味酒の読み方

歌番号17を例にとって、『味酒』の読み方について考えてみます.

ただし上代特殊仮名遣は間違いであると仮定しています.


引用しますと、

17 味酒 三輪乃山 青丹吉 奈良能山乃 山際 伊隠万代 道隈 伊積流万代尓 委曲毛 見管行武雄 数々毛 見放武八万雄 情無 雲乃 隠障倍之也

引用を終わります.


この歌は、後半に『見放武八万雄(見さけむ山を)』とあるように、額田王が山を振り返り見ながら近江に下るときに作った歌です.当然この時、額田王は三輪山も振り返って見ているはずです.すると、『味酒』を『見さけむ』と読めば、歌の前半と後半で意味が上手く繋がると思います.


従って、『味酒』の読み方は『見さけむ』だと思います.


それではなぜ、『見放武八万雄』に『武』が入っているのに、『味酒三輪乃山』には『武』が入っていないのでしょうか.


それは、『む』の発音が理由だと思います.


ローマ字で書けば、『味酒三輪乃山』は『mi sa ke m mi wa no ya ma』となると思います.このとき、『m』と『mi』は結合されて『mmi』となり、すると『m』が1つ消えて『mi』となります.つまり、さけむの『む』の発音は、三輪の『み』に吸収されてしまうので『武』を入れる必要がなかったのだと思います.


一方、『見放武八万雄』は『mi sa ke m ya ma o』となるので、『m』は残り、『む』の発音を示すために『武』を入れる必要があったと云う事だと思います.

(了)

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