第20話 冒険者テスト

 


 城塞都市ヤリヤルの冒険者ギルドのギルド長クラタンに連れられて、冒険者ギルド会館の屋上に登ってきた。


 屋上は闘技場のようになっていて、周りに観覧席の様な席が少しだけある。


 元いた世界のスペインの闘牛場みたいな感じに見える。


 屋上に登ってきた時は、ちょうど冒険者試験をやっていたみたいで、なにやら盛り上がっている様だった。


「危ない!よけろ!」


「今だ!飛び込め!」


「アッー!! 何やってんだよ!」


「やられちゃったよー」


「早く回復魔法かけてあげて。」


 どうやら今モンスターと戦ってた人は、冒険者試験に落ちてしまったようだ。



「丁度終わったみたいだから次やってみる?

 やっぱり怖いのだったら、止めてもいいんだよ。」



 クラタンが心配そうに、話しかけてきた。


 たしかに、普通は3歳の子供がモンスターを倒すなんて無理だと思うよな…


 アリスの方を見ると、やる気満々である。


 いきなりアリスにやらせると、何をしでかすか分からないな…


「クラタンさん、最初に僕にやらせて下さい。」


「兄様!ズルイのじゃ!わらわが先にやるのじゃ!」


「アリス、兄弟なら兄の言う事は聞くものだよ。

 それに、主役は必ず、後から出てくると決まってるんだ。」


「そっ、そうなのか!主役は最後に登場するもなのか!

 うむ…そうじゃな、ここは、兄様に一番槍をゆずるのじゃ!ワッハハハ!」



「えっ、そっ…そうか、アレン君もやるのか。

 誰かDランクの冒険者試験用のモンスターを連れて来てくれ!

 分かっているとは、思うが無理をするんじゃないよ。

 危ないと思ったらスグに逃げるんだ。

 そしたら、スグに係の者がモンスターを止めてくれるからね。」


 俺は闘技場の中央に立った。


 俺のスグ背後には、見た感じ屈強な冒険者が待機している。


 多分この人が、試験中何かあったら止めてくれる人だ。


 観覧席には、さっき試験に失敗した人に回復魔法をかけてた人もいる。


 万全な体制のようだ。


 よく見ると、いつの間にかシャンティまで来ていた。


 多分、エリスが弟子の晴れ舞台を見せようと召還したのだ。


「それではD級冒険者試験を始めます。」


 試験官の声がした後、見た感じ闘牛場の牛が入って来るような入口から、スライムが現れた。


「オイオイ…あんな小さい子供が試験受けるのかよ

 …」


「危ないから、止めさせて!」


 なにやら外野の声が聞こえてくる。


「アレン坊ちゃん、チャチャっと片付けてしまいなさい。」


 シャンティの声が聞こえてきた。


 初めての実戦なので、自分がどれくらいの実力なのか分からない…


 取り敢えず、初級の風魔法を試す事にした。


 風の魔素を指先で極限まで圧縮し、ビー玉ぐらいの大きさにしてから、スライムの核を目掛けて打ち抜いた。


 スライムは、木っ端微塵に爆発し、闘技場の囲いにビー玉位の大きさの丸い穴が、どこまでも続いて空が見えている。


「なっ、何が起こったんだ?」


「何でスライムが爆発したんだ?」


「あの坊やが何かしたのか?」


 皆何をしたのか分からないようだ。


「ワッハハハ!さすがなのじゃ!皆を驚かせるなんて、さすがは妾の兄様なのじゃ!ワッハハハ!」


 アリスの笑い声が闘技場に響く。


 クラタンが、あんぐり口を開けている。


「試験は、こんな感じで良かったですか?」


「問題ないよ…ところでアレン君、何をやったの?」


「ただの風の初級魔法です。」


「そういう事か…無詠唱の風魔法だったから、何も見えなかったのか…しかも、闘技場の壁の状態から推測すると、威力は上級魔法も越えているように思えるな……全く見えなかったのだけど…」


「もっと上のランクのテストは出来ないんですか?」


「ああ…そうだね。

 取り敢えずは、ここではAランクのテスト迄出来るけど、やって見る?」


「出来ればやりたいです。」


「Aランクのモンスター用意して!」


 次は、デーモンが出てきた。


「我を牢獄から出すとは、血迷ったか!

 愚かな人間どもよ!

 ここにいる者1人残らず、引き裂いて食ってやるわ!ぐっわっははは!」


「あの… 初めていいですか?」


「あっ!それでは、A級冒険者試験始め!」


 今度はデーモンだから、もっと強力なな魔法ださないといけないかな?


 まっいいか…取り敢えず、また同じ呪文を試してみるか。


 また、無詠唱の風の初級魔法で、デーモンの脳天目掛けてて撃ち抜いた。


 デーモンは何が起こったのか分からないような顔をして、その場から灰になって消えてしまった。



「ウォー! あの坊主凄いぞ!

 Aランクのデーモンを指しただけで倒したぞ!一体何したんだ!」


 外野から歓声が上がっている。


「ワッハハハ!あれは、妾の兄様じゃ!

 ワッハハハ!」


 シャンティ先生の方を見ると、それくらい倒して当たり前です。

 という様なまし顔をしている。


 それにしても、シャンティ先生の教えは凄まじい。


 毎日、日課のように魔素を限界まで圧縮する練習をさせられてきて、それが初級魔法の普通の練習方法だと思っていたが、違ったようだった。


 Aランクモンスターを1発で倒してしまうなんて、どんな威力だよ…



「それでは、妾の出番じゃな!ワッハハハ!」


 アリスが闘技場の真ん中にふんぞり返ってる…


 絶対に何かやらかす。



「早う、ここにいる、一番強いモンスターを連れてくるのじゃ!ワッハハハ!」


「オイオイ、また子供がでてきたぞ!」


「あれは、ダークエルフじゃないのか?」


 アリスの登場で、また外野が騒ぎだした。


「ワッハハハ!妾はダークエルフじゃないのじゃ!妾は、妖精アイドル、エリス母様と色黒アレックス父様の子、ハーフエルフのアリス様じゃ!ワッハハハ!」



「早く試験を始めるのじゃ!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る