第33話 ラスボス
ジャイアント·アントが、次々にアリスに倒され、宙に舞っている。
アリスは物凄い勢いでジャイアント·アントをボコって行くのだ!
しかし、アリスが倒しきれない個体がアリスの両脇から溢れて出てくるので、俺とジュリがアリスの両脇から出てくるジャイアント·アントを逃さず狩っていく。
そして俺達が倒したジャイアント·アントを、ケンセイが華麗な包丁捌き、じゃなくて、剣捌きでジャイアント·アントを綺麗に解体していくのだ。
その流れる様な剣捌きは、一種の芸術だ。
ジャイアント·アントを綺麗に節の部分で切断していき、ボディを傷付けない様にコアを取り出し、要らない部分は道の隅にどけて、必要な部分を次々に冒険者バックに詰め込んでいく。
その動きには一切の無駄がなく、洗練されているのだ!
冒険者バックの説明をしていなかったので一応説明するが、異世界転生ものでよく出てくる魔道具で、何でもたくさん入るバックである。
簡単に言うと、ドラ〇もんの異次元ポ〇ットと考えてもらって問題ない。
「ガキ共、もっとペースを上げろ!
今日の目標はジャイアント·アント·クィーンを倒す事だ!
早くしないと夜になっちまうぞ!」
依頼はジャイアント·アントの表皮100ケだった筈なのに…
クィーンの方はもしも取れた場合って書いてなかったか?
いつの間に、目標が変わったんだ?
ジャイアント·アント·クィーンの所にたどり着くのに何万匹のジャイアント·アントを倒せばいいんだよ…
「ワッハハハハ! 師匠任せておくのじゃ!
妾はスロースターターなのじゃ!
そろそろ体が温まって来たので、本気をだすのじゃ!」
アリスはそう言うと、一気にスピードを上げジャイアント·アントの群れに突撃して行く。
もはや動きが速すぎて、どんな攻撃で敵を倒したのかも分からない。
アリスが触れた瞬間に、ジャイアント·アントが倒されていくのだ。
そして、それを器用に後方に飛ばしてケンセイの目の前に落とし、それをケンセイが素早く解体するという流れ作業が確立されつつある。
ジュリはと言うと、アリスが前に進むスピードが上がって取りこぼしが増えているというのに、今までと変わらず、淡々とジャイアント·アントのボディを傷付けない様に、首の
そして俺なのだが、行軍スピードに着いていけず、誤って節以外のボディの部分までも切ってしまうのだった…
「おいコラ! アレン何やってるんだ!
俺様はジャイアントアントの節を切れと言ったんだ!
何ボディまで傷つけてんだ!」
そんな事言ったて、元々無茶なんだよ…
あの二人は天才だけど、俺はただ産まれた時に魔素総量が多かっただけの凡人なんだよ…
シャンテ先生やケンセイの変態的な修行で、ある程度は強くなったとは思うけど、天才の飲み込みの速さと比べられても困るんだけど…
「お父さん! アレン君頑張ってるのに、なんてこと言うのよ!
普通1年やそこらの修行でここ迄強くならないんだから!」
そうだ! そうだ! ジュリちゃん言ってやってください!
「まっ…まぁ…そうだな…アレン君無理しないで頑張りたまえ!ハッハッハッハ!」
それから2時間程度ジャイアント·アントを狩りまくり、とうとうボスの間までたどり着いた。
「ワッハハハハ! どうじゃ!
この時間なら夕飯に間に合うじゃろ!
「ちょっと待った!!
そいつを殺るのは俺に任せろ!」
俺はアリスがジャイアント·アント·クィーンに飛び掛ろうとする所を、寸でのところで止めた。
俺だってラスボスを倒したい!
俺はドラ〇エ世代なので、最後のラスボスは自分の手で倒したいのだ。
せっかく苦労してここまでたどり着いたのに、ボスを倒すところを指を加えて観ているだけなんて有り得ないのだ。
それにジャイアント·アント·クィーンは弱そうだ。
この西のダンジョンは、ジャイアント·アントの大群が恐ろしいのであって、ジャイアント·アント個体そのものや、ましてやジャイアント·アント·クィーンが恐ろしい訳ではないのだ。
俺は剣術の方はまだまだだが、魔法にはある程度の自信がある。
実際、ジャイアント·アント·クィーンと同じAランクモンスターのデーモンだって瞬殺出来たのだ。
「ちょっと待って! 私も戦ってみたい。
Aランクモンスターがどれ程の強さか試してみたかったんだ。」
よ…予想外の展開だ、まさかジュリまで参戦してくるとは…
意外とアリスだけなら俺やエリスに甘い所があるから、もしかしたら譲ってくれるかもと思ったのだが…
しかし、ジュリに対しては前の世界で兄だった事もあり、譲ってあげたい気もするのだが…
「ジャンケンでいいんじゃないかな?」
俺が難しい顔で考え込んでいると、
ジュリがジャンケンを提案してきた…
た…助かった…
この世界ではジュリの方が俺より年上だ、少し駄々をこねれば確実にラスボスは譲ってくれただろう。
しかし、もしそれをやってしまえば俺がなんとか保ってきた兄だったという尊厳が崩れ去ってしまう。
俺はジュリが好きだ。
それは兄としての好きで、異性の関係の好きではないと思っていたのだか、コチラの世界では俺とジュリとの血の繋がりが無いせいか、異性としての好きに変わってきているのだ。
ちょっとした弾みでタカが外れジュリに欲情してしまうかもしれない。
それを考えただけで夜も眠れないのだ!
本当はジュリとあんな事や、こんな事をしてみたい。
しかしそれを考えるだけで、俺の心は罪悪感でズタズタになってしまう…
「妾もジャンケンでいいのじゃ!」
「じゃあ…俺もジャンケンで…」
そうジャンケンは平等だ! 俺が勝ったとしても何も悪くないのだ!
「それじゃあ、ジャンケンポン!あいこでしょ、ジャンケンポン!」
「あー! 負けたのじゃ!」
まずアリスが負けた。
「ジャンケンポン!」
「よしっ! 勝ったぞー!」
俺はジュリに勝った。
そして、夢にまで見たラスボスを倒す権利を手に入れたのだ!
俺が感動の余り目頭を抑えながら、ガッツポーズをしていると、何かを切り裂く音がした!
「スパッ!!」
振り返ると、ケンセイが、ジャイアント·アント·クィーンの首を切り落としていたのだ!
「えー…………! な…何で?」
「お前らがトロトロやってるからだ!
それに、アレンが斬ったらボディを傷付けるかもしれんからな!
ハッハッハッハ!」
「せ…せっかく苦労してジャンケンに勝ったのに…」
「ハッハッハッハ!
文句があるなら、剣の腕をあげてから言うんだな!」
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