第15話 列強の強者達

 


「アレン坊ちゃん!

 朝ですよ! 起きてください!」


 シャンティの声で目が覚めた。


 俺はほとんどの時間、書庫で生活しているので、書庫にベッドを置いてもらって自分の部屋にしている。


 書庫は25畳位あるので、ベッドを置いても十分余裕があのだ。


「シャンティ先生おはようございます」


「アレン坊ちゃん、おはようございます。

 早速ですが、昨日話していたアリスお嬢様の召喚時間を伸ばす為の、予定表を作ってきました!

 アレン坊ちゃんには、これから毎日この予定表に添って生活してもらいます」


 シャンティはそう言って予定表を見せてくれた。



 ---



 《アリスお嬢様召喚時間アップ予定表》


 7:50 起床


 8:00 アリスお嬢様を召喚させる。


 8:10 朝食


 8:30 魔法の勉強


 10:00 おやつ


 10:15 魔法の勉強


 10:15~12:00 アリスお嬢様の召喚が切れる予定。


 12:00 昼食


 12:15 昼寝。 寝ると魔素回復が早まるので、必ず寝る事!


 13:00 再び、アリスお嬢様を召喚。

  魔法の勉強。


 14:00~16:00 アリスお嬢様の召喚が切れる予定


 17:00 アリスお嬢様を召喚。夕飯。


 17:00~ 夕飯後、自由時間。

 自由時間中に、アリスお嬢様の召喚が切れる予定。


 21:00 アリスお嬢様を、必ず龍体で召喚。

  アリスお嬢様に大きい魔法を打っ放してもらい、魔素を使い果たしてから、就寝。



 ---



「毎朝、アレン坊ちゃんの魔素がMAXの状態でアリスお嬢様を召喚し、

 どれくらいの時間でアリスお嬢様の召喚が切れるか調べる予定です。


 それでは、間もなく8時なので、アリスお嬢様の召喚をお願いします」


 シャンティ先生にそくされて、机に置いてある紙に召喚用の魔法陣をサラサラ描き魔素を注ぎ込んだ。


「いでよ!アリス!」



「ワッハハハハ!最強、最悪の厄災龍、紅龍アリス様の登場なのだ!ワッハハハハ!」


 アリスが魔方陣からでてきた。


 毎回、いちいち、この登場のセリフを言わないと出てこれないのか…



「兄様、昨日の召喚の呪文と違うのではないのか?

 昨日は確か、『我が召喚の求めに応じ、いでよ!アリス!!』


 と、言っておった気がしたのじゃが、随分省略されておらぬか?」



 確かに省略した。



 これから1日に何回も召喚しなければならないと思ったら、長ったらしいのは面倒だと思ったからだ。



「別に召喚出来たのだからいいんじゃないのか?」



「ダメじゃ!そんなカッコ悪いのは認められないのじゃ!そう思うじゃろシャンティ?」



「そうですとも!アレン坊ちゃん、アリスお嬢様が登場するのに、それに相応しい召喚の呪文を唱えなければ、アリスお嬢様の偉大さが下々の下賎な者に伝わりません!


 もっと、アリスお嬢様の偉大さが分かるような召喚の呪文にしてください!」



「…」



 シャンティ先生まで…

 まあ、シャンティ先生はアリス教の敬虔な信者だから仕方が無いのか…



「そうじゃのう。兄様が、


『我が召喚の求めに応じ、いでよ!最強、最悪の厄災、紅龍アリス!』


 と、唱えて

 そして、わらわが魔法陣から颯爽さっそうと登場して


『ワッハハハハ!我こそが最強、最悪の厄災、紅龍アリス様じゃ!皆の者、恐れ、敬うのじゃ!ワッハハハハ!』


 なんて言うは、どうじゃ?」


 そんな、まんま中二病の様なセリフ言えるかよ…



「そもそも、お前はこの世界で本当に

 最強なのか?


 最強なら、そのセリフ言ってやってもいいが、違うなら無理だな!」



「何じゃと!妾より強い者などこの世界に存在する訳が無いじゃろう!のう、シャンティ!」



「………」



「まっまさか!妾より強い者が存在するのか?」



「恐れながら、現時点では存在します。

 しかし、アリスお嬢様は、この世界ではまだ2歳児、いずれ成長すれば、必ずやこの世界で最強の一角になるはずです」



「そうじゃったのか…確かに一番強く無くては、最強は名乗れぬな。


 妾の力も、大人の体だった前世の力の、10分の1の強さにも達していないのも事実じゃ。


 では、妾より強者を全て倒してから、改めて最強を名乗ろうぞ!ワッハハハハ!」



「して、シャンティよ!

 現時点で妾より強い強者は、どれだけおるのじゃ!」



「有名所では、東の大陸にいる黒竜。


 西の大陸では、400年前の黒竜戦争の時に勇者に手を貸した、赤龍アリエッタ。


 それから、勇者の仲間だったドワーフ王国 国王ドラクエル。


 エリス奥様のお母様にあらせられる静寂の森の支配者エルフの女王アリシア・ホワイト。


 神聖フレシア王国 騎士団長、剣帝ビクトル·クロムウェル。


 島国である、魔法国家サリスの魔法学校の校長で、勇者の仲間でもあった大賢者モッコリーナ。


 南の大陸には、漆黒の森のダークエルフの女王ガブリエル·ツェペシュ。


 それから、各地に魔王が乱立していますし、ダンジョンの深層にはまだ知られていない魔王もたくさんいます」



「ワッハハハハ!結構おるのう!

 そうでなければ面白くないのじゃ!


 兄様!という訳じゃ! 今、名前が出てきたヤツを全員倒してから、最強を名乗るとするのじゃ!ワッハハハハ!」



 取り敢えず、アリスの考えた恥ずかしい召喚の呪文は、言わなくてもよくなりそうだ。



 しかし、アリスがこの世界の強者全員を倒すつもりなら、俺がついて言って召喚するしかないんじゃないのか?



 アリスがハーフエルフの体で戦うのであれば、俺が修行して魔素総量を増やせば、1日分の魔素を賄える様になるかもしれない。


 しかし、アリスが龍の体で戦うとなれば、さすがに無理だ…



「アレン坊ちゃん、アリスお嬢様の足を引っ張らないよう、死ぬ気で鍛えてください。


 今現在、アリスお嬢様が最強になれない理由は、アレン坊ちゃんにあります。


 アリスお嬢様が、龍体で本気で魔法を使ったら、多分アレン坊ちゃんの魔素は5分も持ちません!」



「シャンティよ!そう兄様をいじめるでない!

 妾が本気で戦えないのは、ハンデじゃ!

 簡単に倒してまっては、面白くないからのう!ワッハハハハ!」



 シャンティが何かブツブツ言っているのが聞こえてくる…




 『アリスお嬢様の為には、アレン坊ちゃんの魔素総量増加訓練を、死ぬか生きるか限界ギリギリの線まで増やさないといけないわね…』

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