第3話 さあ、実戦

 2,3戦目と重ねていく。2戦目は裏から回った敵に撃たれて終了。3戦目は陣地に籠ってなんとか生き延びることもできた。

 これまでの戦いで学んだことがある。おそらくはインドアサバゲ―はそれほど身体能力による力量の差は大きくは出ない。

 走ることは出来ない、さらに銃を撃たれれば誰でも一発でアウトだ。

 力量の差が出るのは銃の扱いは当然だが、それ以上に立ち回りだ。

 バリゲードにしっかり身を隠す事、低姿勢を保つ事、 そして、射線が通る位置、そこを把握することでやられる確率はぐっと減る。

 と、思っていても実際に実行に移すのは難しいわけだが。

『はい、ここからルールが変わります! よく聴いてくださいね!』

 談話していた周囲が静かになるのをゲームマスターは見て。

『次に行うゲームは大統領戦です。フラッグを取れるのは選ばれた大統領のみになります、大統領がフラッグをとるか、大統領がヒットされれば終了です……それでは赤チーム、大統領を選んでいきたいと思います!』

「んじゃ、私がやるよー」

 志麻先輩が手を挙げると大統領の証であるオレンジのチョッキを受け取る。

「大統領の方は意気込みやら所信表明をお願いします」

「はい、今回は久々に大統領やらせてもらいます。とりあえず、今回初心者つれてきてるのでフォローよろしく!!」

 拍手が起きて、各チームの大統領が選ばれていく。

「ま、二人でうまいことやってね」

 そう言ってフィールドへと志麻先輩は進んでいく。

 雑な対応だがあれこれ指示すのはあまり得意でないのだろう。

「どうする? 有真。組んでいく?」

「そうした方が良さそうだ。一人で戦ってみたがどうにも進めなくなっちまう」

 二人一組のツーマンセル。うまいことやれればいいと思いながらフィールドへ。

「今回、大統領は身を潜ませてもらうよ。必要に応じて支援を飛ばす感じで」

 志麻先輩が周囲に向けて言うと、皆が頷きや銃を掲げて応じた。

 そうしていうちにゲームマスターから開始のカウントダウンがされる。

「うまくやってみせるさ」

 自分に言い聞かせて動く。

 出来る限り前へ、大統領を視認できれば良し、できなければ敵を抑えて味方を進行させる。そう役割を決めて虎太郎と動く。陣取るのはフィールドの左端だ。

「いる? 大統領」

「いや、見えないな」

 普通に考えれば大統領を前に出してフラッグを狙うより、大統領を隠して、相手の大統領を討ち取るほうがはるかに楽だ。

 なら、敵の大統領は奥に潜んでいる。

「俺たちはここで立てこもりだね」

「まあ、そうなるよな」

 虎太郎と話しながら周囲の状況を確認する。相手も大統領の姿を発見できてないようだ。

 周囲の声に大統領に関するものはない。

 視界の中に変化が出る。敵がこちら側からの進行を試みようとしている。

 お互いに気づいて銃を向けて撃つが、咄嗟の射撃はどちらも外せば、すぐにバリゲードへと戻る。

「来てる?」

「来てる、多分一人」

 短く伝える、この後、敵はどう動いてくるか? 突っ込んでこちらを狙ってくるか? 下がるか。

 一瞬の思考の後、膝立ちでバリゲードから一瞬だけ顔出す。敵は引いたようだ。そこで何かが転がる音が響き背後に向くとそこには。

 ――手榴弾に似た筒があった。

 視認したと同時に、筒が白いガスを吹き出して弾をばらまいた。

「ヒット!」

 虎太郎からヒットの声が上がり、あわててそれに続いた。

「ヒット!」

 声を上げる、横から回り込まれて手榴弾を投げられたようだ。警戒が足らなかったということか。

 グレネードの存在は初心者講習で習ったがこうして実際に使われると呆気にとられる。

 撃たれた方向から3,4人のグループが慣れた様子で周囲を掃討していく、しばらくして大統領ヒットの声が響いた。

 こちらの敗北だ。


 それから引き続き、大統領戦。死亡回数が少ない方が勝ちとなるカウンター戦、二人で一つのライフを共有するバディ戦を経てフラッグ戦へと戻っていく。

 戦績は芳しくない、最初こそ、そこそこ頑張れていたつもりだがなかなかヒットを奪えず、最後まで生き残ることが出来ない。虎太郎も同様のようで、浮かない表情をしている。

 ――どうすれば、いいか?

「おーおー悩んでるね。ルーキー達」

 考えていると志麻先輩が声をかけてくる。

「まあ、遊びだから。真剣になりすぎると辛いよ?」

 そのことは分かっている、これは遊びだ。負けることもある。負けても楽しいとは思う。

 ――けど、生き残って勝てたら、さらにフラッグを取れたら絶対もっと楽しい筈だ。

「どうすれば、うまくなりますかね?」

「真面目だねぇ。遊びたいように遊ぶのがいいんだけど」

「けど、その来るからには、勝ちたい、です」

 虎太郎が立ち上がり思いを伝える。その言葉にこちらも頷いて。

「俺も同じ思いです」

 志麻先輩はそれぞれの言葉を受ければ、笑みを強いものにして。

「いやあ、見事にサバゲ沼に入ってお姉さんは嬉しいよ。といっても私もそれほど強くはないからアドバイスをしてあげる」

 一つ、止まっている相手には冷静に対処。一方的に勝てる相手だ。

 二つ、攻め手を増やせ、一定のパターンは読まれる。

 三つ、撃ち合いの際、引くことを覚えろ、引くことも攻めへと繋がる。

「私の心がけとしてはこんなところ。まあうまいことやってみなよ」

 なるほど、と頷いて。改めて俺たちは戦いに臨むのであった。

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