第31話 神道異界流

 


 ケンセイとの月謝の話は取り敢えず解決し、今後の剣術の指導についての話し合いになった。


「おそらくお前達は神道異界流の奥義である体内魔素を、体の表面にあふれさせる事がすぐにでも出来るはずだ!」


わらわの体外魔法の拘束を破った技じゃな!」


「そうだ!あの技が神道異界流の奥義であり、基礎でもあるのだ!」


「魔法使いは魔法を使う時、体の中の魔素を出したいと思う魔法に変換させて、指先から発射させるだろ!


 神道異界流の場合は指先ではなく、体全体と刀に魔素をおおうように停滞させるんだ。


 体の周りに魔素を変換させた魔法を停滞させる事により、体全体から炎を出したり、固くしたり、冷たくしたり、軽くして、スピードを劇的に早くする事などができるようになるのだ!


 そして普通それを覚える為には、おのれ自身と剣術を極限まで研鑽けんさんする事によって、神道異世界流の魔素のコントロール方法を身に付ける事ができるのだが、

 既にお前らの魔素コントロールは図抜けている。


 多分シャンティ辺りに、頭がイカれた奴がやる様な恐ろしい修行をやらされたのだろう!」



「……………」



 薄々気づいていたがやはりそうだったのか……



「まぁ、取り敢えずやってみろ!

 簡単に言うと体外魔素を体の外側にあふれさせる感覚だ」



 魔素を体の外に溢れだす感じ…



「おう、アレン出来てるな!

 それにイメージをつければ体を固くしたり、魔法を弾く事だってできるぞ!



 強度を上げるコツは、どれだけ魔素を押さえ込んで薄く被膜が作れるかにかかっているからな!」



 何となくコツは掴めてきた。普通の魔法と一緒だ。

 要は、指先で魔素を凝縮させるか、体全体で魔素を凝縮させるかの違いだけだ。



「おいおい、アリスの魔素はちょっとまがまが々しいな!

 少しアレックスと似てる感じがするぞ!


 アリスもアレックスの様に、神道異界流の体術の方を極めるのが良いかもな!」



「父様も神道異界流が使えるのか?」



「使えるも何も、アイツは一応 俺様おれさまの弟だぜ!



 まァ血の繋がりはないけどな!



 アイツが子供の頃 俺達『犬の肉球』が南の大陸を冒険してる時に、道で行き倒れてる所をエリスが見つけて保護したんだけどよ。

 冒険を続けながら面倒を見る訳にもいかなかったんで、

 冒険者を引退していた俺の親父に面倒をみてもらってたんだ!


 そしたら親父がいつの間にか養子にして、神道異界流を仕込んでいたって訳だ!」



 ん?…という事は、この人は俺の叔父さんで、甥っ子、姪っ子から朝ごはんのお金を取ろうとしているのか…



 それより待てよ…という事は、ジュリは一応、血の繋がりはないが従兄弟って事になるのか…



 従兄弟って結婚して良かったのか?


 血の繋がりがないから良いのか?


 そもそも従兄弟の前に、前の世界では兄弟だった訳だし…んーん…よく分からなくなってきた…



「そっ! そうじゃったのか! という事は、神道異界流を編み出したのは妾のお爺様という事になるのか?」



「まあ、一応そういうこったな!」



「それならば、半端な気持ちで学ぶ訳にはいかぬのじゃ!

 必ずや、神道異界流が最強の流派じゃという事を世に知らしめなければならぬのじゃ!」



「そうだ! その通りだアリス!

 お前が神道異界流の評判を上げて、うちの生徒をじゃんじゃん増やすのだ!

 そしたら朝飯代少しはまけてやってもいいぞ!」



「わっ…分かったのじゃ師匠!

 妾は朝ごはんの為に頑張るのじゃ!」



「ヨシヨシ、その意気だ!

 取り敢えず神道異界流の奥義は教えたが、免許皆伝には程遠い!

 奥義の闘気とうき、即ち魔素をまとえたとしても、剣術、体術がおろそかだと宝の持ち腐れだ!

 神道異界流は剣術、体術を極めた上で闘気を纏う事で完成になるのだからな!」



 ---



 そして今、俺とアリスは子供達と混じって剣術の練習をしている。



 子供達といっても実際には自分達の方が年下なのだが…



 午前中は、子供達と混ざって剣術と体術の練習しながら神道異界流の基礎を学び、昼食を挟んで午後からは、大人達の稽古を見つつ、ジュリが俺達2人だけの為に稽古をつけてくれるのだ。



 ジュリはやはり、天才と言われているだけにとても強い。



 勿論もちろん俺達は、軽く捻られるのだが、ある程度 闘気が使える有段者に対しても、闘気を使わずに軽く捻ってしまうのだ。



 技を極めるとは、こういう事かとわからされる。



 そして夕方4時に神道異界流の稽古を終え、ヤリヤルからある程度離れた人目がつかない場所に移動し、龍に変身したアリスに乗ってモコ村に帰る。



 モコ村の家に着いたら、アリスがまた空に向かって俺の魔素が無くなるまで魔法を連射し、家に入って夕飯になるのだが…

 ここで、エリスとシャンティ先生に報告しなくてはならない事があるのだ…



 明日から朝食をケンセイの家で食べる事を勝手に決めてしまった事と、朝食の代金をぼったくられてしまった事を……



 話すのは気が重いのだが、ポーションを売ったはずのお釣りが少ないで、

 スグにバレてしまうだろう。



 俺は、意を決してエリスとシャンティ先生に打ち明けた。



「明日からケンセイさんの家で朝ごはんを食べる事になりました。」



「アレン坊ちゃん、私が作る朝食に何か不満でもあるのですか?」



 シャンティ先生の刺さる様な視線が突き刺さる。



 とてもじゃないが、お金を払ってまで食べさせて貰うとはとても言えない…



「ワッハハハハ! シャンティが作る朝食も美味いのじゃが、師匠の家のご飯は、大金を払ってでも食べる価値があるのじゃ!ワッハハハハ!」



 …アリスさん…俺の代わりに言ってくれるとは…あなたはなんて兄思いなんですか!



 でも、もう少し空気を読まれたほうが…



「塩太郎が研究してたあの料理ね! 確かにあれは美味しいわね!

 アリスちゃんがお金を払ってまで食べたいのは解るわ!

 シャンティちゃんが、チョット可哀想だけどケンセイちゃんの所で食べる事を許してあげるわ!

 一応、アレックスの実家でもある訳だしね!」



 朝食問題は

 何とか解決したようだった…



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る