第8話 精霊魔法

 


 精霊魔法の術者になる!


 と決めたのならば


 話は早い。


 それに向かって修行するだけだ。


 家には最高の先生がいる。


 アリスによると、エリスの魔素総量は、俺やアリス程ではないが、かなりのものであるらしい。


 精霊魔法は、体内の魔素総量によって、使役できる精霊の格が決まる。


 なので、体内の魔素総量が高いイコール凄い精霊魔術師と言う事らしい。


 エリスがどの位の魔術師なのかと、アリスに聞いてみると、俺やアリスの魔素総量に気付いていない様なので、上級魔術師程度だろうとの事だ。


 魔素感知は聖級以上の魔法なので、大気中の魔素を自由に制御できないと使えない。


 それが使えないと言う事は、それ以下のランクの魔術師になると言う事だ。


 ただし精霊魔術師の場合

 聖級以上の魔法が使える精霊と契約できれば、自分が聖級じゃなくても、聖級と同等の力を持つ事ができるので、

 アリスの魔力感知でも本当の実力はわからないとの事だ。


 エリスが凄い精霊魔術師だと言う事はわかった。


 取り敢えず、精霊魔法とは、どんなものなのか実際見てみたいのでエリスに精霊魔法を見せてもらう事にした。


 早速、俺は書庫からエリスがいるリビングに向かった。


 エリスは、ちょうど皿洗いが終わった所だったらしく、俺が、リビングに入ってくるのを見つけてニッコリ微笑んだ。


「ママー。魔法見しぇて。精霊しゃん見たいの。魔法使いは、精霊しゃんを呼べるって本に書いてあったの!」


 俺はいつもの様に自分の中の1歳児相応な口調でエリスに話しかけた。


 エリスは嬉しそうな顔をしながら、


「アレンは、精霊さんが見たいのかぁ。

 それじゃあ、ママが見せちゃおうかなぁ。

 こう見えて、ママ精霊魔法得意なんだから。」


「わぁーい!」


 フフフフフ。前の世界で31才だった俺にかかれば、20才位のエリスなんて、チョロいものだ。


 エリスは何か呪文の様な言葉を呟いてから、空中に指を動かして何かを描いていく、するとエリスの指先がなぞられた場所に黄色い線が浮かび上がってきて、空中に魔法陣が描かれた。


「我が契約に従い、いでよ!光の精霊シャンティ!」


 すると、魔方陣の中からサッカーボール位の大きさの、光り輝く羽根の生えた妖精が現れた。


「エリス!何で、私を呼ばないのよ!妖精の国は、刺激が無くて退屈で退屈で仕方が無いのよ!」


 光の妖精シャンティと名乗る精霊が、エリスに食い付き気味に登場した。


「う…ごめんねシャンティ。」


「子育てで忙しくて、呼ぶ暇がなかったの…」


 エリスが涙目で申し訳なさそうにしている。


「フーン。」


 シャンティが俺の方をキッと睨んできた。


流石さすがエリスの子供ね。魔素総量がトンデモないわね。

 フーン。

 魔素の味も美味しそうね。

 あなた、特別に私と契約してあげてもいいわよ!

 勿論、エリスが主契約、あなたは2番目よ!

 有難く思いなさい!

 私はこう見えても上級精霊よ!

 普通、ポッと出の精霊魔術師と契約なんかしないんだから!

 あなたが、エリスの子供だから特別に契約してあげるのよ!」


 何だ?この精霊は?何でこんなに偉そうなんだ?


「精霊魔術師は、精霊を従わせる為には、精霊に認められないといけないのよ!

 だいたい戦いね!

 私と最初から組めば、そのへんの精霊を従わせるくらいへっちゃらよ!

 何せ、私は強いからね!フフフフフ…」


 これは良い話かもしれないな。確かに1歳児の戦闘力では、あり位しか倒せない。最短で強くなるには、上級精霊と契約を交わせれば有利になる。



「そうなんでちゅか」




  (フフフフフ…流石さすが『精霊に好かれしエルフ』と言われているエリスの子供ね。


 魔素の美味しさもエリス譲りなら、魔素総量はエリス以上、これはどんな精霊だって自分から、契約して下さいと、頼みにくるわ。


 何も知らない今の内に有利な契約を結んでおいて損はないわね。)





『アレン、其奴そやつが言ってる事は、妾が初級魔法大全で、勉強したのと、違う事をいっておるぞ。

 確かに、殆どの場合は精霊との戦いに勝つ事によって無理やり精霊と契約を結ぶが、精霊が術師の事を認めていれば、わざわざ戦う事は、ないのじゃ!

 現に、其奴も、戦わずして契約を結ぼうとしておるじゃろ。

 それから、初級魔法大全によると、初めての精霊は、自分の血で描いた特殊な魔法陣で呼び寄せると書いてある。

 そうすれば、自分と、もっとも相性が良い精霊が召喚されて、戦わずとも契約できると書いてあるのじゃ!』


 そういう事か。あやうくシャンティに、騙される所だった。


 典型的な詐欺師の手法だな、相手が何も知らないと思ったら、相手に考える隙を与えず、もっともらしい事を長々と話し、そのまま契約させるのだ!


 契約したら最後、契約書を盾にケツの毛までむしりとられるのだ。




「そうなのでちゅか。難しいでちゅね。」



「難しくないわ!私と契約したら全て上手く行くんだから!」




「難しいでちゅ。少し考えさせてくだちゃい」




「今すぐ決めないと契約して挙げないわよ!普通、私レベルの精霊が契約してあげると言ったら誰もが喜んでスグに契約するんだから!」




「難しいでちゅ」





「今私と契約したら、エリスを2番にして、あなたを主契約にしてあげてもいいわよ!」






「難しいでちゅ」






「今契約しないと、本当に後悔するんだからね!今、私と契約できなかったら、一生誰とも契約なんかできないんだから」





 終わらない…そんなに契約して欲しいのか…同じ事の繰り返しでどんどん




 眠くなってきた…




 そして、意識が途切れた。





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