第2話 インドアサバゲの世界

 そんなこんなで楽しみしつつその日を迎える。天気は晴天、都会ということもあり人どおりは多い。指定されてディスカウントストア前でスマホを片手に待つ。

 この日まではいつも通りゲームしつつバイトしつつ合間に志麻先輩からもらった冊子でルールや銃の扱いの予習をしていた。

「あ、おはよう。有真」

「おう、虎太郎」

 後から虎太郎がやってくる。

「寝れた?」

「まあ、そこそこにな。そっちは?」

「同じく、かな。銃のチェックもあったから」

「ああ、そっか。お前は持ってるもんな」

 志麻先輩の説明の際に持ってることを教えてくれた。虎太郎はそれで戦うようだ。

 雑談もそこそこにしていると時折、明らかにライフルが入っていそうなバッグを抱えた人やカートを引く人が通っていく。

「……こうしてみると同じところに行く人、か?」

「多分……」

 そうして往来を見ているとライフルバッグ以外にも楽器のケースを担いでいる人もそうなのだろうかとか見えてくる。

「待たせてしまったね」

 虎太郎と話していると志麻先輩がキャリーを転がしながらやってくるその姿は薄青のシャツに白黒ボーダーのワイシャツを腰に巻いている。

 これだけ見るととても、サバゲ―のイメージと結びつかない。

「早速行くとしよう」

「サークルの他の人来ないんっすか?」

「皆、気まぐれでねーというか、あの人たち初心者に勧めるのあまり上手じゃないから。さあ、いこう」

 志麻先輩に促されて、目的を目指す。歩くこと十分程。

 ガラスドアを開けるとそこにはライフルバッグやキャリーケース、大きなリュックを背負った一団がいる。

 年齢層は様々で自分と同じぐらいのものもいれば白髪の初老の姿もあった。

「これみんな、そうですか?」

「ああ、そうだ、私たちと同じ。サバゲ―のプレイヤーだよ」

 案内されるがまま、エレベーターに乗って地下へと降りる。開けば集会場のような場所へと出る。レジに、サバゲ―用品が並んだ棚に自販機、荷物置きであろうラック、そしていくつも並んだ長机と椅子。

「先に場所を取ってしまっていいですよー初心者の方は、こちらに記入お願いします」

 割ときれいめな女性の店員に声を駆けられれば一礼して荷物を適当な机へと置いて。書類へと目を通す。

 メンバーズカードのために必要な個人情報を記入してレジで登録を済ませレンタルのマスクやゴーグルマフラーのような者を受け取る。そして、パーカーに使い古したジーパンへと手には少しお高めの軍手に着替える。虎太郎も似たような服装だ。

「うん、いい感じだね」

 そう評する、志麻先輩の服装はもっといい感じ過ぎる。

 黒一色の装束、特に上半身のぴっちり具合が素晴らしいスタイルを強調。

 志麻先輩は視線に気づいてか、にやにやと笑みを浮かべて。

「まあ見てても減らないしいいんだけど。弾速チェックいこうか。ほい、銃とマガジン」

 そう言って手渡されたのはガス式のハンドガンとマガジンと呼ばれる弾倉。

 一応はFPSのゲームや映画でなんとなくな銃の知識はある。

 銃の種類はガバメントと呼ばれる種類のものだ。手になじむ、そして軽い。

「ガスはいれてあるから、あとはゴーグル、マスクつけて向こうで弾を込めて銃の動作と弾速の確認。ここでは絶対にマガジンを入れないこと」

「了解……虎太郎の銃は?」

「ああ、俺はベレッタってやつ、ほら、ゾンビ物のゲームとかでイケメンが使うやつ」

「へーこうして見比べてみると結構違うもんだな」

 感心しながら弾速チェックのスペースへと赴き、慣れない手つきで弾をこめ、セーフティを解除、二、三回計測器を通して射撃。

 ――これが、銃の反動。

 密かに感動しつつチェックを終えれば銃にはチェック済みのシールが張られ再びセーフティを起動して自分のスペースへと戻る。

 残り30分ほどの時間がある、周囲を見てみれば。

「なんというか」

「個性豊かだよね」

 虎太郎もこちらと同様な感想のようだ。サバゲーということで迷彩服なイメージだったが、実に様々だ。自分たち同じように動きやすい私服のものもいれば、迷彩服を着るものももちろんいるがそれ以外にもスーツスタイル、メイド服、仮装用の仮面付けるものなど様々だ。

「なんかこう、出来る感がすごいな」

「そう構えることはないよ。どんなかっこうしていようが一発当たればアウトというのは同じだ」

 志麻先輩は言って時計へと視線を移して。

「まだ時間あるし、フィールド、見てみる?」

「じゃあ、せっかくなんで」

 志麻先輩の勧めに従って、マスクとゴーグルをつけて戦場となるフィールドの中へと入る。

 フィールドの中には簡単な櫓、どうやっていれたのかレトロな乗用車、散り散りに配置されたバリゲードやドラム缶。狭い通路に二つの広い部屋といった構成だ。

 試しに銃を構えてみる。撃ってはいけないので形だけだ。

「なんか、緊張するな」

「そう、だね」

「難しいことは考えずにまずは雰囲気を楽しむといいよ。それと今のうちにどこの場所なら隠れることが出来るとか見ておくといいかも」

 言われたとおりに三人で試しに身を隠してみたり銃を構えてどこなら狙えるか、隠れることが出来るのを確認する。

「意外に隠れられてそうで隠れらないっすね」

「そうだね。でも他の素人さんもそれは同じ、隙を付けるかも」

 虎太郎と話しているのを生暖かい目で志麻先輩は見ている。あえてこうするといいと言わないのはこちらに楽しんで貰いたいという配慮だろうか?

 それらを終えて中へと戻ると、ルール説明の時間を迎える。

 レギュレーション説明というもので、使用する弾の種類からゲーム中は走らないこと、休憩中は私的な勝負をしない、撃たれたしっかり自己申告すること事細やかに丁寧に説明してくれる。

 それを終えてチーム分け。カラーは赤、青、緑で自分たちは赤のマーカーを渡されれば二の腕に装着する。

「初心者の方は、初心者講習を受けてくださーい。経験者の方はフラッグ戦を回していきます」

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