第4話 本当の力
ドォーーーン!
「やりすぎだガリウス」
「ハン、殺しちゃいねぇよ。寝てる方が持ち運びに便利だろ……って、なんだこの魔力は!」
爆発による土煙でこちらから向こうは見えないが、逆に向こうからもこちらは見えない。
だから一瞬漏れた魔力で気づかれたようだ、ミリィさんがまだ無事だと言う事が。
爆発による土煙が風で流されていく。
そこに現れたのは金色に輝く六つの細長い盾を空中に浮かべ、右手を前に突き出した僕の姿。
「あなた、何でここに? それに今何をやったの?」
後ろからミリィさんが驚いたように声をかけて来る。
「話は後、リリー、ミリィさんの手当てを」
「ハイ、アリスちゃん」
返事をしたのは僕の家族でもある風の精霊リリー。大きさは手のひらサイズの人型で、背中から蝶々のような羽を生やし空中に浮いている。
普段は人に見えなよう姿を消しているが、いざ戦闘になると僕の魔力を
「何よここの子、もしかして精霊?」
ミリィさんでも精霊の姿を見るのは珍しいのか興味本位で眺めている。
「僕が彼奴らを抑えておくからその間に傷の回復を」
「えっ、ちょっと。抑えるって一人で? 無茶よ」
「リリー、ヴァルキリーを残しておくからなるべく早く傷の手当てを」
「了解しました!」
リリーが敬礼する格好をしたのを確認し、短剣使いに向き合う。
後ろで尚もミリィさんが何やら言っているが、悪いけど今は無視をさせてもらう。
「おいおい、何勝手に出て来てんだよ。それに今たった一人で俺の相手をするって言ったか? 舐めんじゃねぇよ!」
「落ち着けガリウス、さっきの魔力を忘れたのか」
「うっせぇ! 今のこいつからは何の魔力も感じねぇじゃねぇかよ。お前はすっこんどけ! こいつは俺が遊んでやらぁ!」
そう叫ぶと、短剣使い……ガイウスが僕に向かって飛びかかってくる。
「いくよ、皆んな!」
二つになってしまったリング型の腕輪をした右手を前に突き出し、僕の相棒たる
「なんだ!」
突如腕輪から光が解き放つと、一つは左腕に、一つは腰の裏へと飛んでいき、僕の全身が光に包まれる。
「
言葉と共に空中に現れた三角錐の光から、細長い光の閃光がいくつも地面へと降り注ぐ。
「ちっ」
ガイウスは一旦立ち止まり後方へと大きく後退、その間に僕の周りに纏われていた光が収束していく。
「なんだお前は、さっきのやつか?」
ガイウスが一瞬戸惑う、それもそうだろう光が消えた後には僕の姿はすっかり変わっていたんだから。
「ちょっ、誰よあんた! まさかセリスじゃないわよね?」
後ろからミリィさんが同じように驚いた声で尋ねてくる。
ん〜、困ったなぁ。だからこの姿にはなりたくなかったんだよ。
僕が母より譲り受けた
今の僕の姿は背が縮み、髪色が普段の黒髪からブロンドのロングヘアに変わり、フリルがいっぱい施された上着に膝丈までのスカート、頭にはヘッドドレスまで着用され、その全てが白で統一されている。
まぁ、早い話が白いゴスロリ服を着た女の子が突如現れたんだ、誰だって驚くだろう。
うん、もう帰りたい。
「やっちゃってくださいアリスちゃん!」
なぜかリリーだけはノリノリで応援してくれるが、今はそれすらも心が痛い。
「アリスって? そう言えばさっきもセリスの事そう呼んでたわよね? それじゃこの女の子ってセリスなの!?」
「ごめん、何も聞かないで。心が折れそう……」
「……う、うん。まぁ貴方も色々あるのね……」
うぅ、やっぱもう帰りたいよー。
「なんだ、ただのオカマ野郎か」
ピクッ
「脅かしやがって、そんなフザケタ姿で俺様に勝てると思ってんおかよ!」
「スターゲイザー!」
左腕に張り付いていた籠手のような物が、一瞬眩い光を解き放ち一本の長い槍へと姿を変える。
「リリー、後はお願い」
一言だけ残し、僕……私はガイウスへと駆け出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます