飛鳥の読み方

歌番号78を例にとって、『飛鳥』の読み方について考えてみます.

ただし上代特殊仮名遣は間違いであると仮定しています.


引用しますと、

78 飛鳥 明日香能里乎 置而伊奈婆 君之当者 不所見香聞安良武

引用を終わります.


『飛鳥』の読みは『ひとり』であり、意味は『独り(一人)』であると思います.


私訳ですが、現代語で示せば、

78  独りで 明日香の里を 置いて去れば 君がいる辺りは 見えないかもなあ

と云う感じでしょうか.


『飛鳥』を『ひとり』と読んで意味が通りますので、これで問題ないと思います.


では、なぜ『飛鳥』を『とぶとり』と読むのか、について考えてみます.

奈良時代に入ると、藤原氏が大和朝廷の実権を握りました.藤原氏に逆らうと、皇親の長屋王ですら抹殺されてしまうほどの時代でした.そのような時代状況の中で、『藤原不比等』の『比等』を連想させる『ひと』の発音が、藤原氏に対する不敬になることを避けるために『飛鳥』の表記を用いて、更にへりくだって『とぶとり』と読んだと推測します.

(了)

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