第17話 魔法の極意
シャンティ先生による、召喚魔法陣を一瞬に描く修行が始まった。
召喚魔法陣は、使い魔が出てくる入口としても使われるので、詠唱魔法での代用ができない。
魔法陣がなければ、使い魔の召喚自体が出来ないのだ。
それならば、詠唱魔法で魔方陣自体を出してしまえば良いという話になる。
しかし、魔方陣の一本一本の線や、ルーン文字、複雑な公式を詠唱魔法で再現するのは出来ないことは無いのかもしれないが、複雑な長い詠唱を一字一句間違えないで唱えなければならないので現実的ではないのだ。
それに敵は待ってはくれない。詠唱が終わる前に殺されてしまっているだろう。
そもそも、魔方陣は複雑で長くなる呪文を、簡略させる為に発明された方法だ。
それなのに、長くて複雑な詠唱魔法を、簡単に発動できるように開発された魔法陣なのに、わざわざ難しい方法の詠唱魔法で出現させるというのは、本末転倒な事であるのだ。
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「それでは修行を始めます。
前にも話しましたが、使い魔を召喚するには必ず魔法陣を使わないといけません。
これは絶対な事です。
詠唱魔法で魔法陣を出現させる事は、天才の私なら可能かもしれませんが、現実的では有りません。
そのために、今日までアレン坊ちゃんに無詠唱魔法を学ばしてきました。
アレン坊ちゃんは、今まで召喚用の魔法陣を何度も何度も描いてきました。
書き取り練習に至っては、それこそ何百回、何千回とやらせてきました。
何千回も描いたので、魔法陣を頭の中で、既にイメージする事ができるはずです。
今、頭の中で召喚用の魔法陣をイメージできましたか?」
俺の頭の中では、既に召喚用の魔法陣が思い浮かんでいる。
「シャンティ先生、できています。」
「イメージした物を、頭から指先に向けて、ゆっくりと魔素を感じながら移動させていってください。
それでは、目を開けて下さい。」
俺はそっと目を開けて見た。
すると、目の前には青白く光り輝いた召喚用の魔法陣が浮かんでいた。
「でっ! 出来てる!!」
「これで精霊魔法の勉強は全て終了です。
もう、技術的には教える事は何もありません。
無詠唱で魔方陣を出現させる者は、私はアレン坊ちゃん以外見た事がありません。
ただ、やらないだけで、やれる人はいると思いますけどね。」
もっと、厳しい修行を思い描いていたんだが、拍子抜けするほど簡単にマスターしてしまった。
やはり、シャンティ先生が凄いのだろう。
全ての今までの勉強は、今日の為の伏線だったのだ。
確かに、シャンティ先生はアリスから、俺に精霊魔法を教えてやってくれと頼まれたと言っていた。
それなら召喚用の魔法陣と、精霊の種類や運用の仕方だけ教えれば良いのだが、無詠唱の魔法の練習までさせられた。
ただの善意だと思っていたのだが、シャンティ先生が思い描いていた、精霊魔術師の完成形を完成させる為の布石だったのだ。
なのでシャンティ先生にとっては、今回すぐに俺が無詠唱で魔法陣を出現させる事ができたのは当然の事で、既に修行自体は終わっていたのだ。
「後は、アリスお嬢様の召喚時間を増やす為に行っている私が考えた予定表を毎日続けてもらって、それからたくさん精霊を倒し契約できれば、精霊魔術師として頂点に立てるかもしれませんね。
まあ、アレン坊ちゃんはアリスお嬢様と契約している精霊魔術師なので、頂点を目指す事は当然なのですけどね。」
今回、全てシャンティ先生の手のひらで転がされてる感じがする。
シャンティ先生にとっては、アリスに与えられたミッションを完璧にこなしただけなのかもしれないが、俺にとってはそれ以上の物を与えてもらった。
俺だけで書庫に潜って魔法を勉強していたとしたら、まず無詠唱の魔法のやり方は解らなかったであろうし、やろうとも思わなかっただろう。
それから、どれか1つの属性の初級呪文を覚えたら、すぐに中級魔法の勉強に移行してただろう。
あれだけスムーズに、召喚用の魔法陣を無詠唱で出現させれたのは、すべての属性の魔法を無詠唱で完璧にこなせる様に学んだ賜物である。
普通、あれだけ複雑な魔法陣を無詠唱魔法で出現させるのは難しい事なのだが、全ての属性の魔法が使える者にとっては難しい事ではない。
全ての属性の魔法が使える事は、イコール、体の中の魔素を完璧にコントロールている事と同じ事だからだ。
今回の事で初級魔法の大切さが分かった。
正しく言うと、無詠唱で全ての属性の初級魔法を完璧にマスターする事だが、それさえ完璧にこなせれば、殆どの魔法はマスターしたも同然なのだ。
中級以上は応用魔法なのだが、体内の魔素を自由にコントロールできれば、それほど難しい事ではないのだ。
実際には召喚用の魔法陣を無詠唱で出現させるのは、ある意味 聖級魔法より難しい。
今回、シャンティ先生に精霊魔法を教えてもらったのだが、同時にこの世界の魔法の極意を学んだ事と同等の価値があったのだ。
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