第27話 『犬の肉球』
困った事になってしまった…
妹のジュリ…この世界ではケンセイさんの娘さんで、俺より4つ年上のお姉さんのジュリエットと結婚の約束をしてしまったのだ…
しかも3歳で…
このファンタジー世界なら家同士の政略結婚とかもあるかもしれないが、
俺の場合、結果として無理矢理自分自身で、結婚の約束を取り付けた感じになってしまったのだ…
俺としては、ただ妹を
ケンセイさんとジュリ的には、俺が何がなんでもジュリと結婚したいというような感じに
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そして今現在、ギルド会館の玄関前に到着したところだ。
ギルド会館の前には、クラタンが立っていた。
「アレン君、アリスちゃん! 無事だったか!
約束の1時間を過ぎても戻って来なかったから、何かあったのかと心配して今から探しに行こうと思ってたところだよ!」
「ごめんなさい。クラタンさん。」
「無事だったら何も問題ないよ。
初めての町で道に迷ってしまったんだね!
んッ! アレッ? ジュリちゃん?」
「ご無沙汰しております。クラタンさん。
そして、心配させて申し訳ありませんでした。
アレン君とアリスちゃんと偶然に町で知り合い、うちの道場に遊びに来るよう
引き留めてしまったのです」
「そうだったのか!
それなら仕方がないね!
別にジュリちゃんは悪くないよ!
エリスさん達が待ってるので、早くギルド長室に行こっか!」
クラタンに引きつられギルド会館の1階エントランスに入ると、中にいた冒険者達がざわついた。
「オイ! ギルド長が連れてるのって、まだ3歳なのにいきなりA級モンスターのデーモンを倒してA級冒険者になったっていう、元『犬の肉球』のアレックスとエリスのとこの双子だろ!」
「オイオイ!双子の隣にいるのは、
これまた元『犬の肉球』副団長、剣聖サトウの一人娘で、
神道異界流の免許皆伝を、最年少で修得した天才剣士ジュリエットじゃないのか!」
「今日はエリスと、腹黒妖精シャンティも来てるっていうじゃないか!
まさか『犬の肉球』が、新たに新メンバーを入れて復活するというのか!」
今の話を聞いていたアリスの少し尖った耳が、ピクピク動いている…
少し固まって何か考え込んでいる…
これは絶対、何かする時の前触れだ…
アリスがニヤリと笑った。
考えが
アリスが歩くのを止めた。
そしてエントランスの中央に、空中浮遊で移動した。
エントランスにいた冒険者たちはというと、3歳の子供が空中浮遊しているという現実を頭で理解する事が出来ず、ボーッと眺めている。
そして、アリスが喋り出した。
「ワッハハハ!
この度『犬の肉球』は、新メンバーを迎えて復活する事になったのじゃ!
皆の者! 『犬の肉球』復活の最初の
今日、この日が伝説の始まりじゃからな! ワッハハハ!」
やってしまった…
クラタンとジュリが、ポカンと口を開けてアリスを見ている…
エントランスに居た冒険者達も、しばらくポカンとアリスを見ていたが、しばらくするとガヤガヤと騒ぎだした。
「オイ! あの娘、空中浮遊してなかったか?」
「それより、ついに『犬の肉球』復活するんだぞ!」
「あの伝説の『犬の肉球』が!」
「少数精鋭なのに、大手ギルドに1歩も引かず、
年間ギルドランキングでは、毎回上位入賞。
それも本拠地をダンジョン密集地の南の大陸に置かず、なぜかここヤリヤルに置いている謎のギルドで、俺たちヤリヤル冒険者の誇り!」
「ニューカマーに、わずか3歳の年齢でA級冒険者になった双子に、
天才剣士のジュリエット!
