第11話 最初の使い魔

 


 2歳になった。


 現在シャンティに、精霊魔法

 だけではなく普通の魔法も習っている。


 戦いの時、精霊魔法だけだと、精霊がられた時、心許ないのだ。


 精霊魔法には、精霊そのものを使い魔として召喚させる方法と、精霊を術師の体内に召喚し精霊の魔法だけ使える様にする方法がある。


 精霊の魔法が使えると言っても、最初に体内召喚していないと、全く魔法が使えないのだ。


 精霊が強くても、自分自身が弱ければ話にならない。


 欲を言うと、剣術も習いたい。


 魔法使いの弱点である、接近戦でも戦える様にしておきたいのだ。


 とにかく、強くならなければ。


 あいつは、夜に戦うと滅法強いが、昼間に戦うと大した事がないぞ。(夜は、アリスが体を使ってるから強く、昼は、俺アレンが体を使ってるから弱い。)


 などと、人に陰口を言われたら、傷ついてしまう。


 アリス並の戦闘力をつけなければ、兄としての威厳が無くなってしまうのだ。


 なので、最近はシャンティから魔法を習っている。


 魔法といっても、人が使う詠唱魔法では無い。


 精霊や魔族などが使う無詠唱魔法だ。


 シャンティがそもそも詠唱魔法が使えない事もあるのだが、理論は、変わらないらしい。


 そもそも、魔法は、精霊や魔族が使っていたのを、人が真似て発展させたものなのだ。


 魔法を使うには、魔素のコントロールが重要である。


 人は、それが苦手であったので、詠唱して言葉として発する事により魔法を発動させる事を考えついた。


 言葉は、言霊である。


 言葉を発する事により、身体の中の魔素が自然と動く。


 それにより、人は、苦手な魔素コントロールを克服したのだ。


 ---




 詠唱による魔法は、違う恩恵ももたらした。


 今まであった魔法より、複雑な魔法も使えるのだ。


 頭の中だけで瞬間に処理できない複雑な魔法でも、正しい公式を唱えれば魔法が発動する。


 実際には、魔素理論を理解していないと、発動しないのだが…


 しかし、複雑な魔法が出来ても、実戦ではなかなか使えない。


 誰もが、呪文の詠唱を待ってくれないし、そもそも、ほとんどの高等呪文は、膨大な魔素が必要である。


 やり方が解っていても、個人での使い手がいないのが現実なのだ。


 それでもやるとしたら、魔方陣に公式を書いて、団体で魔法陣に魔素を供給するやり方が一般的だ。


 その様な事を、シャンティ先生は解りやすく教えてくれる。


 そして、シャンティ先生は、授業の予習、復習も怠らない。


 完璧主義者なのだ。


 今は、初級の魔法を勉強中なのだが、シャンティ先生は、詠唱魔法が使えないはずなのに、お手本を見せてくれる。


 アリスによると、俺に教える為に、夜な夜な書庫で勉強し、授業の日までに詠唱魔法を使える様にしていたのだ。


 そして、それを俺に教え、尚且つ無詠唱で行う場合のコツまで教えてくれる。


 無詠唱の魔法は、人族の場合、若い内に慣れておかないと、ほとんどの人は一生使えない。


 シャンティ先生も、俺に無詠唱の魔法だけ教えればいいのだが、効率アップの為に、最初に詠唱で魔法を使わせ体内の魔素の動きを体感させてから、無詠唱の魔法のコツを教えてくれるのだ。


 そうする事によって、一度、自分で体感してるので無詠唱の習得がスムーズに進む。


 ---



 そして、今日は魔法陣の実習だ!


 ついでに、俺の最初の使い魔を召喚するのだ!


 シャンティ先生によると、精霊魔術師になるなら、最初の使い魔を召喚するのは早ければ早いほど良いらしい。


 お互いの絆も深まるし、魔素総量の増加にも繋がる。


 年齢が若い内に限界ギリギリまで魔素を使うと、魔素総量が少しづつ増えるのだが、歳をとってくると、全く増えなくなる。


 なので、若い内はたくさん魔法を使って毎日、魔素をスッカラカンにするのが理想だが、それが難しい。


 戦闘もないのに、魔素を使うのは大変なのだ。


 その点、精霊魔術師が召喚する最初の使い魔は、召喚すると、最初の内は大体1時間位で術師が魔素切れをおこしてしまう。


 なので、毎日ただ単に召喚しておけば、勝手に魔素を使いきれるし、召喚出来る時間も増えて、一石二鳥なのである。


 ---



「アレン坊ちゃん、昨日、紙に練習した魔法陣は持ってきましたか?」


「持ってきました。シャンティ先生!」


 アレンは、昨日の授業で、100回も書き取り練習をさせられた魔法陣の内の一枚を持ってきていた。


「昨日の授業でも言いましたが、使い魔を召喚する魔法陣は、どれも一緒の公式です。

 使い方は、自分の魔素を魔法陣に流して、最後に呼びたい使い魔の名前を呼ぶだけです」


「はい、先生」


「今日使う魔法陣も、同じ公式の魔法陣です。

 ただ、アレン坊ちゃんと波長が合う、相性の良い使い魔を召喚する為に、坊ちゃんの血で魔方陣を書いてもらいます」




「魔法陣を血で書いたら、アレン坊ちゃんの魔素を流し、

『いでよ!我が最初の使い魔よ!』

 と言えば、アレン坊ちゃんに相応しい使い魔が、魔方陣から出てきます」




「それでは、庭に移動しましょうか!

 アレン坊ちゃんの魔素総量だと、おそらく聖級の使い魔が出てくると思います。

 もしかしたら、とても大きな使い魔が出てきて、家が壊れてしまうかもしれませんからね。

 それでは、私は、エリス様を呼んで来ます。

 初めての使い魔召喚ですからね!」


 シャンティがエリスを庭に連れて来た。いよいよ初めての使い魔、召喚だ!


「アレン。今日はお祝いね!ご馳走用意しなきゃ!」


 エリスが嬉しそうに、微笑んでる。


「では、アレン坊ちゃん」


 シャンティ先生がナイフと白い紙を俺に渡して来た。


 俺は、ナイフで右手の人差し指の指先に傷を付けて、白い紙に血で魔法陣を書いた。そして、魔方陣に向かって魔素を流し、


「いでよ!我が最初の使い魔よ!」



 すると、魔方陣は青白く光だし、



 魔法陣の中から



 聞き慣れた声が聞こえて来た…




「ワッハハハハ!」



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