第23話 遭遇

 


 町の中を歩いていると、視線を凄く感じる。


 3歳児の小さな子供が、二人きりで歩いているのが相当目立つ様だ。


 と言うか、どう見てもアリスの容姿が気になっているのだ。


 ダークエルフが西の大陸に現れる時、ほとんどの場合は、人間には危害は与えないのだが、何故か建物だけは破壊していく。


 ダークエルフが争っているのはエルフだけなので、西の大陸に上陸してきても人間にはそれ程危害は与えないのだが、いつもエルフに軽くあしらわれてしまい、腹いせに建物だけを破壊して南の大陸に帰って行くのだ。



 なので西の大陸の人間は、西の大陸に上陸する度に、建物を破壊していくダークエルフを忌み嫌っている。




 そんな理由わけで、本当はハーフエルフなのだか、ダークエルフの見た目のアリスを見ると眉をひそめるのだ。


 アリスはというと、どこ吹く風であまり周りの視線は気になっていないようだ。


 キョロキョロと、町を見渡している。


 俺はというと、手当り次第店に入っては、雑貨屋、服屋、果物屋、屋台の食べ物などの値段をチェックして行く。


 調べた結果、この世界の500マーブルは、大体、元いた世界の500円位の相場の様だ。


 果物は、前いた世界よりかなり安い!


 リンゴの様な果物が、50マーブルで買えるのだ!



 アリスを見ると、屋台の焼き鳥を見て、よだれを垂らしている。


 アリスは、焼き鳥が食べたいのか…



「アリス!よだれが垂れてるぞ!」



「エッ!本当なのじゃ!しかし、あの食べ物、凄くいい匂いがするのじゃ!」



「シャンティ先生から貰ったお小遣いで買えばいいだろ。」



「そうじゃな!

 しかし、どうやって買えばいいのじゃ!

  妾はお金を払って、物を買った事がないのじゃ!」



 アリスが涙目で、俺の方を見てくる。

 そうか、アリスにとっては初めての買い物なのか…



「どれが食べたいんだ?」



「これと、これと、それから、これが食べたいのじゃ!」



「すいません!これとこれとこれください。」



「あいよ!焼き鳥と、ネギまと、つくねな!300マーブルになるよ!」



「アリス、300マーブルおじさんに払ってあげて!」



「わっ分かったのじゃ!300マーブルじゃな!」



 アリスが慌ててお金を出そうとしていると、屋台の親父がアリスを見て怪訝けげんそうな顔をしている。



「300マーブルじゃ!」



 アリスが、手に300マーブルを持って渡そうとする時、金色に輝くブレスレットが見えた。



「おっお! 嬢ちゃんありがとな! ホイ! 焼き鳥な! それより、嬢ちゃん冒険者なのか?」



「そうじゃが!さっきなったばかりなのじゃ!」



「オイオイ嘘だろ!さっきなったばかりで、Aランク冒険者になれる訳ないだろ!


 それから嬢ちゃん。ダークエルフに見えるんだが、西の大陸でダークエルフが冒険者になれる訳ないだろ!」



「妾は、ダークエルフではないのじゃ!


 エリス母様と、アレック父様から産まれたハーフエルフじゃ!」



「エリスとアレックスっていやぁ、『犬の肉球』のエリスとアレックスか?」



「なんじゃ?それは?」



「そうです!

『犬の肉球』のエリスとアレックスです。」



 俺が代わりに答えた。



「そうか、そうか、精霊アイドルのエリスと、赤い鉄拳アレックスの娘か!

 それじゃあ、その容姿になるわな!

 ハッハッハッハッハ!」



「そうなのじゃ!ワッハハハ!」



「この町で、ダークエルフかって聞かれたら、エリスとアレックスの娘だって言えば皆、納得してくれるんじゃないのか!

 なんたって、S級ギルド『犬の肉球』は、世界で10指に入る有名ギルドで、この町の誇りだったからな!」



「ワッハハハ!そうなのか!

 エリス母様とアレックス父様は、この町で有名な『犬の肉球』だったのか!

 ワッハハハ!」



 アリスは、エリスとアレックスが有名と聞いて、ご満悦のようだ。



 ---



 俺達は、屋台を後にして、しばらく歩いて行くと、店が無くなってきた。


 人通りが少なくなってきたので、引き返そうと思ったその時、突然、人相が悪い3人組に囲まれた。



「待ちな!」



「……」



「オイオイ、ダークエルフのガキじゃねえか!

 へへへへへ!ラッキーだぜ!

 西の大陸じゃあ、ダークエルフは珍しいから、変態親父に高く売れるぜ!」



「こっちの坊主も可愛らしい顔してるぜ!

 こいつも、かなりの値がつくんじゃないのか?」



「兄様、此奴こやつらどうするのじゃ?」



「アリスは、何もするな!

 お前がやると、この人達、一生のトラウマを負って死ぬまで廃人になっちゃうからな…」



「オイオイお前ら何いってやがるんだ!

 調子こいてると、ケツの穴に、棍棒突っ込むぞ!」



 バシッ!!



「痛っ!!」


 声が聞こえた方を見ると、3人組の右端にいた、ギョロ目で細身の男が木刀で足を払われていた。



「あなた達!何をしているの!」



 剣道着の様な服装を着た、黒髪の7、8歳位の少女が、3人組を睨みつけている。



「オイオイ!嬢ちゃん!何してくれちゃってんだよ!」



 真ん中のガタイの良い、顔に傷がある男が怒鳴った。



「あなた達、こんな事していいと思ってるの!」



「いいに決まってるだろ!

 これは、俺たちの正式な仕事なんだよ!

 お前もついでに、さらって変態野郎に売り飛ばしてやるよ!」



「何を言っても無駄なようね!」



 少女は、疾風の如く木刀を振るった!



 バシッ!!ゴキっ!!ズシッ!!



 真ん中にいたガタイの良い男の間合いに、一瞬で詰めると、

 上段から頭を叩き割り、

 続けざまに、右端のギョロ目には再び足払いで倒れさせ、

 左のデフには、土手っ腹に突きを食らわした!



「…オゥ…ゴフッウエッ…」



 左のデブは、涙目で血が混じった何かを吐いている…




「あなた達、大丈夫だった?」




 黒髪の剣道着の様な服装の7,8歳位の少女が振り返りこっちを見た。



 その瞬間、俺は固まった…






 ジュ……ジュリ?

 


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