第28話 グリフィン<ケルベロス<アリス

 


 くして『犬の肉球』の復活が決まった。


 取り敢えずギルドを活動させる為には、団長、副団長を誰にするかを冒険者ギルド会館に提出しなければならない。


 アリスが団長をやりたいと駄々をこねると思ったのだが、兄様がやるべきだと逆に提案された。


 副団長も、「ジュリが姉様だからやるべきじゃ!」

 と言って副団長もあっけなく決まった。


 ジュリは冒険者ではなかったのだが、魔法学校卒業者や有名剣術道場の目録以上の段位を持っている者は、中級冒険者の資格が与えられる規定により冒険者となった。


 ちなみに、これにより『犬の肉球』の副団長は結成以来サトウ家で三代続いた事になるらしい、初代副団長はジュリのお爺さんで結成メンバーの塩太郎、2代目はケンセイ、3代目はジュリだという事だ。


 アリスはそれを聞いて嬉しそうに、


「そうか! そうじゃったのか!

 ウムウム! そいつは良かったのじゃ!」


 と、1人で納得していた。



 ---



『犬の肉球』が復活したからと言って、まだ冒険者としての活動をする訳ではない。


 俺は引き続き、シャンテイ先生の指導計画にもとづき、血反吐を吐くような特訓を義務付けられている。


 今までの魔法の特訓だけではなく、これからは剣術の特訓も始まるのだ。


 実際 魔法の勉強は、既にャンティ先生から極意を教わっているので終わっているのだが、魔素総量を増やす為の特訓は続いている。


 今現在の魔素総量は、アリスをハーフエルフの状態で召喚させた場合、1日中出現させた状態でも、俺の魔素の回復の方が早くなったので常時召喚したままでも問題ない。


 しかし龍体での召喚の場合は3時間しか持たない。


 シャンティ先生が現在考えている目標は、アリスを龍体の状態で1日中召喚させたままでも、大丈夫な魔素総量を目指している。


 なので、まだまだ足りないのだ。


 最近の魔素総量の増やし方は、アリスが龍の体になって、空に向かって最大火力の魔法を、俺が魔素切れが起こるまで何度も発動し、俺の魔素が3分の1程度回復したら、また俺が魔素切れを起こすまで魔法を連発するというのを、朝から晩までやっているのだ!



 はっきり言って、無茶苦茶だ!



 シャンティ先生に言わせれば、まだまだ最強には程遠いらしいのだ。


 アリスがいくら強くなっても、俺が呆気あっけなく死んでしうと一緒にアリスも消滅してしまう。


 なのでアリスの為にも、誰よりも強くなってもらわないと困ると言うのが、シャンティ先生の言い分なのだ。



 それで今日からのカリキュラムなのだが、

 朝食を食べた後、毎日ヤリヤルまで、エリスが作ったポーションを冒険者ギルドに配達する所から始まり、

 その後ケンセイの道場で剣術の稽古をし、夕方 家に戻って終わりという日課になるらしい。


 こうやって聞くと楽な感じがするのだが、実際にはこんな感じだ。



 ---



「アレン坊ちゃん!朝ですよ!」


「う…ん…

 シャンティ先生、おはようございます

 …」



「早速、アリスお嬢様も、起こしてください!」



「アリス!」



「ワッハハハ!アリス様の登場なのだ!」


 アリスを龍の体で召喚した。

 アリスはそのまま庭に飛んで行き、外でアリス砲をぶっぱなす。


 これが最近 モコ村での、朝の始まりの合図になっているようだ。


 アリスはほとんどにわとりの代わりである。


 モコ村でも鶏がいたのだが、最近ではアリス砲にビビって鳴かなくなってしまったらしい…



 俺は朝の目覚めと共に魔力切れを起こし、ぐったりしながら朝食をとる。


 もちろんアリスが龍のままだと魔素がなかなか回復しないので、すぐにハーフエルフに変身して、俺と一緒に朝食を食べている。



「今日からジュリエットの所にいくのじゃろ!」



「アリスお嬢様とアレン坊ちゃんにヤリヤル冒険者ギルドに行ってもらい、

 エリス奥様のポーションを届けて貰ってから、ジュリ様の所に行く事になりますね。」



「そうか! そうか! そうじゃったな! ワッハハハ!」



「こちらの冒険者バックに、ポーションは既にに準備できてます。

 朝食が終わり身支度がすんだら、冒険者ギルドへのお使いをよろしくお願い致します。」



「ワッハハハ! 任せておくのじゃ!」




 朝食が終わり、身支度がすんだらヤリヤルへ出発である。


 俺は少し魔素が回復してきたのを感じながら庭にでると、既にエリスとシャンティ先生、アリスが待っていた。


「それではアリスお嬢様。

 お願い致します。」


「ふむ、分かったのじゃ!」


 と、言って龍体に変身した。


 俺は、ポーションが入った冒険者バックを持ちアリスに股がった。


 そして、アリスはその場に浮き上がり、


「それでは母様、シャンティ!いってくるのじゃ!」


「アレン、アリスちゃん、気を付けてね!」


「アレン坊ちゃん、アリスお嬢様をよろしくお願いします。」


「分かりました! それでは行ってきます!」


 アリスは全く揺れずに、猛スピードでヤリヤル目指して飛んでゆく。


 何故、揺れないかと言うと、羽を全く使ってないのだ。


 前の世界での龍の体は、東洋風の龍の体だったので羽がなく、元々、空中浮遊魔法で飛んでいたらしいのだ。


 こちらの世界に来たら、ファンタジー使用の西洋風の龍になって、羽が生えてたらしい。


 アリスに言わせると羽で飛ぶ様な、野蛮でみっともない事ができるか!

 という事らしい。




 そして、風も全く感じない。


 アリスの浮遊魔法が俺の体にもかかっているようなのだ。


 魔素感知で目をこらしてみると、俺にも薄い魔素が覆われている。



 精霊魔術師のような召喚系魔術師にとってのステイタスは、召喚できる使い魔の格で決まるが、

 乗り物のとしての便利な使い魔が召喚できるかも、また召喚系魔術師の醍醐味の1つである。


 ちなみに空飛ぶ系の最高峰が、グリフィンである。


 賢くてある程度大きいので、乗り心地も最高峰という事であるのだが、羽を使って飛ぶのでアリス程ではないだろう。




 現在、使い魔で最高評価を得てるのが、

 南の大陸の漆黒の森のダークエルフの女王ガブリエル·ツェペシュの使い魔、

 冥界の番犬ケルベロスである。


 ケルベロスは3つ首を持ち、竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬で、尚且つ、空中浮遊までできるハイブリッド使い魔なのだ!



 俺的にはアリスの方が可愛いらしい分、上だと思っている。



 それに、この世界で龍種を使い魔にしているのは俺だけらしい。



 たまたまアリスが幼い子供の龍で、本来の消費魔素の10分の1だったのも良かった部分もあるのだが…



 実際に、赤龍や黒竜は、誰の使い魔にもなっていない。



 2頭とも召喚自体はされたのだが、消費する魔素がデカ過ぎて、呼び出したはいいが誰も契約できなかったのだ!


 ---



 そんなこんなで、いつの間にか

 ヤリヤル付近に近ずいてきた。


 アリスが龍のままだとまた騒ぎが起こるので、ここで一旦アリスから降り、

 龍からハーフエルフに変身してもらい、ここからは徒歩でヤリヤルに向かう。


 この時点で俺の魔素は、今日2回目のスッカラカンだ。



「それじゃあ、歩いてヤリヤルまでいくぞ!」



「了解なのじゃ!」


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