#002 神ならさすがに知っておいてほしかったな。

 辺りは一面、純白の部屋。

 めっちゃ広い。

 色とりどりのカードが散らばっている。


 なんつー既視感あふれる馬鹿っぽい光景だ。

 この女神、たぶん俺の世界の担当とかで、考えるのが面倒だったんだろう。

 そんままどこぞのお話を基にして創っちゃいました感がひどい。


 女神に対して神聖かつ美貌を求めている連中には悪いが、目の前のこいつ。



 いま『鼻くそほじってる』んだぜ?



 女神の鼻くそ欲しいやついるか?

 いそうだな。ど変態どもの世界めが。

 宝石みてえな色してんだろ……でもこれ……鼻くそなんだぜ……。

 あ、鼻毛も抜いた。

 銀糸が白い部屋に舞った。……頭痛が、痛ぇよ。


「わたしの美貌に見とれるのは構わないんだけど早くしてくれない?」

「すまん、ひどくあきれてた」

「会話が成立しないわね。あなた日本人で合ってるわよね?」

「生まれは稲毛、幼少期は東金、すぐ稲毛に戻された生粋の千葉っこだが?」

「千葉しか聞いたことないわね……」

「だろうな」


「千葉……千葉? ああ、デスティニーランドがあるところね!」

「…………」

 そりゃ東京の飛び地、浦安だな。


「そうそう。幕張メッセとかやめてもらえない? 交通の便が悪すぎなんだけど」

「…………」

 すみませんね返す言葉がございません。つうかおい女神きとんのかい。


 なぜ俺は千葉県民を代表するがごとく縮こまらなきゃならないんでしょうか。

 おれってば死んでるっつーのになんつー仕打ちだ死体蹴りだ。

 そして当の女神ときたら、威張り散らしていらっしゃる。

 両腕を組んで、でっけえ胸をたゆんたゆん遊ばせてやがるぜ。

 ほんっとしょうもなっ、って感じに足を絡ませるもんだから、衣がはだけて下着が丸見え。健康的かつめっちゃ綺麗な臼桃色の生足も丸見えだ。よほど自分の見た目に自信があるのか、単なる痴女だなこりゃ。

 しっかし、

 まあ千葉っつったら、この2つくらいか。

 マザー牧場や鴨川シーワールドは千葉県民くらいしか知らねえだろ。


 これは俺の持論だが。

 千葉県民の変態率は異常。

 北海道には悪いが、道民と頂点を競い合える水準で異常。


 公表されているなかで千葉県出身の作家どもを思い浮かべてみるといい。

 変態的な作風か、変態的に上手いかのどちらかしかいねえ。

 日本で最も変態の集まりやすい田舎な都市、それが千葉だ!

 他人の功績で飯が美味い。


 ……そういやこの女神からもがするな。

 こう、千葉県民が放つ独特の変態性というやつが。

 まさか神からも愛されてしまっていたとはな。


「ふっ」

「なによ、気持ちの悪い顔で気持ちの悪い笑みを浮かべないでよね。移るでしょ」

「なにがだよ」

「こう……気持ちの悪い菌みたいなものが、よ」


 見た目に騙される馬鹿な男どもの哀れすぎる典型例がまさに、って感じだな。

 もしこれが現実であったとしても、この女神とのラブコメは絶対にあり得ない。

 絶対にだ。むしろ殺す。


 おや。

 地面のカードが黒と紫を混ぜたように光って……いや、闇っている。

 俺のささやかな殺意に呼応したとか中二っぽいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る