03 異界のテーブルマナー

 勇者全員がそろったところでテーブルも用意されていることから席について事項紹介をすることになった。


 取りあえず全員の挨拶を聞いてみて思ったことは全員が、若いということだ。ここにいる勇者全員が学年が異なることを除いて皆高校生だ。


「年下だったんだね。落ち着いてるから同学年か年上だと思ってた」


 高千穂は俺を見て「以外」と驚いていた。俺が年下だと自己紹介してから高千穂のですますの丁寧な口調はどこかへ行ってしまった。舐められているわけではないので俺は別段なんとも思わなかった。しかし「かわいい~」と言って勝手に頭を撫でてこようとするのは勘弁してほしい。


「高千穂玲菜(たかちほれいな)です。私は私立立花学園大学付属の高校に通う三年生です。部活は陸上をしていました」


 色が白いことから文化系の部活に入っていると思っていたので意外だった。髪は高校生活の中で日焼けしてしまったので受験にそなえ染め直したそうだ。他の勇者の話によると高千穂は学園の高根の花、アイドル的存在だったそうだ。それを聞いた高千穂は照れ臭そうにしていた。


「篠原結花(しのはらゆいか)です。私も玲奈ちゃんと同じ高校に通う三年生です。部活は剣道部に入っていました」


 篠原も色の白い、髪も真っ黒だが篠原は髪を上げてポニーテールにしていた。高千穂とは一年の時クラスが一緒だったそうだ。そんな篠原の印象は凛としていて生真面目な印象を受けた。


「えっと、桜(さくら)ゆあです。私も高千穂先輩と篠原先輩と同じ高校に通う一年生です。部活は入ってません。中学まではテニスをしていました」


 桜は二人と打って変わって気の弱そうな少女だ。それでも髪は長い茶髪、軽くウェーブしていることからパーマをかけているようだった。他の勇者の男からは一年生で有名な『お姫様』なのだそうだ。


「俺は清水剣(しみずけん)。三人と同じ高校の二年生、部活はサッカー部に入ってます」


 清水は顔立ちも良く好青年に見える。普段髪はワックスで立たせているそうだがこの世界ではまだ勝手がわからず、今日はそのままなのだそうだ。


「加藤隆雄(かとうたかお)って言います、普通にたかおって呼んでくれ。高校は皆と同じで剣と同じ二年。部活も同じサッカー部」


 加藤からは軽い印象を受けた。髪色も明るく、性格も明るいらしい。サッカーのポジションは清水がミッドフィルダー、加藤がフォワードとのこと。俺はあまりサッカーに詳しくないのだが清水のポジションはなかなか大変な役回りらしくすごいらしい。


「白田涼介(しろたりょうすけ)っす。同じ高校の二年です。部活は柔道部に入っていました」


 白田は体格の良い巨漢だった。クラスは清水と同じ、清水曰く寡黙な奴だが根はすごく良いやつ、なのだそうだ。


「南和也(みなみかずや)です。同じ高校の二年生、部活は入っていません。中学は演劇部でした」


 南は他の6人と違って異質な雰囲気を受けた。目つきは鋭く、長い髪がそれを隠している。はっきり言って根暗な印象を受けた。この南に関しては他の6人から紹介はない。


 7人の自己紹介が終わって俺は鈴村と谷風に彼らの通う学校を知っているかと尋ねていた。しかし俺も二も知らないそうだ。


「東京の学校だからね」


 篠原は言う。


「確か君たちは岐阜の学校だっけ?」


 どうやら俺たちは田舎者扱いされているらしい。

 俺は一つ彼らに質問していた。


「立花学園というのは一般校ですか?」


 俺の質問に答えたのは高千穂だった。


「そうだね、一般校……というよりは進学校だけど」


 高千穂は俺の質問の糸がわからず不思議そうな顔をしていた。そこで谷風も何かを感じ取ったのか7人に質問をしていた。


「俺たち三人岐阜の『ホーム』から来たんですけど?『ホーム』って知ってます?」


 谷風の質問に南は真顔のまま、他の6人は互いに顔を見合わせた。


「ホームって……家?何それ?」


 加藤は完全に知らない様子だ。加藤を除く他の6人も。

 俺たち三人は無言のまま顔を見合わせた。


 言うべきか、言わざるべきか。俺は迷っていた。


 そんな時、隣の鈴村にテーブルの下で腿ももをつつかれた。見ると鈴村は他の7人に気付かれないようにテーブルの下で指先を使いバッテンを作っている。


「い、いや!すまん!地元じゃ有名だと思ったんだが、やっぱ東京の方の人だとわかんねえか!」


 谷風も察したのか急に笑ってごまかし始めた。それを見た高千穂や清水と言った面々は苦笑いしている。あまりうまいごまかし方とは言えないが、俺は谷風に心の中でグッドボタンを押した。


 俺たち三人には秘密がある。


 俺たちは今まで社会から迫害されながら生きてきたのだ。今が有事だとしても鈴村が怖がるのも無理はない。


 俺たちは悲しく健気な超能力者なのだから。

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