第25話 剣聖 サトウ

 


「ちょっ…ちょっとアレン君!

 いきなり泣き出して、どうしちゃったの!」


「ウゥ…ゥゥゥ…」


「ヨシヨシお姉さんが、アレン君の事守ってあげるからね」


 ジュリエットが、俺を抱きしめ頭をナデナデしてくれた。


「おいコラ!お前うちの娘にこなかけてんじゃねえよ!

 お前、なりは子供でも、中はオッサンなんだろ!

 うちのむすめは、まだ7歳なんだぞ!

 前世でいもうとだったか、何だか知らないが、俺の可愛い娘から離れろ!」



 たっ確かに、俺は見かけは子供、中身はオッサンだ…


 でも、ジュリ、ジュリエットさんは、前世で俺の姉、いや妹だったのは事実なんだ!


 いくら、今現在ケンセイさんと、ジュリエットさんが実の親子だったとしても、俺だってジュリと実の兄弟だったんだ!


 せっかく、この世界で再会できたのに、また離れ離れになるなんて、絶対にありえない!




「いや、絶対に離れません!ジュリは俺のものです!」


「エッ! ちょっと…あっアレン君?

 何言ってるの!」


 ジュリエットの顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。


「おっお前!何言ってやがるんだ!」


「言葉通りです。

 ジュリは、俺の妹で絶対に誰にも渡しません!」



「そんな事、俺様が許すと思うのかよ!」



「それなら、仕方がありません。

 実力で奪うしかありませんね」



「フン。俺もナメられたものだな…

 俺から実力でジュリを奪うって!


 元S級ギルド『犬の肉球』副団長、剣聖サトウ様に、ナメた口を聞いた事を後悔させてやるぜ!」



「ちょっと! 何ムキになってるのよ! お父さん!

 アレン君はまだ子供なのよ!

 ただの冗談よ! ねっアレン君!」



「冗談じゃありません。僕は本気です」



「だから言っただろ!ジュリ!

 そいつは、体は子供、中身はオッサン、変態野郎なんだ!

 そんな奴に、何も知らない7歳の娘を渡せるわけないだろ!」



「戦うのなら、わらわも混ぜて欲しいのじゃ!

 母様と父様が所属していた『犬の肉球』副団長の実力を見てみたいんじゃ!」



「もう!アリスちゃんまで何言ってるのよ!」



「おお、いいぜ!

 それなら、二人一緒にかかってこいよ!」



 アリスの目が輝いた。



「ちょっと待ちなさい!

 戦うなら、怪我しないように試合形式にしなさい。

 木刀なら寸止め、魔法なら、道場を壊さない程度の火力で!」



「俺は、それでいいぜ!」



「僕も構いません」



わらわもじゃ!」



「それじゃあどうする?

 二人いっぺんか、それとも1人ずつか?」



「これは、僕の問題なので1人でやります。」



「それじゃあ、始めるか!」



 ケンセイは木刀を一本握って、道場の中心に立った。



 俺も向かい合って、ケンセイの前に立った。



 しかし、ケンセイが強いようには、どうしても見えない、殺気が全く感じないのだ。



 殺気を消しているという事は、やはり達人なのか?



「お前、中々やりそうだな!

 金色のブレスレットを付けてるって事は、A級冒険者だろ、A級になれるって事は、それなりの殺気や、魔素のオーラが見えるものだが、お前からは何も見えない!

 それを抑える技術を持っているって事だ!

 さすが、俺の親父と同郷と言ったところか!」



「私が審判をやるわ!」



 ジュリエットが、俺とケンセイから少し離れた横に立った。



「では、始め!!」




「ッ!!」



 それは、一瞬だった!


 ジュリの『始め!!』

 の合図の瞬間、木刀の切先が俺の喉元ギリギリで、寸止めされていたのだ!


 一体何が起こったのか、全くわからなかった。


 瞬きもしてないのに、気づいたらそこに木刀の切先があったのだ!



「実戦だったら死んでるぜ!

 喧嘩を売る時は、よく相手の力量を見てから売るんだな!」



 ケンセイの鋭い眼光から放たれる殺気に推され、俺は尻餅をついた。



「ちょっと!お父さん!

 何、本気出してるのよ!

 アレン君はまだ子供なのよ!」



 俺は、ジュリエットに抱えられギュッと抱きしめられた。



「だからさっきも言っただろ、そいつは中身がオッサン体は子供、実際はAランク冒険者だ。

 舐めてかかったら、こっちがやられるんだよ!」



「だからって、こんなに可愛いいアレン君をいじめる事ないじゃない!

 今後アレン君をいじめたら、タダじゃ置かないからね!」



「ぬグゥっ………」



 ケンセイは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。



 俺は情けないやら悲しいやら、ジュリに抱きしめられて嬉しいやら、色んな感情が溢れ出して涙がでてきた。



「ほら、お父さん!

 アレン君また泣いちゃったじゃない!」



 妹に憐れまれるなんて、兄としてカッコ悪いが何故か涙が止まらない

 …



「アレン君は私が守ってあげるからね!」



 これじゃあ、前世の時と同じだ。



 俺が呪いで動けなくなった後、ジュリは俺を守ろうとしてくれた…



 転生してもやはり元々の魂は同じなのか、ジュリは俺を守ろうとしてくれる…



「ワッハハハ!さすが『犬の肉球』副団長、剣聖サトウなのじゃ!

 兄様を一瞬で倒すとは、さすがなのじゃ!

 次は、妾が相手をしてやるのじゃ!

 ワッハハハ!」



「約束だったからな、仕方がない。

 ジュリに冷たくされてムシャクシャしていたところだが、丁度いい!

 アリス!

 てめぇで憂さ晴らしさせてもらうぜ!」



「望むところじゃ!

 さっきのお主の動き、妾には通用しないので覚悟しておくのじゃな!」



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