第3話 きっかけ
「西山さん、、だよね??」
名前を呼ばれて後ろを振り向くと、山田リカが立っていた。
「そう、、ですけど、、」
私は混乱した表情を浮かべ、立ち尽くしていた。
「よかったー!人違いだったらどうしようって思っちゃった!」
笑顔が眩しい。高校入学後、山田リカと初めて言葉を交わす。整った顔立ち、ハツラツとした声。今まで、憧れていた山田リカが目の前にいる。
「あの、、何か??」
「いきなりごめんね!私、山田リカ!隣のA組なんだけど、西山さんは、、B組だよね?」
彼女の話を聞いていると、毎朝私と同じ地下鉄に乗っていたらしく、私が読んでいる小説が気になっていたのだと言う。
まさか、こんな形で憧れの人と友達になれるなんて、、
山田さんと話していくうちに、今まで知らなかった彼女の一面を知り、親近感が湧いた。
意外にも、お気に入りの小説家が同じで、話が弾んだ。
それから、毎朝同じ地下鉄に乗り、オススメの本を交換し合う仲になった。
私にとって、雲の上の存在だと思っていた彼女が、毎朝私の隣の席に座っている。
とある日の朝。いつものように、山田さんと登校しながら本の話をしていると、彼女がこう切り出した。
「よかったら、今日のお昼、屋上で一緒に食べない?」
断る理由のない私は、コクリと頷いた。
昼休み。山田さんと屋上で待ち合わせた。
その日の空は、青く、高く、どこまでも続いているかのようだった。
いつものように、本の話から始まり、昨日見たテレビ番組の話、テニス部のことなど、他愛のない会話を楽しんでいた。
すると、山田さんが顔を上げ、青い空を見つめながら、こう呟いた。
「人生、ってなんだと思う?」
「え?」
いきなりの漠然とした質問に何も返せないでいると、彼女はこう続けた。
「私の人生は、私しか知らないけど、他の人の人生も味わえたら面白いよね。」
瞳を輝かせた山田さんが私には、夢を語る少女のように見えた。
「確かに。少しだけ、他人の人生を味わうってのも面白そうだね。けど、そんなことってできるのかな、、?」
私は手元のお弁当を見た。
ふふ、と彼女が笑う。
「西山さん、私と、人生、交換してみない?」
顔を上げると、彼女のまっすぐな瞳が私を捉えていた。
背中に強い風が当たるのを感じた。
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