第2話 出会い

 翌朝いつものように訓練場に向かう途中、何やら生徒達が揉めている現場に出くわした。

「いい加減にしてよミリィ、貴方が一人で突っ込むから支援ができないじゃない」

「ちょっと自分がBランクだからっていい気になっているんじゃないの? 貴方の実力は詮武器の性能に助けられているだけ、訓練用の武器を使えばエイミのパートナーにもなれないわよ」

 揉めているのは女子の生徒3人組、話の内容からするにミリィさんとエイミさんが暫定パートナーで、もう一人の女の子が二人でミリィさんを責めているようだ。

 女の子の中でもよく似たことがあるんだなぁと眺めていたら、責められていた子、ミリィさんが僕に気づき睨めつけてきた。

 っと、気の弱い僕にこれはキツイや、そのまま何事も見なかった事にし訓練場へと向かう。



「おい、お前とのパートナーは解消だ、今日から俺はこいつと組む」

 訓練場に到着した僕に待っていたのは暫定パートナーであるギルバード、その隣には見られない男子生徒がいた。

「えっ?」

 別にパートナーを解消されるのは構わないが、いきなり今言われても正直困る。

 確かに暫定パートナーでも正式に登録したパートナーでも、二人の同意があれば何時でも解消できる事は規則で認められているが、訓練は二人一組でないと受けられないし、ギルバードが連れてきた生徒の相手も困るだろう。いや、僕が彼のパートナーと組めば問題ないのか?


「てめぇじゃ俺の実力は発揮できねぇんだ、お前も分かってんだろうがこのDランクが」

「しかしDランク如きがよくギルバードの相手に選ばれましね、でも安心してください。彼の力はこの僕がサポートさせて頂きますので」

「はぁ、まぁ分かりました。それじゃ僕は貴方のパートナーと組めばいいんですね?」

 ギルバードと離れる事にそれほど悔やむ気持ち持っていない。このまま彼にしがみ付いても恐らく僕の魔法は当てにしてくれないだろうし、続けたとしてもどうせ今日一日だ。


「残念ですが僕のパートナーは昨日学園を辞めてしまいましたので、今日はお一人で授業を受けてください。それではご検討をお祈りしてますよ」

 それだけ言うと二人は僕の前から立ち去って行った。

 この学園で行われる訓練はかなり厳しいと言われており、その為体力や続けていく力が無ければ脱落していく生徒はかなり多い。

 とにかく今はこの現状を何とかしないと授業に受けられないと言う事らしい。



「どうしたレヴェン、また何か揉めていたようだが」

 やってきたのはアルベルト、相棒のジルベールはまだ来ていないようだ。

「おはようアルベルト、ちょっとギルバードからパートナーを解消されちゃってね」

「はぁ? いきなりか? 全く自分勝手な奴だな、それでどうするんだ? 今日の訓練は」

「ん〜、とりあえず教官に指示を仰ぐよ、最悪自主練かな」

「まぁ、そんなに落ち込むな。案外近くに最良のパートナーがいるかもしれないんだから」

「うん、ありがとう。それじゃ行ってくるよ」

 アルベルトにそう告げると、教官がいる教育棟へと向かう。するとそこには先ほど揉めていた女生徒の一人が教官と話していた。


「おぉ、どうしたお前まで」

「おはようございます教官、実は……」

 女生徒との話の区切りが付いたのか、僕が訪れた事に気づいた教官が話しかけてきたので、ギルバードとの一件を説明した。

「何だ、お前もか」

「お前?」

 その言葉が意味する答えは、この女生徒もまたパートナーからいきなり解消を言い渡されたって事だろうか?

 思わず女生徒の方を見てみると、鋭い目つきで睨め返されてしまった。

 だから気の弱い僕には心臓に悪いって。


「よし、丁度いいからお前ら今日一日パートナーを組め、どうせ今日で暫定パートナーの期間は終了するんだ。一日ぐらい問題ないだろ?」

「「なっ」」

 僕がこの目つきの悪い女生徒とパートナーを組む? いやいや、ないわー。

「何も驚く事もないだろう? 男女のペアなんて珍しくもないんだ、案外デコボココンビで上手くいくかもしれんしな」

 デコボココンビって……それって明らかに僕の方がヘコんでるよね?


「分かりました、それじゃ訓練に向かいます」

「えっ、ちょっ、僕でいいの?」

 アタフタしている僕と違いすんなり現状を受け入れている女生徒、男の僕が言うのもなんだがめっちゃ男らしい女の子だ。

「私は強くなりたいの。そのために一日たりとも訓練を欠かすわけにはいかないのよ」

 そう言うと彼女は一人訓練場へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る