第4話 俺たちの戦いはこれからだ。

『はーい、今日の1部は終了です。二部参加希望の方は受付までお願いしまーす。お帰りの方は4時までに完全撤収をお願いします』

 アナウンスを背に有真は帰り支度を始める。

 ――結局、フラッグは取れずじまいか。

 それでも、善戦はできただろう、と思っている。

「この後、どうする? ファミレスにでもいく?」

「そうですね、少し休んでいきたいです。有真は?」

「じゃあ、付き合います」

 そんな訳で、三人でファミレスへと移動し、志麻先輩からドリンクバーを奢ってもらう。

「今日の感想でも聞きたいところだが聞くまでもなさそうかな」

 隣に座る、虎太郎に目配せして頷いた。

「すげえ楽しかったです……できれば、今後もやっていければって思ってます」

「それはそれは、連れて行った甲斐があったってものね」

 次はもっと勝ちたいし、フラッグも取りたい。

 ――自分でも訳が分からないほど熱くなっている。

「今後やるうえでやっぱり銃とかゴーグルとかいろいろ欲しいなって。もちろんバイトしてからですけど」

「俺も、お願いします」

「そうなるわね。2万円もあれば十分でしょ。ある程度稼いできてもらえれば色々見繕ってみるわ……それじゃあ改めて」

 握手を求められればそれに応じて。

「今後ともよろしくお願いします」

こうしてインドアサバゲの世界へと足を踏み入れるのであった。

握手が終われば、はーっと志麻先輩は肩の力を抜いて。

「いやー良かった良かった。本当良かった……入ってくれて」

「やっぱり入らない人もいるんですか?」

 虎太郎の質問に志麻先輩は苦笑して頷いて。

「そりゃあいるわ。値段が高いとか行ったはいいがどう動いていいか分からないとか一方的にやられたとか、常連さんばかりの空気で居辛いとか」

 分からなくもない理由の数々だ。やはり、冷静に考えるとハードルが高いのかもしれない。

「止めなかったんですか?」

「無理に引き留めなかったけどね、合う合わないはあるからさ……それに私が楽しそうにしてればまた来るかもしれないし。っと暗い話はやめやめ。今日のゲームについて色々話そうじゃないか」

 ぱん、と志麻先輩が空気を換える合図かのように手を叩いた。

 それからは今回のゲームの個人的に面白かったところやかっこいいプレイヤーのこと、銃についての話をする。

「先輩はどうしてインドアサバゲーをやってみようと思ったんですか?」

「どうしてか、なんでだっけな――」

 虎太郎の質問に志麻先輩は中空を見て。

「OBの先輩に誘ってもらってはじめて……その頃の私はかっこいいヒーローに憧れていてね。っでやってみて思ったわけだ。『これならヒーローになれる』ってね。我ながら単純だと思うけどもそんな理由だったかな」

 納得のいく理由だ、と思った。

 誰もが憧れる映画や漫画、アニメの中のヒーローになる。

 インドアサバゲ―は遊びではあるが戦いの場である、誰でもチャンスがある。良識の範囲内で好きな装いが出来る。

 なれるヒーローも様々だ、前線で戦うのも、後衛の渋い活躍もありだ。

 ――お手軽にヒーロー気分になれるゲーム。

  そんな話をして、その日を終えた。

 翌日、全身筋肉痛に苦しむことになるがそれもまた、一つの思い出だ。

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