ハロワールド トビーの体内
もう、わけわかんない!!
信じられない。信じられない。信じられない。
トビーの
クッションとかあったら、思いっきり壁にぶん投げてやりたい気分だ。
「もぉ、信じらんなぁああああああああい」
「あわわわわ! お、落ち着いてくださいぃい」
「落ち着いていられるかぁあああああああああ」
「あわわわわわわわ!! ふぎゃ」
アルゴ995号って、ピンポン玉みたいに弾むのかな。掴んでみると、質感も重さも、まんまピンポン玉だし。
「リン、顔が怖いですぅうう。あわわわ。落ち着いてくださいぃいいいい離してくださいぃいいい」
「……あ、ごめん」
こんなに可愛い
それもこれも、あの男のせいだ。
「なんて日だ。記念すべき世話係デビューだっていうのに、わたくし、わたくしぃいいいい」
やばいと思って
「落ち着いて、落ち着いてよ、995号」
「落ち着いてられませんよぉおおおおお」
いつの間にか、立場が逆転している。
ぐるぐる飛び回る
「どうせどうせ、わたくしなんて、わたくしなんてぇえええ!! 落ちこぼれですよぉおおおおおお!! シミュレーションの成績も最悪で、気がついたら後輩が先にデビューしてるしぃいいい……ひぎゃ」
ドン。
突然、
「着地成功ぅ!! ありゃ?」
「大丈夫、995号?」
ダルが足をどけても、
「だ、大丈夫です。アルゴシリーズは、絶対に壊れませんから」
赤く明滅しながら、
ダルは申し訳なさそうに
「わりぃな」
「あ、はい。でも、わたくし、できればリンの手に乗せてもらえると……ふぎゃ!」
うん、元気そうで何よりだ。心配して損した。
ダルに投げ飛ばされた
なんだか、短い間に少しはたくましくなったような気がする。
「あー、もう少し、踏んでいればよかったぜ。で、トビー、ラッセとウノは?」
四本の指で頭をかいたダルは、キョロキョロトビーの
「
「あ、わりぃわりぃ、忘れてたぜ、トビー」
ダルがピアスにさわると、通信装置になっているみたいで、ひたすら謝り始めた。
「悪かったって、悪かった。……つか、なんで怒ってるんだよ。わっけわかんねぇ……怒鳴るなって……」
たぶん、ラッセあたりに勝手なことしたって怒られているんだろう。
ちょっとキツいところあるけど、ラッセは心配してたんじゃないかな。
わたしは、火災警報器みたいな
なんでも、たまにあるらしいんだ。自然発生的な
避難所になっている亜空間に転移できる場所まで、
別にいきなり丸呑みにされたことは、もう怒っていない。
そんなもの、安全なトビーの
「……だぁからぁ、ラッセもウノもぉおお……もうしないとか、言わねぇよ……」
ダルは、当分お説教タイム。
まぁ、あの脳筋ぶりからしても、役に立ちそうにないから、放っておいてよし。
真っ白い何もない空間で、どこに向かって話しかけていいのかわからないけど、自然と天井を見上げながら、トビーに声をかけた。
「ねぇ、トビー。
「
「えっなになに、
爬虫類の目をらんらんと輝かせて、トビーの話をさえぎってきた。
「マジでやばいんだって、
「…………」
なんか変なスイッチ入っちゃったダルは、トビーにも止められないみたい。
わたしの手に乗りたいって言ってのは、とっさに出たジョークじゃなかったのか。
ま、ちょうどいい。
遠慮なく
「ふぎゃ」
「でりゃ!」
「いってぇ」
ダルの腹部で跳ね返った
らんらんとした目の輝きが失せたダルが、
「え、俺、何かした?」
『ダル、実は
「トビー、らしいじゃなくて、あいつに間違いないから!!」
まじかよって、ダルがつぶやいている。
そう、間違いない。あの灰色マントの感じ、間違いない。
根拠がないわけじゃない。
これには、トビーも驚いていた。
変態頭脳のアルゴの分身とも言える
とすれば、自然と
ようするに、ようするに……
「とにかく、トビー、急いで!! 急いで本部まで連れてって」
『りょ、了解であります!!』
ようするに、変態人工知能アルゴは、わたしの話を聞いたときに
だから、調べておくとか言ってはぐらかそうとしたんだ。
だから、目の前に戻ってきた
「……了解しました」
「え?」
かわいいショタボイスが、不気味なくらい虚ろに聞こえる。
「転送
「えっえっ……」
赤い
「おい、995号!!」
ダルの焦った声が聞えるけど、視界が目に優しい金色の光でいっぱいで見えない。
光が消えると、わたしとダル、それから
「えっと……」
ダルも戸惑っているみたいだけど、わたしはもっと戸惑っているところに、頭上からテンション高そうな変態の声が響いてきた。
「やぁやぁ。田村凜子くん、君の探している黒い犬が見つかった。喜びたまえ!!」
「え?」
ピィちゃんが、見つかったのか。
なんかもう、いきなりすぎてわけわかんない。
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