からだファンタジアのライバルソシャゲ、登場! くさいゲームス『ブリンセスコネクト~RE脱糞~』

「孝則っちぃ~、大変だよぉ~」

「どうした? マッチョ。ついにアシシューヴに襲撃されたのか?」

 翌日夕方、孝則がからファンを起動させるなり、いつものように画面から飛び出してくると、切羽詰まった表情で伝えて来た。

「からファンのセルランを脅かす、強力なライバルが現れてしまったんだ! くさいゲームス社の『ブリンセスコネクト~RE脱糞~』、略してブリコネってソシャゲなんだけど、動物の糞便を美少女に擬人化したキャラが多数登場する壮大なRPGなんだ」

「……糞便を擬人化するなんて、からファン以上の下品さだな。作ってるとこの社名からしても」

「ブリコネは今週のセルラン四位だったんだ。からファンは二百位以下、圏外なんだ」

「そんなに人気あるのかよ! それだけ売上に差があるんなら、あっちはからファンのことライバル視すらしてないと思うよ」

「ぼく達のからファンの方が断然面白いと思うんだけどなぁ。ブリコネはこういうゲームなんだ」

 マッチョは悔しそうにマイスマホからそのソシャゲを起動させる。

『くさいゲームス』『ブリンセスコネクト、RE脱糞』

 声優のキャラボイスと軽快なBGMが流れ、ロード画面が終わると、

「おかえりなさいませ、主様。わたしからのプレゼントです。明日は、こちらをご用意してお待ちしてますね」

 白髪でエルフ耳な、小学生くらいの年齢に見える少女が画面に表示された。

 そして、主様頑張れカードにスタンプがポンッと押される。

これがこのソシャゲのログインボーナス演出のようだ。

「この子は案内役のポッポロちゃん、鳩の糞を擬人化したキャラなんだ」

「かわいいけど汚いよ。普通に動物そのものを擬人化すればよかったんじゃ。糞にする必要全くないだろ」

 孝則は呆れ返る。

「ぼくも正直そう思うよ」

「BGMはけっこう格好良く感じるけどな」

「起動させた時に流れるメインテーマは『Lost Brincess』っていう曲なんだけど、作曲はクサヤ大戦などを手がけた中田平公さんって人みたい」

「誰だよそいつ?」

「ぼくも知らないよ」

 マッチョはハハッと笑って、このソシャゲのキャラ一覧を表示させる。

 未開放キャラの性能も確認出来るようだ。

「らくだの糞を擬人化したキャメルと、秋田犬の糞を擬人化したヘソクリイヌはポッポロと共にガチャを回さなくても手に入る最初からいる便1キャラだよ。ゲーム進行の案内もしてくれるんだ」

「からファンの女の子に負けず劣らず、かわいいキャラばかりだな。ん? これは、アルパカだよな? なんでリャマって名前なんだよ?」

「ぼくに言われても……」

「うわっ、このピンクの髪の子、涎出してるし気味悪すぎ」

「それはプレーヤーからもよく言われてるみたい。強いけどさすがにキモいから育てたくないって。この子はヌーの糞を擬人化した、ヌーカちゃんって子だよ」

「見るからに臭そうなキャラだな」

「キャラシナリオ読むと、このゲームの主人公の雉くんって男の子も、この子の体臭には参ってるみたいだよ。ヌーカちゃんはドMだから、雉くんにクサいって言われると大喜びするみたい」

「やばいキャラだな」

「魔法防御力が全キャラの中でトップクラスに高くて、攻略サイトの最強リセマラランキングでも便2ながら、便3キャラを退けて上位の方にいるよ。からファンの指寝ちゃんと似たようなタイプの子かな」

「攻略サイトまであるのかよ」

「このページだね」

 マッチョはマイスマホでHPを開く。

「リセマラ最上位はジュゴンってキャラか。鎧纏ってるし、確かに強そうだな」

「二位のイリコと、三位のウマコトってキャラと共に人権で攻略に必須らしいよ。低レアの便1キャラでも才能開花させて便5まで育てることによって、最高レアの便5と同格の性能が得られるから、自分の好きなキャラを育ててバトルを楽しめるってとこが人気の秘密みたい。バトル開始から一定時間が経過すると敵全体に大ダメージを与えたり、強力な効果を付与出来る必殺技のUrine Burst(ユリンバースト)、略してUBが打てるようになるんだよ。ガチャ演出はこんな感じだよ」

 マッチョはそう伝えて、便2以上のキャラが一体以上確定する十連ガチャを回してみた。

『不潔な仲間が増えますよ♪』

 軽快なBGMと共に、眼鏡をかけた緑髪のお姉さんがトイレットペーパーを持ちながら走って来て、トイレの扉を勢い良く開けて、中で洋式で用を足していた女の子に嬉しそうに伝えていたのだ。

