第65話 8月16日(月)夏休み最後のイベント①
今日は夏休み最終日。
明日から2学期が始まるけど、それはトキコーだけではない。そう、トーチュウも明日から2学期だ。まあ、偶然ではあるけどね。
でも、何故か今日は僕だけ用事がある。姉さんも美紀も二人でどこかへ出かけるようだ。母さんはWcDのパートで昼前後はいない。
僕の行先は・・・江田さんの家だ。
僕は本当は今日の予定が無かったから家でボーッと過ごすつもりでいた。だけど、昨日の夜に1本のメールが入った。
『夏休みの宿題が全然終わってないから猛君の宿題を写させてもらえないかなあ。もちろん、ベーカリー江田の洋菓子をサービスします。 一香より』
僕はこのメールを受け取った時に「はあ?なんだこりゃあ?」と思ったから江田さんに返信したら再びメールが入ってきて『いやあ、ついつい遊び過ぎてしまって半分くらい宿題が残ってるのよねえ。未来ちゃんに頼んだら美紀さんと二人で出掛けるっていうし、他にも何人かに聞いたけど、わたしと同じ立場の人か、別の用事で出掛けると言ってる人しかいなくて、最後の頼みの綱が猛君なのよねえ。美貴も大半が手付かずで、何のための夏期講習だったのかって文句を言ってやりたいけど、わたしも人の事をとやかく言える立場じゃあないのよねー。まあ、明日は鈴井さんが美貴の家庭教師をやるみたいだから、わたしの方は宿題を見せてくれるだけでいいからお願いできないかなあ』とか、ますます訳のわからない長文が戻ってきた。
太一も明日はお父さんとお母さん、それとお兄さんの家族四人で出掛けるみたいで僕は暇を持て余しているのも事実だから、宿題を持って行って洋菓子をタダで食べさせてもらえるなら悪くないと思ってOKの返信をした。
トキコーの夏休みの課題は結構多い。残り教科にもよるけど、半分残っているなら丸写しするだけでも半日は確実に潰れる。だから僕は課題を届けたら一度戻るつもりだ。
♪ピンポーン♪
僕はベーカリー江田の裏口にあたる玄関の呼び鈴を押した。
『・・・はあい。猛くーん、待ってたわよー。鍵は開いてるよ』
「お邪魔しまーす」
僕は玄関のドアを開けて中に入り、階段を上がって行った。江田さんとこえだちゃんは二人ともリビングにテーブルを出して宿題と格闘していた。
「やあ、おはよう」
「あー、せんぱい、おはようございます」
「猛くーん、待ってたわよ。早く見せて!」
「はいはい、というか、ここに置いてあるのが残り物なの?」
「そうだよー。丸写しでも昼過ぎまで掛かりそうだから頑張らないと折角の夏休みが無駄になっちゃうからね」
「はいはい。ところで鈴井さんは?」
「あー、純もそろそろ来ると思うよー。でも遅いなあ」
「鈴井さんは夏休みの宿題を持ってくるの?」
「あー、それじゃあ美貴の為にならないから鈴井さんは純粋に美貴の家庭教師ね」
「ようするに、こえだちゃん一人だと今日中に終わりそうもないから鈴井さんがこえだちゃんに教えながら宿題をやるって事ですよね」
「そういう事。丸写しだと夏期講習に行かせた意味がないからね」
「なーるほど。じゃあ、僕はこれを置いたら帰るよ。終わったらメールしてね」
「りょーかい。でも折角だからコーヒーでも紅茶でも好きな物を飲んでいけば?テーブルの上にあるクッキーを適当に摘まんでもいいよー」
「あー、それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますー」
僕は江田さんの言葉に甘えてキッチンで紅茶を作り、それを冷蔵庫にある牛乳でミルクティにする事にした。テーブルの上にはクッキー、正しくは型崩れとかで販売ではなく自家消費に回ってきたクッキーが皿に乗せられていたからちょっと摘まんで寛いでいた。
♪♪♪~♪♪♪~
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