『小説家になろう』の異世界転生流行とは①

 2018年2月上旬から中旬にかけて、Twitter上で「#魔女集会で会いましょう」というタグが突如大流行した、というのをみなさまご存知でしょうか。


 これはある方が『魔女が拾った男の子が成長して、魔女よりでかくなって(ごつくてむさくてがっしりしてて)魔女を全力で愛して守る男になる話』というイラストをアップするためにはじめたものでした。


 そしてこのタグが知れ渡るや、多くの絵描きさんたちがこの「お題」を自分なりの解釈でマンガやイラストにしていきました。それらの絵が瞬く間に拡散され「シェア」されていくことで、そのタグに興味を持った絵描きさんたちが続々と「#魔女集会で会いましょう」というハッシュタグと共に作品を描いていく、という一大ムーブメントが生まれたのです。



 どの企業にも属さない一人の方のつぶやきから始まった、そしてそれがソーシャルメディアを通じて瞬く間に拡散され広がっていった、ということは現代の流行を探る上で強い示唆を与えてくれます。


 また、この「魔女集会」をめぐるムーブメントを、古代日本からあった「歌会」など「お題に沿って創作する」という創作形態になぞらえたツイートも多くの人にリツイートされ、話題となりました。


 これは要するにいわゆる「大喜利」のイラストないしマンガ版ですね。

 「#魔女集会で会いましょう」という「お題」を共有することで、参加者やそのイラストを拡散・シェアすることで「同じものを今この瞬間ほかの人達と共有している」という意識が生まれ、ひとつの大きなムーブメントとなったのではないでしょうか。



 「共感」がキーワードとして語られて久しい現代のコンテンツ受容を考えるうえで、この「多くの人と同じものを見ている」という「同時間性」がもたらす快感が、重要な鍵なのではないか――?


 ここ1年くらいずっとそのように考えていたのですが、「#魔女集会~」のムーブメントを見た私は、それに確信めいた自信を深めました。



 と同時に、「あれ? 実はこれ『小説家になろう』でなぜ異世界転生が流行しているのか? の答えのひとつなのではないか?」という推論に至ったのです。



 『小説家になろう』さんで投稿されている多くの異世界ファンタジーは、現代に生きる主人公がトラックに轢かれるなどの死因で異世界へと転生し、そこで人生をやり直していく――という、いわゆる「なろう系」と呼ばれる物語上のテンプレートに沿って展開されることで知られるようになりました。


 「異世界転生」も先述の「#魔女集会出会いましょう」タグと同じように、多くの人が「異世界転生」という「お題」に沿って物語を創作してみる、という流れが広がりを見せた結果、今の「なろう系」が形作られたのではないか――?

 

 「#魔女集会~」と違うのは、元々異世界ファンタジーが創作されていた下地があったとはいえ、プラットフォームが違うだけで広がり方そのものは同じなのではないか――? と、このように考えたのです。

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