第9話 アリス降臨!!

 



「!!…」 何だ!


 シャンティがアレンと無理矢理

 精霊契約を交わそうとしていると、突然、空気が変わった!


 重い、 重すぎる…


 凄まじい殺気が場の空気を凍りつける。


 巨大で、禍々しい魔素を感じる。


 この感じには、記憶がある…


 400年前、まだ私が生まれて間もない幼い精霊だった時に…


 私の故郷、静寂の森の中の、妖精の森で…


 それは、今感じてる様な、禍々しい魔素を身体から発して、森を燃やし尽くしたのだ…


「ガタガタガ」


 自分の歯の音が、静かな部屋の中で大きく響く。


 逃げなきゃ!


 でも、身体が動かない。


 気を張ってないと、地面に押し潰されそうだ。


 何が起こったんだ。


 さっきまでエレンの息子と喋ってたはずなのに…


『ワッハハハハ!わらわは、最強、最悪の厄災龍!アリス様じゃ!ワッハハハハ!』


 突然、頭の中に言葉が響いてきた。


『ワッハハハハ!流石さすがは上級精霊と言う所か、妾の本気の覇気で倒れなかったとは、中々見所がある奴じゃ!やはり、母様の精霊だからかのう!ワッハハハハ!』


 コイツは誰だ…震えて声がでない…


『すまないがアレンは、妾の兄様じゃ!あまり、いじめるでない!母様の精霊だからと言って、あまり調子に乗っておるとタダでは済まさぬぞ』


 誰だ?誰なんだ?


 この禍々しい魔素は子供の時に見た黒竜のそれと、同じじゃないのか…


 震えて固まっていた顔をなんとか持ち上げて見上げてみると、そこには先程と同じ顔をしたエレンの息子が立っていた。


 巨大で、禍々しい魔素を纏って…


「黒竜…」


 シャンティは、言葉を振り絞って小声で呟いた。


『黒竜?そいつは誰じゃ!

 妾は、紅龍と呼ばれていた事はあっても、黒竜とは呼ばれた事はないのじゃ!


 いや待てよ!

 そいつの事は最近アレンと読んだ本に書いてあった!

 確か、異世界から来た龍とか言っておったな!

 そいつと妾が似ているというのか?』


「そうです」


『シャンティ!

 妾のように念話で喋れ!

 今のお主は、独り言を言う怪しい奴じゃぞ。

 母様が心配そうな顔をしておるのでな。』



『わかりました』




「ママ、シャンティしゃんの契約のお話、長くなりそうだから書庫にいって、お話するね」


「行こう!シャンティしゃん!」


 怖い二人切りになりたくない!


 地面を踏みしめて、踏みとどまっていたが、急に大気中の魔素が身体にまとわりついたと思った瞬間、空中に浮いていた。

 羽根まで勝手に動いてる。


 逃げようと思っても抗えない。


 そして、そのまま書庫に連れてこられた、相手は大気中の魔素をコントロールしている。


 それもかなり緻密ちみつに。


 エリスには、私が無理やり飛ばされていたとは、見えなかっただろう。


 それ程、わたしの羽根は、自然な

 感じに動かされた。


 化け物だ!


 静寂の森の中の聖級の精霊だって、これほど緻密に大気中の魔素をコントロールする事なんてできない。


 まさか、神級なのか?


『シャンティ!

 妾の事、母様に言わないでいてくれるか?』


『母様とは、エリスの事ですか?』


 ボコッ!!


 いきなり殴られた。


『お主、妾の母様を呼び捨てに呼ぶとは、いい度胸じゃな!』


 エリスの息子の顔をしたそいつは、鬼の形相で私を睨みつけている。


 殺される!


 ボコッ!


 また殴られた!


『何か言ったらどうじゃ!』


『すいません!エリス様でした!』


『うむ。分かれば良いのじゃ』


『それで、貴方様は、何者なのでありますか?』


『アリスでよい!』


『はい。アリス様』


『うむ。妾は、アレンの妹でエレンの娘じゃ!理由わけあって、現在、エレンの息子の身体に、妾とアレンの2つの人格が、入っている状態じゃ!』


『その事をエレン様は知らないという事ですね。そして、アリス様の事を秘密にすれば良いという事でしょうか?』


『そうじゃ!母様に心配かけたくないからのう。妾の存在は暫く伏せておく事にするのじゃ!

 それから、アレンの事も宜しく頼む!

 あ奴は、精霊魔術師の才能があるじゃろう!

 妾も元々、精霊のようなものじゃ!なにせ神獣だったのだからな!

 アレンの魔素は精霊を惹きつける。

 実際、妾も前世にあ奴に取り憑いておったからな!

 あ奴の魔素は特別じゃ!


『やはり、神獣様であらせられましたか。』


『先程も言ったがアリスでよい!今は、エルフ族のエリスと、人族のアレックスから産まれたハーフエルフのアリスじゃ!』


『分かりました。アリス』


 ボコッ!



 また殴られた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る