第六章
ハロワールド 巡る円環 本部
最強の名前は
最強ってのは、一番強いって意味らしい。
俺は最強の
一番強いやつが二人いたらおかしいとか、ラッセたちは馬鹿にするけど、俺はなるんだ。最強の
まだまだ経験浅いけど、立派な
そして俺は今、あこがれの
昨日は、
ビッグチャンスをくれた異界人のリンには、いくら感謝しても足りない。
「で、で、
「らしいけど……」
「マジすげぇよ、
黒いモジャモジャした『犬』を抱えてソファーに座っているリンが乗り気じゃなさそうな雰囲気なのは、気のせいだ。
きっと、謎だらけの
俺も、さっぱりわからないけど、力になってやるしかないだろ。
「そう暗くなるなって。俺も協力するからよ」
「……拒否権ないじゃん」
「え、なにか言った?」
「別に」
ま、そうと決まれば、時間も限られているし、早速
「じゃあ、まずは俺が
「…………」
リンは、まだやる気がなさそうだけど、俺が巡る円環に入る前から集めた
まずは、
「リン、リン。わたくしの方が、脳筋のダルよりも役に立ちますよ」
「んだよ、昨日は
「忘れていたわけじゃありません。アルゴさまが、
「あのな、俺は……」
「ビィィィィィィィィィィ……」
尻尾の先まで震え上がるような唸り声が、響きわたった。
ロックとかなんとかとか、わけわからん単語使ってキャンキャン吠えてた995号も静かになった。
「ィィィィィィィィ……」
唸り声の主は、リンの腕の中の黒いモジャモジャだ。
「ピィちゃん、怖い顔しないの」
「ピッ」
いやいやいやいや、黒いモジャモジャに目玉しかついていないヤツに、怖い顔とかあるのかよ。つか、どこからどこまで頭なんだよ。
黒いモジャモジャをワシャワシャとなで回すと、ようやくリンも笑顔になっていた。やる気が出てきたらしい。
「時間が限られているんだし、さっさと知ってること出し合おうよ」
「だよなっ」
「ですよねっ」
よりによって、995号と声がかぶるなんて、面白くねぇ。
「まずは、995号が知ってることを……」
「なんでだよ」
面白くねぇ。
ま、今回、
面白くねぇものは、面白くねぇ。
「おほん。では、
偉そうなこと言っていたくせに995号のやつの話に、目新しい情報はない。
どれだけ
「995号の話をまとめると、
「あわわわわわ……、わたくしの説明がわかりづらかったのですか? わたくし、役立たず……あわわわわ」
995号の話が一段落したところで、リンは申し訳なさそうに話をまとめた。
リンは異界人なんだから、そんな硬い情報じゃ、
ここはリンにも、
「あわわわわわ……、そそそそ、そ、そんな、わたく……ふぎゃ」
「995号、お疲れさま。後は俺が
「あ、それはもういいから」
「へ?」
青くなった
「
「え、あ、そんなことは…………」
ある、かもしれない。
たしかに、
「ピィちゃんは、もちろん
「ピィ」
丸っこいモジャモジャが縦に伸びて縮む。
「よしよし、じゃあピィちゃん。995号が言ってた
「ピッ」
短く鳴いただけだった。
「ピィちゃんが、
「ピィ」
どうやら、伸び上がるのがイエスで、短く鳴くのがノーらしい。というか、リンのやつ、黒いモジャモジャの言ってることが、なんでわかるんだよ。
青い目玉だって、グリグリしていて、何考えてるかわかんねぇし。
リンにワシャワシャなで回されている黒いモジャモジャなんかに、負けていられない。
「いや、けどよ、もしかしたら、名前につながるかもしれないじゃねぇか」
「あのさ、だいたい、
「うっ……」
「うっ……」
尻尾の先までみなぎっていたやる気がなくなってしまった。
あと、なんで、995号とかぶるんだよ。
面白くねぇ。
八つ当たりだってわかっているけど、床に叩きつけずにはいられない。
「ふぎゃぁああああ! 馬鹿ダルぅううう!!」
「ピッ」
「あわわわわわわわわ…………」
勢いよく弾む995号に、黒いモジャモジャが短く鳴いた。
「……って、スルーするんですか! わたくしで遊ばないんですか!」
「ピッ」
「いいですけどね。わたくしも、ゴロゴロされるのは不快極まりないですからね。ただ、ちょっとだけなら、おもちゃにされてもいいかなって思ってたんですけどね」
995号がキャンキャン吠えてうるさいけど、沈黙よりはうるさいほうがマシだ。
「ちょっと静かにして、995号」
「あわわわわ……申し訳ありません」
青くなった995号に、リンは盛大なため息をつく。
「ところで、ダルはなんであんな最低なやつが好きなの?」
「そりゃあ、最強だからに決まってるじゃん」
尻尾の先までとはいかないけど、ちょっと元気出た。
「俺も最強になってやるんだ」
「へぇ……」
なんだよ、異界人のリンもわかってくれねぇのかよ。
「だからさ、みんな、
「…………なんか、意外」
リンの感心した声に、無意識のうちに尻尾で床を叩いてた。
「わたくし、ダルがそこまで考えているとは思いませんでした。ダルは、筋肉馬鹿じゃなかったんですね……ふぎゃ」
「筋肉馬鹿じゃねぇよ」
「あわわわわわ……な、投げないでくださいぃいいいい」
「るせぇよ」
手の中の995号をどこに投げようか考えていると、リンが声に出して笑いだした。
「……なんだよ、俺は本気だからな」
「アハハハ……、ごめん、ダルを馬鹿にしてるわけじゃないの。やっと、わたしも
「そ、そっか」
それはよかったけど、何がそんなにおかしいんだよ。
やっぱり、異界人ってよくわかんね。
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