第10話 メイド妖精シャンティ

 


「ウ~ン……………」


 いつの間にか眠っていた様だ。


 たしか、シャンティの念仏の様な話を聞いていて…ウトウトして…そして、眠ってしまったんだな。


 あれ?


 でも、リビングにいた様な?


 なんで書庫にいるんだ?


 眠気まなこで考えていると誰かの声が聞こえてきた。



「アレン坊ちゃん、起きられましたか」


 誰だ?


 アレン坊ちゃん…?


 横になってた体を持ち上げて、声のする方に顔を向けると、


 メイド服を着た、顔をボコボコに腫らした妖精が羽根を揺らし飛んでいた。


「アレン坊ちゃん。おはようございます」


 顔をボコボコに腫らした妖精は、スカートの両裾を少し持ち上げて、軽く会釈してきた。


「あのーどちら様でちゅか?」


 いつもの様に赤ちゃん語で聞いてみた。


「私は、シャンティです。アリスお嬢様に、仰せつかり、アレン坊ちゃんの世話をする様に言われています」


「シャンティしゃんでちゅか…」


 寝る前の偉そうな態度と全然違う…


 アリスに俺の世話をする様に言われたと言う事は、アリスと話したのか。


 アリスは何処まで話しているんだ?


 あの顔の傷は、アリスにやられたと言う事か…


 という事は、アリスに負けて言うこと聞かされているって理由わけか…


「アリスは、何処まで話したんでちゅか?」


「だいたいの理由は、アリスお嬢様から伺っております。それも踏まえて、アレン坊ちゃんのお世話と、精霊魔法の勉強を見る様にと仰せつかっております」


 よくわからん…アリスに聞いてみるか。


『アリス!どうなってるんだ!』


 アリスを頭の中で呼び出しても、返事がない。


『アリスお嬢様は、疲れたので、眠ると仰っていました』


 突然、シャンティの声が頭に響いた。


「どうなってるんだ!?」


「念話でございます。

 妖精族は、妖精同士、それから契約者と念話で会話ができます。

 アレン様と私が念話できるのは、アリスお嬢様が、元々念話ができる神獣様でいらしゃったので、同じ身体を使っているアレン様も、私と念話ができるのだと思われます」


 前世の事まで話してるのか…

 それなら、もう赤ちゃん語を使う事もないかな。


「シャンティ。その顔はどうしたの?」


 気になってる事を聞いてみた。


「これは、アリスお嬢様からのご褒美です!」


「怠惰な私への愛の鉄拳なのです!」


 鉄拳をご褒美と思わせるなんて、とんでもない事になってるな…一体アリスは、シャンティに何をしたんだ…


 多分、二人の間で、あんな事や、こんな事があったのだろう…



「………」



「エリスに頼んで、傷の手当てをしたほうがよいのでは…」



「傷は、自分の魔法で簡単に治せます。これは、アリス様との絆を感じる為に、ワザと残しているんです」


勿論もちろん、しばらくしたら傷は治します。エリス奥様に、ここのメイドになる事をお願いしなければなりません。

 アレン坊ちゃんの中にいるお嬢様の存在を、くれぐれもエリス奥様に気付かれない様にと、アリスお嬢様にきつく言われておりますので」



 ちょっと見ない間に、かなりアリスに心酔しているな…


 んッ!…これは、もしかして洗脳と言う奴なのでは?


 ヤクザなどが使う最初に恐怖を与えて、次に優しくすると、人は、その人に心酔してしまうと言うやつなのでは…


 それを、自然にやってしまうとは…

 流石は、自分で最強、最悪の厄災と言っているだけの事はあるな。


 アリスに会ったが最後、まるで奴隷の様にされてしうとは、本当に厄災だ…


 精霊の契約もナシ、魔素の譲渡もいっさいナシ。それなのに、奴隷の様にこき使う事ができるとは、これが精霊魔法の最終形態なのではないのか…


 それから暫くして、シャンティは魔法で傷を治し、俺とエリスがいるリビングに向かった。


 シャンティは、エリスにこの家のメイドになる事を伝えて、無事メイド兼、俺の家庭教師になる事ととなった。


 最初、シャンティはエリスから魔素を貰う事を拒否していたが、メイドとしての給料と言う事で納得していた。


 シャンティによると、エリスの魔素はとても極上の美味しさで、精霊は誰もがエリスの使い魔になりたいらしい。


 アリスの役に立つ為に、この家のメイドになると決めたシャンティにとって、逆に、ご褒美を毎日貰える状態になる。



 他の精霊に知れたら、とても妬まれると言っていた。


 エリスは100年連続、精霊が契約したい聖霊魔術師、第1位なのだ。


 エリスは、20才位だと思っていたのに、一体何歳なんだ!怖くて聞けない…


 エリスが、何百年も生きてる聖霊魔術師なので、凄い術師なのかと言うと、そうでも無いらしい。


 実際は、火の初級魔法しか使えないのだ。


 指先から少しの炎をだす事しかできないので、ランプに火をつけたり、炎の残像で、空中に魔法陣を書く事ぐらいしかできない。


 しかし、あまりある魔素総量と、1度味わったら忘れられない魔素の美味しさによって、この世界の一流所の精霊は、全てエリスの使い魔であるらしい。


 エリスの使い魔である事が精霊のステイタスであり、一流精霊の証なのだ。


 という訳なので、勿論、エリスの使い魔であるシャンティも、とても有能なのだ。


 痒い所にも手が届くし、家庭教師としても有能だ。


精霊の種類から、精霊の運用方法、必ずGETしておいた方が良い精霊や、精霊魔術師の戦い方や、戦術を、必ず例を出して教えてくれる。


1度、エリスの精霊魔術師の戦い方を聞いてみたら。強そうな精霊をいっぱい出したら大体、勝手にやっつけてくれると言う事だ。


普通の術師は、体内の魔素に限りがあるので、そんな戦い方は絶対に無理なので参考にならない。


多分、俺は強くならなくてはならない。


何故なら、アリスが最強を目指しているのだ。


いつも、最強、最悪の災厄龍、アリス様だー!と叫んでいる!


多分、ある程度成長したら、この世界の強者に戦いを挑むのだろう。


アリスは、ああ見えて以外と真面目だ。


勝つ為の努力をしている。すでに強いと思うのだが、まだまだ強さに貪欲だ。


俺も同じ身体を使ってるので必ず巻き込まれる。


今のままなら、瞬殺される。


俺も、魔素総量が多いらしいので、エリスの様な戦い方も出来るだろう。


ある程度の敵なら…


しかし、アリスが狙っているのは、魔王クラスだ。


生半可な気持ちでは、勝つ事ができない!


だから、俺も強くなる為に努力するしかなのだ!


最強、最悪の災厄龍、アリスの半身として。

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