第4話 親子の絆

 

 ワッハハハハ!わらわは最強、最悪の厄災龍

 アリス様だ!ワッハハハハ!


 転生して龍ではなくなったのじゃが…このセリフは、とてもカッコイイので続ける事に決めた。


 そう、妾は転生したのじゃ!


 ついでにアレンも一緒に…


 アレンは病気の治療法が見つかるまで、冷凍保存されていたと言っていた。


 そもそも病気ではなく妾の呪いだったので治療法など何百年、何千年経っても見つかるはずもないのじゃが…


 勿論、妾を封印したアレンの先祖ほどの術者ならば呪いを解けたかもしれないが、妾の封印が解けた時には、妖怪退治の需要がなくなっていたのか、陰陽師の術は廃れていた様だった。


 そして、治療法が発見されず、何十年、何百年もの時が流れ、国が滅び冷凍保存用カプセルが破壊され、転生に至ったのであろう。


  その時、たまたま妾がアレンを呪ってアレンの魂に纏わり付いていたので、そのまま一緒に輪廻転生したと言うのが事の流れだったのではと思うのだが…



 そんな感じで母様から産まれた直後、1つの身体に、妾とアレンの2人の魂が内在している事に気付いた。しかも体を動かせる主導権はアレンにあったのじゃ!


 我は転生前の作戦通り、またアレンの体を乗っ取ってやろうと思ったのだが、その考えはすぐに考え直す事になった。


 母様の母乳を吸ったらある感情が生まれたのじゃ!


 親と子の絆。そう、親子の絆を!!


 そして妾は悟ったのじゃ!


 母様を悲しませてはいけないと。


 しかしアレンは、妾が母乳を吸って親子の絆を感じていたのに対し、まったく違う事を感じていたのじゃ!


 そう、エロい妄想を…


 あろう事か、実の母のオッパイに欲情してた様なのだ!


 思えば、昔からエロかった。


 前の世界で、アレンに赤黒い呪いをかけていた頃、インターネットなる面妖な箱の中にいた若い裸の女性を毎日覗き見していたのじゃ!


 しかも、呪いで動かないはずの、下半身のナニをおっ立てて…


 アレンがエロいと言う事はさておき、

 身体の主導権の問題はオッパイを吸った後、すぐに解決した。


 お腹が一杯になって眠りに就くと、身体の主導権がアレンから妾に移動したのだ。取り敢えず、無理に身体を乗っ取らなくても、半分の時間は妾の自由に使えると解ったので良しとしよう。



  ----------------



 そして今現在、アリスの最近の日課は、皆が寝静まった頃、家の書庫で魔法を研究する事だ。


 まだハイハイもできないが、空中浮遊

 魔法で書庫まで移動する。空中浮遊魔法は、大気中の魔素を操る魔法だ。自分以外にも、物を動かしたりもできる。


 取り敢えず、ベビーベッドがあるリビング兼キッチンを出て廊下に出ると、左右にドアが1つずつあり、そして廊下の突き当りには玄関がある。いわゆる2LDKの間取りである。


 右の部屋がエリスの寝室で、左の部屋が書庫になっている。


 魔法で左のドアを静かに開けると、正方形の部屋が広がる。


 部屋の中央には、本を読んだり、勉強する為の机が置かれている。


 正面の壁の上段に光取りの為の小窓がある以外は、すべての壁が本棚になっていて、左の壁は魔法全般、正面は歴史など、種類別に綺麗に揃えられている。


 アリスは既に人語、エルフ話をマスターしている。


 エリスの話を聞きながら会話を覚え、書庫で絵本の文字と絵を見比べながら文字を覚え、エルフ語辞典でエルフ語をマスターした。


 言葉と文字を覚えたので、今はもっぱら、魔法の勉強をしている。


 入門魔法全書によると、魔法には基本の火、水、土、風の属性があり、魔法の威力によって、初級、中級、上級、聖級、天災級、神級の等級があるようだ。


 上級までの魔法は身体の中の魔素だけ使う魔法で、聖級以上は大気中の魔素も使わないとできない。


 この世界では、聖級の魔法を使えれば、大魔法使い、大賢者クラスで、天災クラス以上が使えるのは、伝説級の偉人クラスなのだとか…


 アリスは生後4ヶ月なのだが、天候を変える魔法まで使えるので、すでに伝説級の偉人クラスに当たるらしい…


 まだ、初級魔法さえ上手く使えないと言うのに…


 大気中の魔素の制御は達人級なのだが、体内魔素のコントロールが上手くいかないのだ。


 魔法の詠唱をしても、長年の癖なのか、口から魔法が発動してしまう。


 何百年も龍として生き、口から魔法を発動させてきた。龍族特有の魔法ファイアーブレスなど口の中で炎を圧縮して発動させる。圧縮すれば圧縮するほど強力な魔法になるのだが、人の身体では口の中が火傷してしまう。


 何百年も龍として生き、口から魔法を発動させてきた。その為か、指先から魔法を発動させようとしても口から発動してしまう。試しに、魔力を抑えて風属性の初級の魔法を使ってみたら、口の中に空気が溢れ窒息するところだった。


 強靭な龍の身体なら上級魔法でも使えるのだが、この身体では、初級も使えない。


 もし今、弱い敵と遭遇しても、地形が変わる程の天災級の魔法を使わないといけないのだ…


 それは、さすがに燃費がわるいので、夜な夜な、アリスは入門魔法全書で魔法の基礎を勉強しているのだ。口からではなく、指先から魔法が出せるように。


 それは、アレンに凄い魔法が使えると思われているのに、まさか初級の魔法も使えない事がバレると恥ずかしいというのもあるのだが…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る