第7話 あの人の中の私

山田リカは、部屋のベッドに横たわっていた。


「はー。なんか疲れた。」


A組は特進クラスのため、毎日の宿題が山ほどある。加えて、テニス部部長として、毎日の練習のメニューを考えなければならない。


ぼーっと天井を見つめる。


「リカー!!遅刻するわよー!!」


一階からお母さんの声が聞こえる。


「はーい!もう起きてる!」


ベッドの上から返事をし、制服に着替える。


朝ごはんをかきこみ、家を出る。


いつも地下鉄に乗ると、斜め前の長椅子に西山カオリが座っている。


「西山さん!おはよ!」


そう言いながら、彼女の隣に腰掛ける。


「あ、おはよ。」


静かな声で、西山カオリが返事をする。


西山カオリとの接点は、この通学途中の地下鉄だ。以前、リカの好きな作家の小説を車内で読んでいるのを見つけ、リカから話しかけて友達になった。


「あ!前にオススメしてもらった本読んだよ!!すっごく面白かった!!!」


と彼女に言うと、西山カオリが嬉しそうに頷いた。


リカにとっての彼女は、何でも話せる存在だった。


友達も多いリカだが、その友達はリカの容姿や頭の良さが目当てだということは、リカにも分かっていた。どんな話をしても、周りの友達が思うリカの理想の姿を壊さないように接してきた。


しかし、西山カオリとは違った。


彼女には、好きな小説家のことや、日頃の辛いことなど、全部ありのままを話すことができた。


どんな話をしても、彼女はまっすぐな目で聴いてくれた。


彼女の前だけでは、素直になることができた。


彼女に抱く、日頃の感謝はまだ伝えられていない。


「ありがとう。」


その一言を胸に、今日もリカは、

カオリに笑顔を向ける。

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