安が良く、魔物も余りでないので大丈夫だと言われてしまった。
アリスも魔素を絞らずに、ダダ漏れで寝るので普通の魔物は寄ってこないだろうとの事だった。
強い魔物が来た場合は、どうするんだ?
と、質問したら、大きな魔素を感じたら、寝てても気づくと言われた。
俺が知ってる異世界冒険モノと同じように、交代で夜の見張りをしたかったのに。
しかし、これで良かったのかもしれない。
南の大陸ではこうはいかないらしい。
野営をするのも命懸けみたいだ。
いきなり、思いがけない所でダンジョンが出現し、強力な魔物が溢れ出る事などもよくあるらしいのだ。
南の大陸に着く前に、疲れ果てているなんて論外だ。
休める時に休んで置く事も大事なのだ。
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