バーチャルYouTuberと「同時間性」
昨年末から急速に流行した「バーチャルYouTuber」という存在をご存知でしょうか。
『YouTuber』と呼ばれる、投稿サイト『YouTube』に動画をアップロードしてアーティスト活動する人たちがそれまでもいました。その動画で表に出て来る人物をかわいらしい架空の美少女のキャラクターにしたものが、バーチャルYouTuberと呼ばれる存在です。
バーチャルYouTuberとは、元々先行して人気を博していた「キズナアイ」さんを指していました。
早いうちからちょこちょこ話題にはなっており知る人ぞ知る存在ではあったものの、バーチャルYouTuberというジャンルそのものの流行というところまでには至ってはいませんでした。
しかし突如転機が訪れます。
見た目が美少女、しかし「中の人」は男性というギャップ性から「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」(2018年11月現在はYouTuber引退)が話題となったのです。
「中身おじさんのままでも美少女のガワをまとっていれば多くの方に受け入れられる」ということそのものが日本のキャラクター表現における衝撃的な分岐点だと思われるのですが、そのあたりは別の方の分析にお任せするとして。
それとほぼ時を同じくして「ミライアカリ」さんと「輝夜月」さんという大型新人が誕生したこともあって、「電脳少女シロ」さんや「ときのそら」さんなどそれまで活動していたバーチャルYouTuberたちにも熱い視線が注がれるようになったのです。
そこからわずか数ヶ月の間で続々と参入が相次いでいます。
グループ「にじさんじ」所属のバーチャルライバー「月ノ美兎」さんなどの新人(記事を書いた2月当時)が台頭し、もはや毎日追ってても追いきれないほどの広がっており、ここからは各YouTuberたちの生き残りが難しくなることでしょう。
彼女(?)らの特徴は、Twitterを中心としたソーシャルメディアを活用したファンやVTuber同士の交流がさかんであるという点です。
また彼女らはあくまでそのキャラクターのイメージを崩さない形での広報を行っていることは、Twitterのアカウントをフォローしているとすぐにわかることでしょう。
この「キャラクター性を押し出した、宣伝感を感じさせない宣伝」という手法はかなり効果的に作用しているように思われます。
「宣伝」というと、堅苦しさ、カネの匂い、作為的な意図に敏感な方に避けられがちな傾向がある中で、人間性、もっと言えばキャラクター性を強く打ち出す手法が現在ではかなりメジャーなものになりつつあります。
このあたりの戦略は、公式が「ゆるさ」を全面に出した元祖の「NHK_PR」さんや「SHARP」さん、「TANITA」さんなどの延長線上にあるものと思われます。カクヨム公式さんなどもゆるさを打ち出しているのが伝わってきますね。
頻繁に更新される動画はまるでそのキャラたちがまるで本当に生きているかのようなライブ感を演出してくれます。そこにソーシャルメディアを織り交ぜていくことで、そうしたライブ感、「
このチャンネル登録者ないしTwitterフォロワーとをつなぐ「同時間性」が、視聴者に「バーチャルYouTuber」を楽しむという、その人だけのナラティブ的体験を与えてくれます。
バーチャルな存在である彼女たちと同じ時間を共有しているという点において、視聴者にとって彼女たちは仮想の存在ではなくリアルの存在として知覚されている。
その点において彼女たちは「バーチャル」でありながらもまた同時にリアルでもある――バーチャルとリアルは対立する概念ではなく両立しうるのです。
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