異世界での俺の妹は、幼女で紅いドラゴンみたいデス

第34話 分け前

　ジャイアント·アントの表皮１００ケ必要という依頼を終わらせて、俺達『犬の肉球』は要塞都市ヤリヤルに帰ってきた。

　そして冒険者ギルド会館に向かい、依頼された物を渡してお金に換金してもらうのだ。

　今回の依頼はジャイアント·アントの表皮１００ケだったのだが、実際には１万２０００程のジャイアント·アントを狩っているのだ。

　俺がボディを傷付けて使い物にならなくなった表皮、約１００ケ差し引いても１万１９００ケ余ってしまう。

　ケンセイは依頼分の表皮１００ケと、ジャイアント·アントクィーンの表皮１枚、それからモンスターから取れたコアも換金してもらった。

「まず依頼分の換金が７５００００マーブルになります。

　それからグリーンコア１２０００個で６００００００マーブル、レッドコアが１個２０００マーブルで合計

　６７５万２０００マーブルになります。

　これで宜しいですか？」

　いつもエリスのポーションの受け取りをしてくれる、前髪パッツンの受付のおねーさんが確認してきた。

「ああ、いいぜ！宜しく頼む！」

「それでは少々お待ちください。

　金庫の中からお金を取ってきます。」

「なんで残りの表皮も換金してもらわぬのじゃ！」

「何でって。そりゃぁ、通常はモンスターの表皮や牙は、武器屋や素材屋に持っていた方が、普通に冒険者ギルドに売るより高く買ってくれるんだよ！

　それから、これだけ大量の表皮を持っていけば買い叩かれるし、それに供給過多になってしまって売れなくなってしまう。

　それより俺が保管しておいて、少しずつ小出しに出して言った方が高く売れるんだよ！

　それに俺達がジャイアント·アントを狩り尽くしたから、しばらくは誰もジャイアント·アントの表皮を手に入れられないからな！

　ハッハッハッハ！」

　ハッハッハ…さすがケンセイ、金の亡者だな…

　それにしても、なんなんだこの金額は？

　前の世界なら、ある程度の高級車が買るんじゃないのか？

　エリスのポーション販売も儲かると思ったが、冒険者は桁違いだ…

　１日働いただけで、１年か間余裕に暮らせるじゃないか！

　－－－

　しばらくすると前髪パッツン受付嬢が、もう1人の仲間と大きなトレイに乗せたフレシア金貨と銀貨を重そうに左右に付いた取っ手をそれぞれ片方ずつ持って運んで来た。

　カウンターの上に金貨と銀貨が乗ったトレイを『ドンッ』と置いたら、いつもの様に周りがざわめき始めた。

「なんだ？あの金貨の山は！」

「『犬の肉球』はジャイアント·アント１００匹狩るAランクの依頼を受けてたんじゃないのか？

　なんであんな金貨の山になるんだ！

　まるでSSランクの報酬位はあるんじゃないのか？」

「さっき、ちらっと聞こえたのだけど、１２０００個のグリーンコアを持ってきたって聞こえたわよ！」

「まっまさか！

　西のダンジョンのジャイアント·アントを全て狩ってきたんじゃないだろうな？

　いやそれしか考えられない…」

「新生『犬の肉球』も、前の『犬の肉球』と同様、やる事がめちゃくちゃすぎるぞ!!」

「……」

　そりゃあ、そうなりますよ…

　だって、ジャイアント·アントをいるだけ全て倒せって支持してるのが、その前の『犬の肉球』の人ですもん…

　隣にいるアリスを見ると、またいつもの様に尖った耳をピクピク動かしながら聞き耳を立てて、興奮を抑えながら小刻みに震えている。

　するとクルッと振り返り、今回もまたいつもと同じ様にエントランスの中央のいつもの場所に空中浮遊で飛んでいった。

「よっ！ アリスちゃん！ 待ってました！」

「アリスちゃん！頑張って！」

　アリスに向かって黄色い歓声が沸き起こる。

　初めて、アリスがエリスのポーションを売りにヤリヤル冒険者ギルドに来た際、受付のお姉さんにオモチャにされた事をきっかけに、冒険者にも気軽に話しかけられる存在になっていた。

そして、いつの間にかヤリヤルの冒険者の人気者になっていたのだ！

「ん…ん…コホン！」

「アリスちゃん可愛いー！」

「ワッハハハハ！妾は」「俺のアリス〜愛してるよ！」

「ん…ん」

「ちょっと静かにしなさいよ！

　アリスちゃん、喋れないでしょ！」

「えっと…ワッハハハハ！ 妾は『犬の肉球』神道異界流の使い手、アリス様じゃ！ ワッハハハハ！」

「皆が噂しておった通り、妾たち『犬の肉球』が、西のダンジョンのジャイアント·アントを全て狩ったのじゃ！

　この遠征が、これから始まる新生『犬の肉球』の伝説の始まりなのじゃ！

　ワッハハハハ！」

　わぁー！パチパチパチ…

「アリスちゃん上手く言えたね！」

「いいぞ！ ヤリヤルの誇り『犬の肉球』！」

　アリスは、エントランスの盛り上がりに満足したのか嬉しそうに周りを見渡している。

　アリスが演説している間、ケンセイは一心不乱に、金貨の枚数を数えていた。

「嬢ちゃんたち、確かに６７５万２０００マーブル確認したよ。

　これからも『犬の肉球』ご贔屓に！」

　ケンセイは受付の女の子達と一緒に行（おこな）っていた金額の確認が終わった様だ。

「おいアリス！ お前いつまでやってんだ！

　こっちに集まれ！」

　ケンセイに呼ばれて『犬の肉球』のメンバーが、エントランスのテーブル席に集まった。

「ほらよ！ ジュリ、アリス、お前らの取り分だ！」

　二人にフレシア金貨３０枚ずつ渡した。

　フレシア金貨１枚で前の世界の１万円分なので、３０万渡された事になる。

　７歳と４歳の子供に３０万渡してもいいのかとも思うが、自分達で稼いだので正当な対価だ！

　それより、ケンセイの取り分が俺達と比べて多すぎ…ん…俺の取り分は？

「ほらよ！ それがお前の取り分だ！」

　２０枚のフレシア金貨が、無造作にテーブルに置かれた。

「こ…これだけですか？」

「なんだお前！ 不満があるのか？」

「僕も今日一生懸命頑張ったんです！」

「しゃらくせー！ お前、今日何匹、ジャイアント·アントのボディを駄目にしたと思ってんだ！

１００以下には下らないぜ！

　グダグダ言ってんなら、お前には取り分は渡さなくてもいいんだぞ！」

「す…すいませんでした。有り難く２０万マーブル頂きます！」

　ガチャン

　カウンターの奥の方からドアが開く音がした。

「１階が騒がしかったから、もしかしたらアレン君とアリスちゃんが来てるかもと思って降りてきたけど、正解だったよ。」

　ヤリヤル ギルド長のクラタン·オズワルドが、息を切らせて一階エントランスに降りて来た。

「今、南の大陸の冒険者ギルド本部から連絡があって、君達のお父さんのアレックスが、危険な状況に陥っていると連絡があったんだ！」

「な…何じゃと！父様が！」