第29話 お使い
城塞都市ヤリヤルの城門に着いた。
検問待ちをしていると、アリスの事をダークエルフなのか?
と、勘違いしている人たちがジロジロ見てくる。
自分たちの順番になり検問所に行くと、若い憲兵が近づいてきた。
「君達、今この町で一番HOTな話題になっている『犬の肉球』ニューカマーの双子の魔法使い、アレン君とアリスちゃんだね!
ヤリヤルの町は君達の話題で
もちきりだよ!」
アリスの顔がニヤリと笑った。
「ワッハハハ!
いかにも妾は『犬の肉球』ニューカマー双子の魔法使いの1人、アリス様なのじゃ!
ワッハハハ!」
「あの…すいません!
うちの妹がうるさくて…」
「ははははは!
そんな事 気にしなくていいよ!
アリスちゃんは見た目もアレックスさんそっくりなら、性格もそっくりなんだね!」
「そ…そうなんですか…
僕たち、お父さんにまだ会ったことがなくて…」
「そうだったのか…なんか、ごめんね。
そうだ!
よく考えたら君達S級ギルド『犬の肉球』に入ったんだったね!
それなら、もう検問を並ぶ必要ないよ!
S級ギルド所属者は、この街では検問をパスできるんだ!
明日からそっちの関係者用の小さな門の方から入っていいよ!」
「ありがとうございます。
…ええっと…」
「俺はこの城塞都市ヤリヤルで、憲兵をしているマイクだ!
「はい。マイクさん。
こちらこそ宜しくお願いします!」
---
城壁の中に入ると、前回来た時と同じようにジロジロ見られるのだが、
ダークエルフを見る時の様な嫌悪感がある視線ではなく、好意的な視線に変わっていた。
「ウムウム! 悪くないのじゃ!
さすが『犬の肉球』効果は凄いのじゃ!
さすがは、母様と父様の所属していたギルドじゃな!
ワッハハハ!」
アリスは御満悦で、
そうこうしている内に、冒険者ギルド会館に着いた。
1階エントランスに入ると、中は冒険者でごった返していた。
何か良い依頼が無いか掲示板を見ている者や、
テーブル席に座ってギルドメンバーと話あってる者、
依頼を受けて今から出発しようとしているパーティーなど、千差万別である。
俺とアリスは取り敢えず奥の空いているカウンターを見つけて、その前に立ったのだが3歳児の背の高さでは全く届かない。
仕方がないので、カウンターの下の壁をトントントンと叩いた
「はーい! アレッ? 誰もいないな?」
「すみません~ん! 下にいま~す!」
カウンターの上から15,6歳くらいで、前髪ぱっつんの茶髪の少女が顔を覗かせた。
「『犬の肉球』の双子ちゃん達だ!
ギルド長から聞いていますよ!
そこだとカウンターに届かないので、そちらの入り口からカウンターの中に入って来て下さい。」
「はい。分かりました!」
言われた通りにカウンターに向かって歩いて行くと、周りがザワザワ騒ぎだすのが聞こえたがそのままカウンターの中に入っていった。
中に入ると、受付のお姉さん達が仕事そっちのけで全員集まっていた。
「あの…お母さんに言われてポーション持ってきたんですけど…」
「それより、抱っこしていい?」
「エッ?」
俺は、
「わぁー! 可愛いー!」
「これは将来カッコよくなるなー」
「おっ!お主ら、なっ何をするのじゃ!」
「ぷにぷにしてるよ! 食べちゃいたい!」
「なっなんじゃと! 妾を食べても不味いのじゃ!」
アリスもまた、受付の女の子達に捕まっているようだ…
カウンターの外側にいる冒険者達も、聞き耳を立てたり覗いたりしている。
俺とアリスはなすがままにもみくちゃにされてどうする事もできず、ただ時が流れるのを待つしかなかった…
しばらくして、受付の女の子達が満足したのか散って行ったので、改めて前髪ぱっつんの受付のお姉さんに聞いてみた。
「あの…ポーションどうしたらいいですか?」
「アッ! そういえば、ポーションだったね!
ここに出してくれる?」
前髪ぱっつんのお姉さんがソファーセットのローテーブルを
「上級2個、中級5個、初級10個ね!上級は1個1万7000マーブル、中級が1万2000マーブル、初級が5000マーブルだから、締めて14万4000マーブルね!」
スッ…凄すぎる…
エリスは自分は働かないで、妖精に仕事をさせてるだけなのに、1日14万4000マーブルも稼いでしまうのか!
これは冒険者をやるより、ポーション作りの方が儲かるんじゃないのか?
俺が驚愕している隣で、
まだ放心状態のアリスは、妾は美味しくないのじゃ…そこを触っては駄目なのじゃ~
何かぶつぶつと、
「はい、14万4000マーブルです。アレン君、確認おねがいします。」
俺は前世でお金を稼いだ事がなく、こんな大金を手に持った事もなかったので、手が震えながらも、なんとかお金の確認をする事ができた。
「確かに14万4000マーブル確認しました。
うちの商品をお買い上げ頂き有難うございました。」
「どういたしまして! よく出来ましたね!
アレン君! 家で練習してきたのね!」
また抱きかかえられて、頭をヨシヨシされた。
精神年齢がオジサンの俺としては馬鹿にされてる気がするのだが、
若い女の子に抱っこされるのは、悪い気がしないというか、むしろ嬉しいので自然にニヤけ顔になってしまうのだった…
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