「キャアッ!」

 という女の子の悲鳴ののち、洗面台の鏡に排泄されたキャラが次々と表示される。

「何とも下品な演出だな」

 孝則は苦い表情で呆れ返る。

「最初は和式トイレの予定だったけど、アッ〇ルの審査が通らなかったみたいだよ」

「……これでも、よく通ったな」

「この緑の髪のおばさん、いやお姉さんは鹿の糞を擬人化したシカリン。ギルドハウスの管理人さんなんだ。クソレアちゃんと同じような役割だな。最初走ってくる時、トイレットペーパーが虹色に輝いてると便3確定なんだ。ああ、全被りかぁ。残念。諭吉を数十枚貢いでも目当ての最高レア出してくれないこともあるから、プレイヤーからは糞眼鏡って呼ばれるみたいだよ。ブリコネはキャラが被ると才能開花に必要な女神の胆石が得られるようになってるよ。ブリコネの最高レアはからファンと排泄率と同じなんだけど、ブルコネの方が出にくい印象だよ。最高レアでもチーターとか、イボガエルの糞を擬人化したイボって子はハズレキャラらしいけど。便2ではヌーカちゃん以外ではからファンにも同じ名前の子がいる三毛猫の糞を擬人化したタマキンちゃんとかがハズレ便3よりもリセマラ順位高いよ。ガチャを回さなくても、クエストを進めることによって解放されるハードステージや、ダンジョン、アリーナのコイン交換で耳垢ピースを集めてキャラを開放することも出来るんだって。便3の中でもアホウドリの糞を擬人化したアホちゃんみたいに耳垢ピースを集めやすいキャラと、ジュゴン、イリコみたいなガチャ限定キャラとでレアリティの高い低いがあるよ」

「アイテムも汚いな。マッチョ、めっちゃ楽しそうに話してるけど、このゲーム嵌ったみたいだな」

「……まあ、確かに、ライバルながら、面白いなって、感じちゃったかな?」

 マッチョは苦笑いを浮かべる。

「俺も正直ちょっとプレーしてみたいなって思っちゃったよ」

 孝則も同じく。

「ブリコネにはバトルアリーナ、ブリンセスアリーナっていうプレイヤーの持ちキャラ同士で対戦出来るシステムがあるんだけど、からファンのキャラ達で参戦して強さの違いを見せつけてやろうぜ」

「そんなこと出来るのか?」

「からだとゲップの力を借りれば楽勝だよ」

 マッチョがそう伝えた直後、

「こんばんは、孝則様」

「わたしも、ブリコネなんかに負けないように協力します!」

 からだとマッチョも画面から飛び出てくる。

「召喚したキャラ達と共に、ブリコネの世界にお連れしますね。そーれ」

 からだがそう呟くと、

「わわっ!」

 一瞬でブリコネの世界の中へ引き込まれる。

「うわぁ! くっさぁ~。動物園のにおいをさらにきつくしたようなにおいだ」

 孝則は思わず鼻を抑える。

降り立ったその場所は、五人のキャラ+シカリンさんが配置されている、ギルドハウスだった。からだファンタジアのルームに当たる場所である。

「孝則っち、このゲームもギルドハウスのキャラをタップすると反応するよ。からファンみたいにデイリーミッションにはなってないけど。とりあえず、ポッポロにでも触ってみたら」

「汚いから、触りたくはないけどなぁ」

 孝則は恐る恐るポッポロの背中に一回触れてみた。

「主様、今日も盛大に脱糞してますね。おしめを換えてあげます」 

 ポッポロのこの反応に、

「主人公は脱糞癖があるのか。やばいやつだな」

 孝則は思わず笑ってしまう。

「これでも、雉くんはこの世界じゃ女の子達からモテモテなんだよ」

 マッチョは伝える。

「雉様をからファンの世界に連れてきたら、モテるでしょうかね?」

「いやぁ。モテないかな?」

 ゲップとからだは苦笑い。

「気味悪いけど、どんな反応するか気になってしまう」

孝則は続いて、ヌーカの背中にも触れてみた。

「ぐふふふ。今夜は、どんな酷いことをしてくれるんですか? 期待してます♪」

 ヌーカの恍惚した表情の反応だ。

「やべえ」

 孝則は思わず仰け反って、ヌーカから距離を置く。

「おっとと」

 ちょっとバランスを崩してしまい、

「主様の下のお世話をするのが、私の役目です」

 ポッポロの背中に手が当たってしまった。タップとみなされたようで、こんな反応が返ってくる。

「ポッポロちゃん、いい子っぽいんだけど……うわっ、汚なっ、誰かのゲロが落ちてるし」

 孝則は床に広がっていたその吐瀉物にまたも仰け反る。

「これはきっとコアラの糞を擬人化したユーカリさんのやつだね。あのキャラは酒飲みだから」

 マッチョは苦笑いで伝える。

「ここはあまりに不衛生過ぎる。早く出よう。ん? なんだこれ?」

 孝則は急須っぽい入れ物が視野に入った。

「主様、こちらは才能開花や装備強化などに必要となる、ハナ、ようするに鼻水の製造機でございます」

 ポッポロが教えてくれた。

「本当にからファン以上の下品さと汚さだな。俺はもう出るぞ」

 こうして孝則はギルドハウスから外へ。

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からだファンタジア~体に良い日常と遥かな冒険と~ 明石竜  @Akashiryu

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