これは今日、赤龍様が現れたのに続いてのビックニュースだぜ!」
どっちもアリスがやらかした事なのに…
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エントランスが盛り上がっているのを後に、俺達はギルド長室に着いた。
「アラアラ、ジュリちゃん!お久しぶりね!」
エリスがジュリを見つけて、微笑みながら挨拶した。
「エッ…エリ、じゃなかった。
お母様。お久しぶりです。」
「エッ? お母様?」
「…えっと…あの…その…」
ジュリが赤くなってモジモジしながら、俺の顔をチラチラ見ている…
べ…別に、エリスに今言わなくても…
俺が固まっていると、
「兄様がさっき、ジュリエットをお嫁にすると言ってたのじゃ!
だからジュリエットは、妾の姉様になるのじゃ!」
またもや、いつものようにサラッと言いにくい事を言ってくれた。
今回は、俺の口から話しにくかったから良かったのだが…
ジュリの顔が、耳まで真っ赤になっている。
「アレン、どういう事?」
「流れと言うか…とにかく、ジュリと離れたくなかったんです!
でも、まだ先の話です!
ケンセイさんを倒さなければジュリをお嫁に貰えない約束ですから!」
「そうなの。ケンセイちゃんと話がついてるなら、私は構わないわよ!
ジュリちゃんは生まれた時から知ってるし、ジュリちゃんの亡くなったおじいちゃんの塩太郎も『犬の肉球』の仲間だったし、そもそも元々『犬の肉球』の仲間は家族みたいなものだからね!」
「それで相談なのですけど、ケンセイさんの所で剣術の修行がしたいんですけど…」
「アレン坊ちゃん、それなら大丈夫ですよ。
元々、アレン坊ちゃんの体が出来上がってきたら、ケンセイにアレン坊ちゃんの剣術の先生になってもらう予定だったのです。」
「そうだったんですか!安心しました!」
「あのー。エリスさん。
『犬の肉球』の件なんですが、先程アリスちゃんがエントランスで『犬の肉球』を復活させると、冒険者の皆さんに宣言してしまったのですがどうしましょうか?」
クラタンが、話のタイミングを見計らって先程のアリスのしでかした事をエリスに話だした。
「『犬の肉球』を復活させるといってもアレックスは今は他のギルドの応援という形でレイドに参加してるし、クラタンとケンセイは引退してるし、他のメンバーもすでに何処かのギルドに移籍して、誰もいないから無理じゃないのかな?」
「妾は1人でも『犬の肉球』をやるのじゃ!
それに兄様と
「でも、3人だけで『犬の肉球』をやるのは認められないよ。
パーティーのバランスが悪すぎる。
せめて回復職を入団させなければ、2代目『犬の肉球』団長の僕は、ギルド復活を認めないよ。」
クラタンが少しだけ、凄味を効かせてアリスを見た。
「フッフッフッ! 大丈夫ですよ。クラタン。
アリスお嬢様には、私が付いています。
『犬の肉球』を結成時から見守る、回復役兼、エンチャンター兼、参謀役もこなす万能妖精のこの私が付いてますからね。」
シャンティが怖い顔をして、笑っている。
「シャンティちゃんが付いてくれるなら、安心ね!」
「母様は、参加しないのか?」
「私が参加すると、いろんな問題が発生てしまい、あなた達にも危険が及ぶわ。
私が参加しても跳ね返す力がついたら『犬の肉球』に参加してもいいかもね!」
「そうなのか! そしたら『犬の肉球』を最強のギルドにすればいいのじゃな! もとより最強を目指しているので、問題ないのじゃ! ワッハハハ!」
「しかしクラタン、『犬の肉球』は解散した事になっていたのではないですか?」
シャンティ先生がクラタンに聞いた。
「大丈夫ですよ! 『犬の肉球』は、僕が所属していた思い入れのあるギルドです。
アレックスがギルド解散届けを出しましたが、僕の裁量で解散届けは僕の机の中にしまってあります。
なので、S級ギルドの状態でいつでも復活できますよ!」
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