みちくさ みちくさ

村むらさき

時計草

1-1

 小学校の通学路、「トケイソウ」の花はいつも毒々しく美しかった。


 子ども心に、チューリップやヒマワリなんかは天真爛漫で、子ども用の花だと思っていた。反対に、その一種の恐ろしさすら感じるトケイソウは、大人用の花だと、思っていたものだった。



 トケイソウは漢字で書くと「時計草」で、その名の通り時計のような容姿である。

 花びらのようにまあるく開いた薄きみどりの盤に、ちくちくと細い藤色が一回り小さくおんなじように一周し、さらに一回り小さく白、濃い紫と続く。

 真ん中の突き出た花粉がまるで時計の針のようだ。

 花粉は6つ、円になって広がっていて、黄色、紫色が交互で目が回る。

 たくさんの色を、使っているが、一見トケイソウは紫の花だ。妖艶で、ミステリアスで大人の花だった。




 怖いと思いつつも、私はその花が大好きだった。特に、つぼみがお気に入りであった。


 トケイソウのつぼみは、なんの面白味もないただの薄いみどりのカタマリだ。

 大きさは、私の人差し指の第一関節と半分くらい。ころんとしていて無邪気だ。花が咲いている時とは大違い。


 しかし、そう思って子ども扱いしているとさらにこの花は、恐ろしい。

 さなぎのような薄みどりを一枚を、そっとめくる。すると、まだ若々しかったあのカタマリが一瞬にして大人の片りんを見せてくる。見せつけてくる。


 一枚めくったその中には、驚くほどきちんと紫がつまっている。


 ふわっと薄みどりをめくるとふわっと紫がある。それをまたふわっとさわると、黄色の針が見えてきて、それはとてもきれいだった。

 咲いたトケイソウとはまた違ったトケイソウを覗き見ることができたのだった。






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