15.作成者と創造者
部屋に戻ってきた俺はベッドの上で胡坐をかいていた。
「作成者に、創造者……か」
どちらもスキルの可能性が高いが、詳しいことは当事者である俺もよくわからないままだ。
ならば、知るしかない。
……名前的には何か作るってことだよな?
実際、俺は昼間にポーションを作成している。
だが、あの時は本当にいきなりだった。
あの時は確か……、
――作成者、創造者、起動、って言ってたはず……。
そこで、俺は座ったまま、腕を交差し、右の手で左目を覆う。
「作成者、起動!」
とりあえずかっこよく言い放ってみた。
「……」
何も起こらない。
あれー……。
何故だ、これでは一人でかっこよくポーズ決めて決め台詞言う厨二野郎ではないか、恥ずかしい。
何かが欠けている。単純に考えればそういうことだろう。
では、昼間と今で、何が違うのか。
まず、状況がまったく異なるわけだが、そこから考えていてはロクに話が進まずに夜が明けてしまう。
もっと、限定したもの。
……そうだ、俺の状態……あの時、俺は何を考えて、どうしていた……?
たしか、ポーションがあれば、と。そう思ったはずだ。
目的物質。
頭の中に響いた声は、起動、という言葉の後にそう言った。
目的、何の。それはきっと、俺のだ。
だとすれば、目的物質=ポーションと仮定して。
ポーションが欲しい、そう思いながら。
「――作成者、起動」
今度は静かに言葉を作る。そもそもその文言が必要なのかはわからないが、少なくとも、結果は出た。
『《作成者》起動』
おぉ! 本当にできた!?
驚く俺を置いて、声は言葉を続ける。
『目的物質を認識。――作成履歴に同物質を確認、以前の結果を基に効率を上昇』
「効率を上昇って、つまり質が良くなるってことか……」
学習機能つきか、すばらしい。
『――条件未達成を確認』
……何? 未達成だと?
そんな言葉は昼間には無かったぞ。
『保有魔力残量から《創造者》にて代用可能を確認。《創造者》起動』
俺がツッコミを入れるよりも早く、新たに創造者とやらが起動されるという通達が来る。
『《創造者》による物質作成の認可応答待機――』
そこで、言葉が切れる。
つまり、俺の許可待ちってことか……。
スキルについて知るためには許可せねばなるまい。
俺はどうぞどうぞ、と内心で許可を下ろす。
『許諾を確認――作成、実行』
声がそう言うと同時に脱力感に襲われる
「うお……」
これは、昼間にも起こったことだ。
「そういえばさっき、魔力がうんたら言ってたな……つまり、魔力を消費したってことか」
一つの納得を得たと同時、目の前の空間からポーション入り容器が現れ、ぽとっとベッドに落ちる。
綺麗な緑色だ。
俺は今の一連の流れをまとめてみた。
まず第一に、作成者、創造者ともに、俺が欲しいと思ったものを作れる能力であることだ。
作成者は作成する物質の素材と俺の魔力をもって物を作るらしい。
そして、創造者。これは素材が無いときにその分を魔力で代用して、物質を作成する。便利だが、それなりに魔力を要するみたいだ。
「これってかなり良スキルなんじゃないか……?」
スキルに良し悪しがあるのかは知らないが、少なくともこのスキル、使える。
欲しいと思ったものは俺自身で作れる、そういうことだ。
「……ということは、例えば、どんな魔物もイチコロな聖剣エクスカリバーも作れる――?」
『――目的物質の認識に失敗。目的物質が抽象的――』
悪かったな、想像力とぼしくて!
『――または、世界の
……ん? 理……?
どういうことだ……?
イチコロという部分は自分でも抽象的過ぎたと思ったが、その後に続いた言葉が気になる。
理から逸脱、というなら普通ではないということだ。
――聖剣が引っかかったのか。
たしかに普通の剣ではないだろう、エクスカリバーは。ビーム出るものだってあるし。
このことから、
「つまり、俺の想像が具体的で、かつ世界の法則みたいなやつの範疇に収まってれば良いのか」
なるほど、制限はさすがにあるようだ、それでも便利すぎるわけだが。
しかし、こうなってくると、問題がある。
それは、保有魔力だ。
作成者はともかく、創造者の魔力消費が多い。
――ポーション一つ作るだけでもだいぶ消費してるしな……。
消費量の基準がまだ不明確だが、作成するものの等質や質量などに関わってくることが予想できる。
良いもの、便利なものを作るならば、魔力が多く必要だということだ。
最悪、物を作りたくても魔力の最大値が足りないとか、作ってすぐ魔力切れとかになる気がする。
「というか、魔力の回復手段と最大値の上げ方ってなんだよ……」
それはまだリーシャにも教わっていない。
ゲームならレベルアップすればMPも回復するわけだが、残念この世界はゲームでもないし、レベル制でもない。
収納魔法ストックスも早く覚えたいし、次の訓練では魔力と魔法についてもっと詳しく聞く必要が出てきた。
――明日、すぐにでも聞いてみるか……。
ふわぁ、と大きなあくびをしながら俺は横になった。
「……さすがに疲れた」
今しがた魔力を消費したせいもあるだろうが、それでも濃い一日だった。
「この世界来てから薄い日なんてまだ無いけどさ」
そんな独り言を言いながら目を瞑る。
俺の意識はすぐに闇に落ちていった。
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