第16話 特訓

 


 取り敢えず、昨日はシャンティ先生が考えた


 《アリスお嬢様召喚時間アップ予定表》


 通りにやってみた。



 昨日の朝8:00に、アリスをハーフエルフの状態で召喚したら11:00に召喚が解けた。


 今日の朝も8:00に召喚したら11:40に召喚が解けた。



 1日に40分召喚時間が増えた事になる。




 昨日は、4回魔素を使い果たしたので、1回魔素を使い果たすと、10分魔素総量が増える計算になる。


 俺的には、1日40分増えれば良いように感じるが、シャンティ先生的には納得いかないらしい。



 今日からは、アリスの召喚が切れたら、1時間だけ休憩して、ある程度魔素を貯めたら、すぐにアリスを再召喚する様にシャンティ先生に命令された。


 それから、夕飯の後には、アリスを龍の体で召喚させて、魔素を一瞬で無くす為に、空に向かって魔素切れが起きるまで、ファイアーブレスをぱなさせる。


 それから30分だけ休憩し、またアリスを龍体の姿で召喚させて、ファイアーブレスを打っ放す。

 それを就寝時間まで繰り返し繰り返しやらされている。



 勿論、俺自身の魔法の勉強も手を抜かない。


 既に全ての属性、火、風、水、土の初級魔法は、全て無詠唱で使える様になっている。


 これはシャンティ先生が、若い内なら苦手意識がでる前に全ての属性を覚える事ができるからと、根気よく教えてくれた。


 普通の魔法教師の場合、得意、不得意の魔法があるので、自分の苦手な属性は、上手く教えれない場合が多いのだが、


 シャンティ先生は、光の回復魔法しか出来なかったはずなのに、俺に教える魔法を、授業の前に完璧にマスターしてから、昔から使えたかのように、丁寧に教えてくれる。


 シャンティ先生も、ある種の天才なのかもしれない。


 こんなスパルタ状態は、多分普通の子供だったら逃げ出していると思う。


 だけど、俺は前の世界でやりたい事ができなかった。


 夢に向かって努力する事、それ自体さえ行う事ができる状態ではなかった。


 だから、何かを努力する事が出来る事。


 それだけでも、楽しく感じる事が出来るのだ。


 そんな感じでしっかり魔法の練習も進んでいる。


---



 アリスは、龍に変身できるようになったので口から出す体内魔法が使える様になった。


 時間制限はあるが、今でも相当強そうだ。


 しかし、体が2歳児になってしまったので、得意のファイアーブレスも、10分1の大きさになって、パワーも10分1に落ちてしまったらしい。


 シャンティ先生に言わせれば、それでも相当凄いらしい。


 2歳児でこのレベルなら800歳くらいになった時には、確実に最強になれるはずだと…


 しかし、アリスは今すぐにでも最強になりたいらしく、努力しているのだ。


 アリスは、ハーフエルフの状態でも最強を目指している。


 なので、ずっと指先から魔法を出す練習をしているのだが、上手くいかないようだ。


 アリスは、魔素の扱いが天才的なのだが、体内魔法だけは今まで息を吐くように口から魔法を発動させていた。


 なので、癖がなかなか抜けないのだ。


 だが、今日からシャンティ先生に言われて杖を使って練習している。


 杖は魔力が伝道されやすい材質からできており、避雷針の様な役目をして、体内の魔素が自然と杖に誘導する役割を果たすらしいのだ。


 俺も自分の魔法の練習をしつつ、アリスの様子を見ているのだが、少しずつ結果がでているようだ。


 今までは、10回やって10回とも失敗してたのだが、今は10回やって3回は成功しているように見える。


 なかなか順調の様だ。


 ---



 そして、俺もシャンティ先生に相談してみた。


 アリスを召喚する時に、今は魔法陣を紙に描いて召喚している。


 しかし、それだと、1度使うと青白い光が出た瞬間に燃えてしまい消炭になってしまう。


 毎回、召喚の為に何回も紙に描くのは面倒なので、現在は紙に描いた魔法陣をストックして持ち歩いているのだが、それでも面倒臭い。


 エリスのように、火の魔法で空中に魔法陣を描くのもカッコ良いのだが、魔方陣を毎回も描く手間は一緒である。


 それでシャンティ先生に、何かいい方法が無いか相談したのだ。


「そうですね。召喚魔法の魔法陣は他の魔法陣の様に、詠唱魔法や無詠唱に置き換える事はできません。


 何故なら、魔方陣自体が、召還する使い魔の入口として使われるからです」



「そうですか…やはり魔法陣は毎回描かないといけないんですか…」



「しかし、方法がない訳ではありません。


 精霊魔術師の中には、杖の先に付ける石に、あらかじめ召喚用の魔法陣を彫って置く者がおります。


 召喚魔法を使う時には、石に魔力を流して、空中に魔法陣を浮かび上がらす事によって、いちいち魔法陣を描くのを省いているのです」



「おっ、それは、いいかもしれないな」



「しかし、この方法にも欠点があります。


 その杖で、精霊魔法だけを使うならいいのですが、他の魔法を使う事ができないからです。


 石に魔法陣が掘ってあるので他の魔法を使おうとしても、召喚用の魔法陣が必ず発動して、他の魔法と合わさり正しく魔法が発動されなくなるのです。


 そのため、この方法は、精霊魔法しか使わない者専用の方法と言えますが、中には、杖を2本使いにして、片方は召喚用、もう片方は一般魔法用にと、使い分けている者などもおります」


「両手が杖でふさがれるのは、ヤバいな…

 接近戦で懐に入られたら対処できない。出来れば、魔法剣士になりたいので杖も持ちたくないんだよな…」


「アレン坊ちゃん、実は既に対応策は考えております。


 アレン坊ちゃんには、アリスお嬢様の次に最強になってもらわないとならないからです。


 アレン坊ちゃんが簡単に死んでしまったら、アリスお嬢様も、アレン坊ちゃんの体を依代よりしろにしている以上、一緒に死んでしまいます。


 それを避ける為にも、弱点は有ってはなりません。


 まだ、誰もやっている者がおりませんが、これができれば、アリスお嬢様や、これから契約するであろう他の使い魔を、一瞬で召喚できるようになります。


 これで、少しはアリス様の役に立つでしょう」





「………」



 …俺の為に、考えてくれてたのかと思っていたのに…結局は、全てアリスの為だったという事か……

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