この世界の料理はやはり……

 俺のいる世界と、まあ、変わりないかな? 

 入店すると、孝則は周囲をぐるりと見渡してみた。

「二名と一匹様、こちらへどうぞ」

 ウェイトレスに四人掛けテーブル席に案内される。

「孝則様、どれでもお好きなものをお選び下さい」

 ゲップはメニュー表を広げる。

「俺のいる世界と、料理は特に変わりないみたいだな。異世界っぽくないような」

「孝則様、このお店では、カレーが特におススメですよ」

「じゃあ、カレーにしようかな。ドラゴンの肉とか、使ってたりして」

「普通のビーフです。孝則様のいる世界の料理と、ほぼ変わりないと思いますよ。確かにドラゴン風の魔物は存在しますけど」

 ゲップは微笑み顔で言う。

「ぼくはチョコレートパフェ。チョコとアイスがぼくの大好物なんだ。珍味にも目がないんだ」

「わたしは、きのこのクリームシチューにします」

 ゲップがウェイトレスに二人と一匹分注文してから五分ほどのち、

「お待たせしました」

 みんなのメニューがまとめて運ばれて来て、ディナータイムが始まる。

「……便器型の皿かよ。食欲が失せる」

 和式便器型のお皿にどっさり盛られたビーフカレーを見て、孝則は顔をしかめた。

「これも孝則っちの世界と同じでしょ」

「確かにヴィ〇バンとかにこういうユニークな皿あるけど、普通は使わないよ」

「そうなんだ。こっちの世界じゃカレーといえば、便器型のお皿で食べるのが普通だよ。この皿はノーマルな白だけど、金や銀の便器皿で食べるとリッチな気分を味わえるよ」

「やっぱ下品だな、こっちの世界は」

「どこが下品なんだろう? ぼくには理解出来ないや。ところで孝則っち、ルームを見て、何か変だと思ったことはないかい?」

「うーん……特には、あっ、あれだ! 扇風機や自販機が、コンセントもないのに動いてる。いや待てよ、電池で動かしてるのか」

「この世界では、家電は電池もコンセントも使わなくても動くのが当たり前だよ。魔法が存在する世界だしね」

「そっか。言われてみれば。じゃあ何なんだろう?」

「孝則っちは鈍感だなぁ。トイレと洗面所がないでしょ」

「ああ、そっか」

「生活するうえで一番重要な場所なのに。このゲームを作ったバリウムの社員は、二次元の女の子はトイレに行かないと思ってるんだよ。バリウムの社員は頭ファンタジアだよね」

 マッチョはため息まじりに呟く。

「単に表示されてないだけだと思うけど……」

「あと、召喚されたキャラクターはみんな毎日同じ服装だし、布団も使い回しで不衛生極まりない状況だから、毎日洗濯してあげるか、新しい寝具に取り換えてあげて」

「わっ、分かった」

 孝則が承諾すると、

「孝則様、デザートに、チョコレート味のソフトクリームをどうぞ」

 ゲップは目の前に差し出してくる。

「あっ、どうも。これも俺のいる世界のやつと特に変わりないな」

 孝則が受け取って頬張ろうとした瞬間、

……うわっ、尻の形をした機械から捻り出てくるのかよ。何とも下品だ。

 ふと、視界にこっちの世界のソフトクリームメーカーが入ってしまい、食欲が失せてしまった。

「孝則様、どうされましたか?」

 ゲップから問いかけられ、

「いや、なんでもないよ」

 こっちではこれが普通なんだと割り切ろう。

 孝則は何とも苦々しい気分で頬張った。

「俺のいる世界のよりも美味いかも♪」

 その瞬間に、彼の表情は綻ぶ。

「それは光栄です」

 ゲップも同じく。

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