第24話 ジュリエット

 


「ジュ…ジュリ?」



「エッ?何で、私の名前を知ってるの?」



「本当に…ジュリなのか?」



「本当って、どういう事?

 私は、ジュリエット・サトウよ!」


 ジュリエット・サトウと名乗る黒髪の7,8歳位の少女は、どう見ても、

 空木からぎジュリ、そう、前いた世界での俺の妹と瓜二つなのだ!



「……」



「あなた…本当に大丈夫?

 この近くにうちの道場があるから、少し

 休んで行く?」



「えっ…あっ…はい…」



「兄様どうしたのじゃ…」





『妹のジュリに似てるんだ…似てるというより、そのものに近い感じがする…』



 と、念話でアリスに話した。



『そう言われれば、兄様と魂の感じが、似ておるのう!』



 アリスと念話で話てるうちに、ジュリエットの実家の道場に着いた。



 くつを脱いで道場の中で待ってて、と言い、ジュリエットは道場の脇の部屋に入って行った。



 道場 奥の上座かみざには、日本刀のような刀が飾られ、その壁には、心技体と書かれた掛け軸が飾られていた…!?



「心·技·体!」



 何処どこから見ても日本語である。


 日本刀の様な刀も、手に取ってみた。


 鞘から刀を抜くと、村正と日本語で彫ってあった。



「村正?! 妖刀村正? 」



 しばらくすると、ジュリエットが、眼光鋭い髭面の中年男性を連れてきた。


「お父さん、この子達がさっき言ってた、人狩りに襲われてた子達。

 様子が変だったので連れてきたの。

 怪我とかしてないか見てくれる?」




「オイオイ! ダークエルフかい!なんで西の大陸でダークエルフが居るんだ!」



 急にアリスが目を輝かせた。



「ワッハハハ!わらわはS級ギルド『犬の散歩』のエリスとアレックの娘、アリスなのじゃ!ワッハハハ!」



 さっき焼き鳥屋の親父が言ってたのを、覚えてたんだな…この町では『犬の肉球』を知らない奴はいないって言うのを…



「なんだ、嬢ちゃん、アレックスとエリスの娘か!

 ハッハッハ!

 それと、犬の散歩じゃないぜ、『犬の肉球』な!

 それから、俺も、『犬の肉球』の元メンバーだぜ!」



「おっ…そっ…そうなのか!

 お主も『犬の肉球』なのか?」



「おお、そうだぜ!スゲーだろ!」



「凄いのじゃ!」



「そうか、そうか!

 それとお主じゃなくて、俺の名前はサトウ ケンセイな!

 人呼んで、剣聖サトウとは、俺の事だ!ワッハハハ!」



「ウォー!凄いのじゃ!

 二つ名持ちとは、さすが『犬の肉球』なのじゃ!」



 ただ、自分の名前を言ってるだけじゃないのか…

 でも、佐藤 剣聖ってまんま、日本名なんじゃないのか?

 まさか、この人も異世界転生者なのか?





「あの…ケンセイさんって日本人ですか?」


「何いってるんだ?

 俺は生まれも育ちも、ヤリヤルたぜ!

 でも、俺の親父は長州藩ってとこ出身で、元々この世界の人間じゃなかったって言ってたぜ!」



「長州藩?江戸時代の長州藩か?ケンセイさんのお父さんは、異世界転生したって事なのか?」



蛤御門はまぐりごもんって所で、会津と薩摩と戦ってた時に、切られて意識がだんだん遠のいて、もう死ぬんだな……


 と思った瞬間、この世界に来てたって言ってたぜ!


 そこにある剣が、その時使ってた剣らしくて、こっちの世界には、それを作る技術がないんだと!」



 禁門の変の事か、と言うと幕末の時代だな。



 俺は呪いで引き篭もってた頃、ラノベの他にも歴史ものが好きで、司馬遼〇郎とかも、たくさん読んでいたのだ。



 倒幕派の長州藩出身だから、村正を使ってたのか。



 村正は、徳川家に仇なす者が使う剣として定番だって、何かの本に書いてあったからな。



「ケンセイさんのお父さんは、異世界転移してこの世界に来たって事なんですか?」



「よく分からんが、そうみたいだな!

 で、お前は何なんだ!


 さっきから、江戸時代とか聞いたことない言葉を話していたが、親父がいた世界の事を知ってるのか?」



「僕は、アレンです。エリスとアレックの息子です。

 僕とアリスは産まれた時から、前世の記憶があるのです。」



「それじゃあ何かい、俺の親父とお前ら兄弟は同郷って事なのか…」



「そのようです。


 この世界には、ケンセイさんのお父さんや僕達みたいに、異世界移転や転生者が、他にもいるんですか?」



「今まで、親父以外聞いた事はないな。

 黒竜が異世界から来たって話は、有名だがな…」



「異世界転生者は、たくさんいると思うのじゃ!

 我らもそうじゃが、ジュリエットも多分そうじゃな!


 ただ、ほとんどの者は、赤子の時に前世の記憶が無くなってしまうのじゃ!

 アレンの記憶が残ったのは、妾のせいじゃな! なんせ妾は、神獣じゃからな!ワッハハハ!」



 急にアリスが、話に入ってきた。



「オイオイ!

 いきなり俺の娘の事を、ぶっ込んで来たな!

 ジュリエットが異世界転生者って、どういう事よ!」



「そのままじゃ!

 ジュリエットは、前世でアレンの妹だったんじゃ!」



 俺がどう切り出すか悩んでた事を、アリスがサラッと言ってしまった…



「エッー!! 私が君の妹?

 私の方が歳上なのに!」



 あっアリスさん、俺はここからどうすれば…自然な感じで少しづつ、事情を話そうと思ってたのに……



「でも、確かにあなたの事、他人には思えないわね。

 ほっとけないというか…」



「えっと…僕も、ジュリ、ジュリエットさんの事どう接していいか分からないんです…


 顔も、妹のジュリそっくりだし、でも僕より歳上でお姉さんだし、今回は血の繋がりがないし…もう一生会えないと思っていたのが、まさか…お互い転生してこんな形で出会えるなん…て…………………」



 話していたら、涙がみ上げてきた…




 妹のジュリに、会えたのだ…




 この世界に転生した事によって、完全に、前の世界と繋がりがなくなってしまったと思っていたのに…




 絶対に、もう会えないと思ってた人と会えたのだ…




 涙が溢れて止まらない…




 悲しいからじゃない…




 嬉しくて涙が止まらなのだ…





 この世界に転生出来て、初めて良かったと思えた…


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