第6話 始まり


辺りを見渡すと、右手から来たはずの電車の後ろ姿が、右手に見えた。


向かい側には、ニコニコした私が手を振っている。


ゆっくりと私が、階段を降りてくる。


「びっくりした? 交換成功だね!!鏡見る?」


目の前の私が、鏡を手渡す。

恐る恐る覗いてみると、そこには、山田リカがいた。


「え、うそ、、私が、、山田さん?」


「そう!だって交換だもん!ね?」


目の前で私がくるくる回っている。


「わー!すごい!本当にできちゃった!!私今から西山カオリなんだー!」


こんなこと、本や漫画の世界だけのことだと思ってた、、山田さんと入れ替わるなんて。


「じゃあ、これから一週間、山田リカだからね!」


「一週間??!そんなに?、、無理だよ。私、山田さんとして、やってける自信ないよ、、!」


唖然としている私の肩に、手を置いて西山カオリがまっすぐこっちを見ている。


「いい?大事なのは、本当の自分を見失わないこと。」


そう言って、肩をポンと叩くと、私は全身の力がふっと抜けた。

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